がちゃがちゃ

あなたなしでは生きられないのに

 ベッドの上で向き合って座っている僕の膝上に、テメノスさんが跨っている。
 いつかの幼い頃の記憶が呼び起こされ、何もされていないというのに勝手に身体が反応してしまう。
「おや、随分と元気なんですね?」
 すぅ、と服の上から下腹部を白い手が走る。その触り方はやめてほしいのだが、それでも気持ちがいいので何も言えない。
 テメノスさんは僕に跨ったまま、スカートを少しずつ、少しずつ、焦らす様にたくし上げていく。記憶の中と同じ白いニーハイソックスと太ももまで露わになった辺りで、僕は目を反らすのを止めた。
(これは……かなり……、まずい気がする)
 何がどうまずいのか。説明しろと言われたら出来ないのだが、それでもこれはまずいのだと断言できる。
 だからなのか、どうしてもあの時は見えなかったその先を期待してしまう。『先』にあるはずの断片と思われるレース生地のショーツが一瞬だけ視界に入った辺りで……、どうしてか彼はスカートの裾を戻してしまった。
「え、なんで!?」
 つい本音が出てしまう。無理やり脱がせようとまでは思わないが、ここまでやっておいてあんまりではないだろうか。
「たぶん見たらがっかりすると思って。萎えられても困りますし」
 ぶつぶつと呟きながら裾を正していくテメノスさんは、いじけている子どもの様に唇を尖らせている。
「いや、そんな明け透けに言われても……。ぜったい萎えないし、興味しか無いんですが」
 そこまで言って、ふと疑問が下りてきた。
 彼は、僕のために何年もこのメイドの格好を続けてくれていた。しかし、先ほど一瞬だけ見えた下着はどう考えても男性用ではない。
 そこまでする必要はあったのか?と思うと止まらなくなり、正直に訊いてみることにした。
「ところで、なんで下着まで女性用を……?」
 訊くやいなや、ついさっきまで飄々としていた彼は途端に顔を赤く染めていた。
 テメノスさんの羞恥の基準が分からないままではあるが、理由があるのならば聞きたいところだ。
「……その、この格好のときに、何かの拍子に……中が見えてしまうことがあるかもしれないと思って。それでうっかり男物が見えてしまったらまずいと……知人のつてを借りて、男でも着用できるものを用意したんです」
 実際、過去に事故は起こりかけた。あのときは見えなかったが、もしもう少し風が強ければ一瞬でも見えてしまっていたかもしれない。
「一応、私も男なので……ついてるものはついてるし、切り落すわけにもいかない。だけど君は私を女性だと思っているし、こうするしか……って、何やってるんですか」
 僕はテメノスさんの話を聞きながら、スカートの中に手を滑らせていた。
 滑らかな太ももを撫でるように手を這わせながら徐々に奥へと向かわせると、その手首を掴まれてしまう。
「もっと紳士的に事を進められないの?」
「こうしないと見せてくれなさそうですし」
「……もぅ」
 諦めたのか、テメノスさんは僕の手首を解放した。そのまま空いている方の手で彼の紅潮した頬を撫でる。親指で柔らかな唇をなぞると小さな舌が出てきて、指先をちろちろと舐められた。
 わざとらしく吸いながら、音をたてている。時折こちらの様子を窺う様に視線を向けられて、煽られているのだと気が付いた。
「テメノスさん、かわいい」
