がちゃがちゃ

泡沫に帰す

 互いに中途半端に脱いだまま、シーツの海に沈んでいた。
 そして私はクリック君に押し倒されたかと思えば、はだけた胸元を弄られている。その他は何も着ていないので、余計に恥ずかしい。
「私のからだ、君と違うから……あんまり見られると、その、恥ずかしいです……」
 見上げた彼の身体にはしっかり筋肉がついている。一方の私は男にしては白くて筋肉も薄い。逞しさとは程遠い体格だ。
 だけどクリック君は小さく笑って、私の肌を愛おしそうに撫でた。
「恥ずかしいことなんでないですよ。テメノスさんは、すごく綺麗ですから」
「そんなこと……ん、あっ」
 胸元を這う大きな手の指先が、反応しかけていた突起を掠めた。
 驚いてつい声を出してしまう。それが刺激になったのか余計に反応して、ぷくりと尖った乳頭を擦られる。
「あ、んっや、あぁ」
「声出ちゃうのかわいいですね、ここ、気持ちいいですか?」
「知らな、ぃ……あん、あッやあ、あ!」
 コリコリと擦られたり摘まんだりと繰り返されている。
 誰かにこんな触り方をされるのは初めてで、甘く色づいた乳頭が彼を誘うように反応してしまう。
 そんな私の身体を確かめるように、顔を下げたクリック君は指で弄っていたそこを舌でぺろりと舐めはじめた。
「ひぅ、ああッん、あァ!」
 指とは違う感触に腰が痺れそうになる。びりびりとした刺激が全身を駆け巡っていき、気が付けば夢中で喘いでしまっていた。
「やら、あっあんっあ、そこっダメだってば、ああっん」
「本当ですか……?」
「だ、だってぇ……きもちよくて、んっんぁ、おかしくなっちゃぅ、から……」
 つん、と舌先で突起を撫でられる。仕舞には口に含まれては吸われてしまい、全身の痺れが強くなっていった。
「も、だめっだめぇ、あッあん、あ、あ……——ッッ!」
 甘い刺激に耐えるようシーツを掴む。
 すると身体中の熱が集まってきて、気が付けばぴゅるぴゅると自身の中心から吐き出してしまっていた。
(う、嘘。胸を触られただけで……こんな……)
 クリック君に引かれてはいないだろうか。そう思い、恐る恐る彼の様子を窺う。
 すると私の吐精を見ていた彼は、ぼうっと顔を赤らめたまま固まってしまっていた。
「あ、あの……クリック君、わたし……」
 恥ずかしさに身体を反らそうとすると、それをさせまいとするかの様に抑えつけられてしまった。
「え……?」
「テメノスさん、すみません。僕……」
 獣を宿している彼の顔から、更に奥へと視線を送る。
 そこには布を押し上げている雄が見えて、私は思わず息を呑んだ。

 そして、あるものを思い出す。
 宿の主人から貰い、ベッドのサイドチェストへ置きっぱなしだったものだ。
「それって……?」
「香油です。身体に塗るものなので、これ……使ってください」
 蓋をあけると、ふわりと甘い香りが漂ってきた。
 宿の主人は心を落ち着かせる効果があるといっていた。それを指で掬って纏わせると、私は自らの窄みにそれを押し込むように塗った。
「君が欲しいと言ったの、あれは本心ですから。だから、手伝ってもらえますか……?」

 * * *

 香油を纏ったクリック君の太い指が狭い窄まりを抉じ開けて、ナカを解す様に擦っている。
 いつの間にか三本ほど指が収まっており、ぬぽぬぽと音を立てながら浅い部分を何度も弄られていた。
「んっあ、ああっあ、やあ、ん」
「テメノスさん、平気ですか?」
「へいき、ですから……そのまま……ひぁ、あん!」
 くに、と弱い部分を指で押される。
 私の反応からそれが何なのか悟られてしまい、そこばかりと集中して突かれる。
「や、ああ、そこばっかり、あぅ、あっあ!」
「あなたの好きなところ、全部知りたいんです。ここが気持ちいいんですよね……?」
「きもちいい、けどぉ……でも、あっあぅ、んぁ、あン」
 きもちよすぎて、頭がおかくなりそうだ。
 だけど、だけど。
 私は両腕を伸ばして、この身体を押さえつけている彼を抱き寄せた。
「指じゃなくて、こっちが欲しい、です」
 膝で彼の中心をぐりぐりと押す。
 するとクリック君は私から指を抜くと更に息を荒げて、はぁ、と重たい息を吐いた。
「……後悔、しませんか?」
「しないです。君にだったら何をされてもいい。だから、はやく……」
 脚を開き、彼が触れていた箇所を自ら拡げて見せる。
 収まっていた香油がくぷりと溢れる。その瞬間、彼の目の色が変わったのが分かった。

