がちゃがちゃ

no one knows

 それから一時間と経たないうちに雨は止み、クリックとテメノスは眠っていた子羊とともに村へと戻った。
 無事牧場へ子羊を送り届けると飼い主は探し回っていたようで、安堵のあまり目の前でわんわんと泣き始めてしまっていた。
 そんな彼を見送り、二人も教会へと安否を伝えに向かう。
 村人たちも全員無事だったようで、大きな怪我人も無しであったそうだ。
 確認を終えたクリックは教会の神官たちに挨拶をすると、大聖堂へと戻っていった。

 そして、その日の夜。
 約束通り、クリックはテメノスの自宅を訪れた。ここへ来るのは初めてなので多少なり緊張をしている。
 ノックひとつ躊躇っていると、その前に入口の扉が開かれた。
「君、何してるの」
「……なんだか緊張してしまって」
 目の前に現れたテメノスは、当然ではあるのだが神官の格好ではなくラフな格好をしていた。
 いつもはしっかりと着こんでいるのに、自宅だからか鎖骨あたりまで見えるシャツを着ている。
 普段は見ることのない姿に目を奪われていると、テメノスは「入らないの?」と可愛らしく首を傾げた。
「い、いえ。おじゃまします」
 テメノスはおかしそうに笑いながらも、すぐにクリックを招き入れた。
 
 室内は積み上げられた本がある他には神官らしく慎ましやかだった。
 しかしなにやら良い香りがすることに気がついたクリックは、テメノスへ尋ねてみることにした。
「なんだか、良い香りがしますね」
「そうですか?」
 言いながらテメノスがクリックの前を通る。
 すると、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐった。
(あっ――)
 匂いの正体が分かり、クリックは背後からテメノスを抱きしめた。
「なんですか……、ぁっん!」
 抱きしめたまま、目の前の無防備な項に顔を寄せる。
 匂いの正体を確かめながら白い首を吸うと、匂いと同じく甘い声が返ってきた。
「もうシャワー浴びてるんですね?」
「だ、だって……! ちょっと待って、クリックくん、や、ぁ」
 がっついていると思われているだろうか。
 だけど煽るようなことをされているし、合意だし……などと頭の中で言い訳を並べていると、振り返ったテメノスが口を開いた。
「寝室、あっちですから……もうちょっとだけ、待てますか?」
 頷いたクリックはテメノスを軽々と横抱きにする。
 そしてそのまま指をさされた部屋へと向かうのだった。

 * * *
 
 クリックは抱えていたテメノスをそっとベッドへと下ろし、その隣に座る。
 明りをつけていないので寝室は暗いままだ。ランプに火を灯そうとしたら「そのままにして……」と恥じらう姿を見せられたので従うほかない。
 薄暗い中でもお互いの表情ははっきりと分かる。何も言わずとも距離が縮まっていき、心が通ったときと同じように自然と唇が重なっていた。
 クリックはテメノスの顎へ手を添え、逃げる隙を奪った。
「ん、ぁ……」
 キスが深くなるにつれ、テメノスから声が漏れ始める。
 舌を絡ませながら互いを味わっていると、テメノスが空いている方のクリックの手へ指を絡めはじめた。それに引き寄せられるようにぴとりと身体が密着する。
 見れば、とろんと蕩けた翡翠がこちらを見つめていた。
「こうして君と……治癒以外で触れあえて、幸せです」
 今では恋人となった男がふわりと微笑む。
 クリックは自身の衝動を抑えなんとか理性を保ちつつ、テメノスの服へを手をかけた。
「脱がせても、いいですか?」
 素直に訊けば、テメノスはきょとんとした表情になって目を細めた。
「ええ、どうぞ。私を好きにしていいのは君だけですから。なんだってして良いんですよ?」
 言いながらテメノスもクリックの服に手をかける。
 手際が悪くなることを気にしないまま、手を絡ませながらも互いに服を脱がせあった。
 
 脱ぎ捨てた服がベッドの下へ落ちていく。他人に肌を晒すのは久方ぶりで、クリックの吐息に多少の緊張が滲む。
 テメノスは経験が無いと言った。それが男性相手になのか女性も同様なのかまでは聞けなかったが、自分よりも緊張していると言うのが見て分かる。
 しかし。
「あ、の……クリック、くん」
「どうされました?」
 テメノスを押し倒したクリックは、柔らかな頬を撫でながら返事を待つ。
「きっと、今夜はこうなると思って。それで……」
「……?」
 もじ、とテメノスは落ち着かない様子のまま太ももを擦り合わせている。
 白い肌にはうっすらと朱がさしており何かを恥じらっているようだった。
「だから、えっと……準備、してます。すぐ、君が欲しくて」
 閉じられていた魅惑的な太ももが開かれていく。
 テメノスはその奥に指を這わせ、窄まりを無理やり拡げてみせてきた。
 そこからは津液とともに半透明の粘液がとろりと溢れだし、浅く指で撫でるだけでくちゅくちゅと情欲を煽る音が聞こえてくる。
「ここ、もうずっと寂しくて……だから、お願い。はやくきて……♡」
 緊張していた姿とは裏腹に、自分を求める素直な仕草に気絶してしまいそうだった。