 口の中に指を押し込む。すると彼はそれに舌を絡めて、更に強く吸い始めた。
「ッ、ん……ぁ……」
 ちゅ、ちゅ、と指にキスをする姿が猥らに思えて、ついまじまじと眺めてしまう。
 そんな姿に見入りながら親指を抜き、今度は人差し指を口の前に差し出す。あ、と形の良い口が開かれて、そのへ導かれていった。
 今度はこちらの指で舌の形を確かめるようにをなぞる。すると苦しいのか甘噛みされて、つい口元が緩んでしまった。
「……なに笑ってるんでふか」
 む、とテメノスさんが眉を寄せる。正しく発音しきれていない声が愛らしいと伝えれば、きっと途端にへそを曲げてしまうのだろう。
「指、もういいですよ。……腰上げれますか?」
 彼の口から指を抜き、手に吸いつくような肌の臀部に触れる。そのまま抱えるようにすると、テメノスさんは僕の首にしがみつくように腕を回し、おずおずと腰を上げた。
 はぁ……と熱い吐息が漏れている。真っ赤になっている耳を食みながら双丘の奥へ指を滑らせて、先ほどまで彼が咥えていた指で窄みを拡げるように撫でた。
 期待でヒクヒクしているそこへ、つぷり、と指を押し込む。一瞬だけ僕へもたれ掛かっている身体が震えたのが分かったので大丈夫かと訊けば、こくこくと頷いていた。
「大丈夫ですから、そのまま……あ、ぁっん」
「少しでも痛かったら言ってくださいね」
「心配性……」
 何か可愛らしい文句を言われているが、気にせず手を進める。流石に唾液だけでは滑りが足りず、ベッドへ上がる前に準備しておいた香油へと手を伸ばした。
 手のひらでよく温めてからナカへ纏わせるが、それでも冷たいのか違和感があるようで、テメノスさんは僕の服をぎゅっと掴んでいた。
「……あの、無理だったら言ってください」
 彼を想って出た言葉だった。
 しかしテメノスさんは僕が指を抜いた瞬間に顔を上げ、鋭い視線で睨んできた。そして僕の両頬を包む様に触れると半ば押し付けるように無理やり口づけてきた。
「ん、ぅ!?」
 色気なんて何もない、文字通り重ねるだけのそれに戸惑ってしまう。
 一体どうしたのかと問う間もなく、テメノスさんは「ぷはっ」と顔を離した。
「大丈夫って言ったでしょう、聞いてなかったんですか?」
「いえ、でも……辛そうだったので」
 あまりの気迫につい弱腰になってしまう。
 するとテメノスさんは溜息を吐いて、今度は軽く触れるだけのキスをしてくれた。
「これって、そういうものじゃないですか。それぐらい覚悟しているし、私は痛みでもなんでも君に与えられたいと言っているんです」
 真正面から眩しい愛を向けられている。
 照れくささを感じながら、それでも自分本位なことはしたくないのだと彼の腰を撫でた。
「……嬉しいですけど、やっぱりあなたを傷つけたくない」
 テメノスさんは黙ったままだ。
 しばらく互いに無言でいると彼は僕が使っていた香油を手に取り、たらりと自分の手に垂らしてそのまま後ろを弄りはじめた。
「あの、テメノスさん……?」
「ちょっと……黙っててください……ッ」
 ん、と小さな声が漏れている。呼吸も乱れており、テメノスさんが何をしているのか察してしまう。
 突如「あっ」と消え入りそうな声で喘いだ彼を見て、僕の頭の中はパニックになっていた。
(僕の目の前で、自分で、ほんとうに……?)