 * * *

「あっあん、ひぁ、あっんン、ああ!」
 気が付けば互いに一糸纏わぬ姿になっていた。
 そして背後から腰を掴まれ、最愛の人の雄でどちゅどちゅと隘路を抉られている。
 初めて他人のモノをまじまじと見たときは自分のものとの違いに驚いた。こんなにも、異なるものなのだろうか。
「クリックくんの、太くておっきくて……苦しいけど、きもちぃ、です……ひぁ、ああ!」
「……そういうこと言われたら、こうもなりますよ」
「ん、また硬くなって、……あっあん!」
 屹立で浅い部分を擦られたかと思えば、今度は奥を抉る様に激しく突かれる。
 それに耐えるため、四つん這いのままシーツを強く掴む。
 だらだらと涎が口の端から溢れてはしたない。だけど、淫らに喘ぐのも、痴態を晒すのも、彼にされていることだと思えば全てが幸せに変わってしまう。
「おなかのなか、クリックくんでいっぱいで幸せ……ん、もっと奥、きて……」
「いいですよ、いっぱい気持ちよくしますね?」
 腰を抱えなおされ、更に深く抽挿される。
 そのまま何度も激しくピストンされて、快感に締め付けてしまう。
「くっ……テメノスさん、そんなことされたら」
「あ、クリックく、ん……んぁ、あ、待って、あ、ああッ!」
 再び私が達すると同時に、ずぽ、と抜けていく感覚があった。
 振り返るとクリック君は私のナカからいなくなっていて、剥き出しの腰や背に向かって射精していた。
「はァ、……すみません、すぐ綺麗にしますから」
 そそくさとベッドから降りようとする彼の腕を掴み引き留める。
 そんな私の様子に戸惑っている彼を、今度は私が押し倒した。

「私、君が欲しいって言ったじゃないですか」
「え、え……?」
 クリック君の上へ乗り上げる。萎えている彼のモノを撫でる様に触れると、すぐに硬度を取り戻していった。そんな姿を見て、つい口元が緩んでしまう。私で興奮してくれているという多幸感が、信じられないぐらい嬉しいのだ。
 そして彼の天を向いている先端を、先程まで彼を受け入れていた場所へあてがう。そのままゆっくりと腰を落とすと、ぐぷぐぷと咥え込んでいく感覚が全身を覆った。
「ん、あ……」
 全て収まり、小さく息を吐く。
 自分からこんなことをしている今、はしたなく喘ぐ姿を見られるのはどうにも恥ずかしい。
 口元に手をあて声を抑えていると、下から胸元へ手が這ってきた。
「やぁ、あっ」
「声、抑えないでください」
「で、でも……ん、あっあん、やあぁっ!」
 ぷにぷにと乳頭を指の腹で捏ねられ、つい嬌声が溢れてしまう。
 私が喘ぐたびにナカに収まっている彼自身がどんどん大きく、そして硬くなっていくのが分かる。
「テメノスさん、腰揺れてる。かわいい……」
「だって、きもちいいから……あ、今動いちゃだめ、やっあ!あァ、あん!」
 クリック君は上体を起こすと私の臀部を抱え、下から突いてきた。
 自分の体重が合わさって先程よりも深く挿入ってくる。奥を抉られ、そのたびにだらしなく喘いでしまう。
「好きですよ、テメノスさん。普段のかっこいい姿も、僕にだけ見せてくれる今の姿も。ぜんぶ、ぜんぶ」
「あ……わたしも、クリックくんが好き、好き……ひぅ、あっああ、あっ」
 ずちゅずちゅと突き上げられ、私は彼へと腕を回してしがみついた。
 私は彼のもの。彼も私のもの。その証を残す様に剥き出しの肌を吸う。残った赤を見て幸せを感じてしまうのは愚かなことなのだろうか。
 
「すみません、僕、また……」
 ナカでどくどくと脈打つ彼を感じて、私はきゅうっと絞る様に締めつけた。
「! テメノスさん、もう離して……ッ!」
「嫌です、君の……ぜんぶ、中にください……」
 その言葉に応えるように、彼が私を抱えなおす。
 そして下から深く貫かれ、ぐぽんっと最奥まで暴かれたのが分かった。
「ん、あっそこ、君でいっぱいにして、おねが、ぃ」
「これで、もう誰がなんと言おうと……あなたは僕のものですから……ッ!」
 直後、どぷっと注がれる感覚が襲ってきた。
 同時に私も果て、朧げな意識の中でキスを繰り返す。
 
 その後の冷静さを取り戻したクリック君が慌てていたのが可愛かったというのは、彼が落ち着いてから伝えることにしよう。
 私の言葉で、確かな愛を告げるように。