 * * *

 クリックはテメノスを正面から組み敷いたまま、欲望のまま腰を打ちつけている。
 奥へ突くたびに心を搔き乱してくる声が聞こえてきて、頭がおかしくなりそうだった。
「あっあん、好き、クリックくん、だいすき♡もっときて、おねがい、ぃ♡」
 深く貫くと腰へ脚が絡んできて、いつの間にかこちらが逃げられなくなっていた。
 言われた通り奥へ練り込むように突き、施されるがまま射精する。もはや絞られている感覚に近い。
 この人はこんなにも自分の欲に忠実で、だけれどそれを隠すのはとてつもなく上手い。
 求められる悦びに身を預けつつクリックは何度も性器でテメノスの好きな場所を抉る。すると分かりやすく身体を震わせて、艶っぽい声を溢れさせながら達しているのだ。
「ん、ぁ……ッ♡」
 可愛らしく射精して、それでもぎゅうぎゅうとしがみ付いて離れない。
 いつも見ている姿とは違う生き物のようで、だけれど知れば知るほど“彼”という人間を構築しているものが理解できる気がした。
「テメノスさん、気持ちいいですか……?」
 ぴゅるぴゅると射精している姿を見ながら、身体に反応して赤みを増した乳頭へと触れる。
 熱を帯びた先端は欲しがるように膨らんでいて、少し擦るだけでテメノスは身を捩った。
「や、待って、今そこダメ、あッんぁ、ああ♡」
 待てと言いつつ抵抗はされない。この行為を繰り返すごとに、テメノスの本質が分かってきた。
 そのため、クリックは手を止めずくにくにと捏ねるように突起を弄った。
 それだけでも反応は良かったがどこか物足りなさそうだったので顔を近づけて口へ含む。
 すると舌先でつついただけで甘く達していた。同時に中に挿入ったままの性器がキツく締めつけられる。
「ここでイけちゃうの、すごく可愛いです」
 言いながらも扱く手は止めることなく、もう片方も指の腹で擦り続ける。
「ぁ、あ……イくのとまんな、ぃ……♡くりっくくん、たすけて……ッ♡」
 ぴゅっ♡と弱々しく射精を繰り返す姿が愛おしくて唇を重ねる。
 首に両腕が回ってきて、何度も深くキスをした。

「クリックくん、くりっくくん……♡」
 テメノスはこうして、行為の最中に何度も名前を呼ぶことに気が付いた。
 安心するのだろうかと思い「名前、いっぱい呼んでください」と伝えた。
 すると何故か収まったままの熱が絞られていく。テメノスは耳まで赤くして、強請るようにクリックへとしがみついていた。
「私、こう見えて寂しがり屋だって……あれ、嘘じゃないんです。だから、いっぱい君を感じたくて……」
「……それダメですって」
 これでも頑張って抑えていた方だ。
 しかし、それも限界がきてしまった。
 クリックはテメノスの脚を掴むと、何も言わず抱えはじめた。
「クリックくん……?」
 何度も奥を暴いてきた亀頭をギリギリまで抜き、一気に挿入する。
「なに、あッんぁ、ああァ♡すごい、深くて、ぇ……私のナカ、ぜんぶ、クリックくんでいっぱいになってるみた、い♡」
「ね、それなら寂しくないですよね?」
 きゅうきゅうと隘路で締め上げられる感覚に身体が震える。
 こちらも射精を繰り返しているというのにどうして勢いが衰えないのか。
 そんな疑問すら感じられぬまま、クリックは夢中で腰を振った。
「寂しくない♡でも、もっと君が欲し、ぃ……んぁッあ、あんっあ♡」
「寂しがり屋なところも意外と欲深いところも、ぜんぶ愛してますよ。これからも僕だけを見ていてくださいね」
 ごちゅ、と辿り着く感触。
 その瞬間テメノスの反応が変わり、乱れているのが分かった。
「あ、そこっすき♡奥きもちぃ、です♡あ、んぁ、あア♡」
「あなたのここを知ってるのも僕だけですから、他の誰にも教えたら駄目ですよ」
「ッん、あ、ぁん♡君だけ……君のことしか好きじゃないから……だから、もっと……♡」