 長年想っていた相手の痴態を見せられている。手を出すなと言う方が無理だろう。
 しかし彼に触れるより先に、質量を増して服の中で苦しそうにしている僕のソレを取り出された。
「うわっ!」
 情けない声を出してしまうがテメノスさんはそんなことを気にしていないようで、そそり立つ僕の中心を愛おしそうに撫でている。
「かわいいかわいい、私の……私だけの子羊くん。ぜんぶ、貰ってくれますか……?」
 どくどくと脈打つものの先端へあてがうように、腰を降ろそうとしている彼の窄みが押し当てられる。そこはまるでキスをするように吸い付いて、欲しがりながら咥えようとしていた。
「……欲しいです。テメノスさんの、ぜんぶ。僕に……いただけますか?」
「よろこんで」
 ふわりと笑った彼から頬へキスをひとつ。くしゃりと髪を撫でられ、くすぐったくて目を細めてしまった。
 
 テメノスさんがゆっくりと腰を降ろしていく。ぬぷ……と先端を咥え込まれた辺りで呼吸が苦しそうなことに気が付き、耳と髪の間を撫でるように手を刺し込んだ。
「大丈夫ですか?」
「ん、平気、です……」
 言いながらゆるゆると腰を上下させ、気が付けば半分まで飲み込まれていた。
 彼の中はあたたかくて、やわらかくて、夢を見ている様だった。愛おしさに押されるようにキスをすれば途端に熱の中心をきゅっと締められる。あまりに可愛い反応に、こちらが困ってしまいそうだった。
「本当に、ずっと僕のことを好きでいてくれたんですね」
「ッだから、そう言ってるじゃ、ないです、か……あ、ンあ、あ……ッ♡」
 ボタンが外れたままの胸元へ触れる。淡く色づく突起を指で擦ると、締め付けが強くなった。『控えめで可愛らしい』と言い表したそこはまだ柔らかく、指の腹で押すと、ぷに、という音が似合いそうな弾力で押し返してきた。
「まだ信じられなくて。今まで出来なかった分、たくさんあなたのことを愛しますから」
 思ったより反応がよかったので、わざと焦らす様に乳輪をなぞる。
 するともどかしいのか、恨めしそうにこちらを見ている。僕の手に押し付けるように胸を前に出して、触れ、と言いたげにしていた。
「やだ、クリックくん……意地悪しない、で」
 悩まし気に眉を下げ、もじ、と太ももを擦り合わせる姿を見て正気でいられる気がしない。
 あまり虐めるのはやめようと思い、求められるままぷっくりと尖っている乳頭を擦った。コリコリと引っ掻くだけで、声を抑えきれない彼は淫らに喘いでいる。
「んっあ、あァ♡きもちぃ……もっと、さわって……♡」
 ぎゅ、と密着するように抱きしめられる。テメノスさんの体温に包まれながら強請られるままに胸を弄っていると、その最中にも彼は自ら腰を揺らしていた。
「あッん、んンッひぅ、あんっあ♡」
 浅いところを擦る様に身を捩り、腰を振り、湧き上がる快感に夢中になっている。まるで自分のイイトコロなど熟知しているかのようだった。
 もしかして、と一つの可能性を考えながら汗の浮かぶ細い腰を掴む。そのまま下から突くと、「あッ♡」と嬌声を響かせながらびくびくと身体を震わせていた。
「ねえ、テメノスさん」
「え……?」
 夢み心地の様にとろんとした両眼で見つめられる。
「ここ、自分で弄ってました……?」
 腰を深く落とさせて、奥を貫く。
「や、あっああッ♡」
 軽くイったのか、テメノスさんはふるふると小さく震えながら誘う様に喘いでいる。
 今度はトントンとゆるく突きながら、彼の耳元に顔を寄せた。
「教えてください。何を……誰のことを考えながら、どうしていたのか」
「なん、で……」
「だって、やっぱり――」
 おかしいな、とは思った。
 大した準備もせず少し解しただけで、テメノスさんは苦しそうにしながらもすんなりと僕を受け入れてくれた。
 そこから導き出される答えとは、ひとつしか無いだろう。
「……私のこと、嫌いにならないでくれますか?」
 テメノスさんが、縋る様に僕へ体重を預ける。
 僕が頷くとそのまま腰を揺らし、それでも言葉を紡ごうと懸命に口を開いた。
「大人になった君が……変わらず私のことを好きだなんて、言うから。抑えられなくて、ひとりで、君のことを考えながら……あ、ん、ンぁ♡」
 耐えきれず、途中で抉る様に突いてしまった。
「それで、こんなになっちゃったんですか……?」
「ん……そう、です♡でもクリックくんの、指なんかよりずっと大きいから、思ってたより苦しくって……あ、まっ待って、まだ、あんっあア、あ♡」
 きっとこの人は無自覚なのだろう。煽る様なことばかり言って、こちらを試しているのではないかと疑ってしまう。
「こっちも、自分で触ってたんですか?」
 無防備な胸元に顔を寄せ、淫らに膨らんでいる乳頭を食む。舌先でつつくと、喘ぐ声が高くなった。
「ずっと、きみに触ってほしくて……んぁ、あ♡そこっ好き、んッあ、あん♡もっと触って、おねが、ぃ♡」
 にゅるりと舐めると、テメノスさんは甘イキを繰り返して息を乱している。そろそろまずいのではと思い、一度自身を抜いて「ごめんなさい」と断りを入れてから彼が隠そうとしていたスカートを捲った。
 そこに見えたのは、真っ白なレースで縁取られたショーツだった。彼は「男でも着用できるもの」と言っていた通り女性用とは作りが違うようだったが、それでも違和感を覚えなかったのはあまりにも似合い過ぎていたから、だと思う。
「……あんまり見ないで」
 そうは言うが、見るに決まっている。そこへ触れるとしっかりと濡れていて、抱えていたテメノスさんをシーツへ押し倒した。そのまま恥ずかしそうにしている彼から丁寧に脱がせていく。くったりとしている薄い色の性器があらわれて、これも目に毒だと息を呑んだ。更に脱がせている途中の下着がするすると太ももを通っていく様子だけで熱が集まってきて、とんでもないことをしているのではという気分になってきた。
 ニーハイソックス以外は何も穿いていない真っ白な脚を広げると、顔を真っ赤にしながら「はやく、奥……欲しいです」と強請る声が聞こえてきた。
 流石に頭を抱えたくなる。もういいか、と息を吸って、再び彼の腰を抱えなおした。

 * * *
 
 どれだけの時間が経ったのかは分からない。
 薄暗い自室のベッドで、僕はテメノスさんと何時間も身体を重ねていた。
 今も彼の片脚を抱え、強請る奥へと自身を押し込みピストンさせている。丸見えの結合部からは中に出したものがどろどろと溢れていて、どれぐらい耽っていたのかと思い出させる。
「んぁっあ、ン♡もっと奥きて、おねがい、あっあん♡」
 乱れたシーツをぎゅっと掴み、媚穴で僕を咥えたままのテメノスさんが喘ぐ。彼の隘路はすっかり僕の形になってしまったのではないかと思うほど咥え込まれ、抜こうとすれば「まだ駄目だ」と言うかのように吸い付いてくる。
 彼の性器からもとろとろと欲が溢れていた。しかしそれも今は大した量も無く突かれる動きに合わせて揺れる程度で、最早出すべきものは尽きていた。
「テメノスさん、好きです……ずっと、ずっと」
 ぐ、と何度目かの奥へ押し込む。ぐぽ、と辿り着いた感覚があり、ここを抉ると途端にテメノスさんは表情を蕩けさせながら華奢な身体を震わせた。
「そこ、きもちぃ……んぁ、あ、わたしも好き、クリックくん……もっときて、いっぱい気持ちよくして♡」
 両手を伸ばしてきたので深く覆いかぶさると、腰に脚が絡みついてきた。白いニーハイソックスに包まれているすらりと伸びた脚で引き寄せられ、より深くを貫いてしまった。
「いっぱい動いて、私のこと好きにして。もう君のことしか考えられないんです……」
 抽挿の最中に首元を吸われ、そこでまた熱が弾けてしまった。
 不思議と枯れない濃い種を注ぎながら「僕もです」と囁く。すると「嬉しい」と聞こえてきて、啄むようなキスが返ってきた。
「ね、これからはずっと私のことだけ考えて。他の誰かと見合いなんてしないで。……私も君のことだけ、愛してるから」
 きゅう、と締め付けられたせいで再び質量が増していく。今までこんなことはなかったのにと思うと同時に、自分をここまで変えさせる彼を更に独占したい気持ちが高まっていった。