がちゃがちゃ

from eternity

 次に目を覚ますと、そこは真っ暗な空間のベッドの上だった。
 しかし、ここは知っている空間だ。その内装から、本部の建物の離れにある重症患者用の病棟だと分かる。今は深夜なのか、あたりは恐ろしいほどに静かだ。
 体を起こし見渡すと、どうやら運ばれたのは個室のようだった。相部屋ではないということは思っていたよりも傷が深かったのだろう。生きているのが不思議な気がしてきた。
 目が覚めたことを誰かに伝えた方が良いと思い立ち上がろうとして、それが出来ないことに気が付く。部屋が暗いので分からなかったが、ベッドの膝のあたりで腕を枕にしてうつぶせて眠っているテメノスさんが、いた。
「……テメノスさん」
 名前を呼びながら手を伸ばし、変わらず綺麗な髪に触れる。するとすぐに顔を上げ、テメノスさんはこちらへ振り返った。
「クリック、くん」
「はい。あの、なんだかお騒がせしたようで……」
 テメノスさんは、きっとストームヘイルへ着いてからずっと傍にいてくれたのだろう。
 暗闇でも分かる。隈が酷く、泣き腫らしたのか目の周りが真っ赤だ。少し顔色も悪いように見えるし、声も枯れていた。
「…………、ばかッ!」
 ばか、とは。
 突然の罵声に驚いて身構えると、テメノスさんはベッドへ乗り上げ抱き着いてきた。久しぶりに感じる彼の体温に、どんどんとあたたかな気持ちへなっていく。
「どれだけ心配したか……傷だらけの君を見て、本当に死んでしまったかと思いました」
「すみません、僕が未熟なばかりに」
「まったく……もう、いいんです。生きていてくれて、本当にありがとう」
 ぐす、と耳元で涙を含んだ声が聞こえる。テメノスさんの声が弱々しくなり、腕を回してあやすように背中をさすった。するとテメノスさんの匂いに包まれて、まるでひだまりの中にいるような心地になっていった。
 ……そして、これはもう、どうしようもないのだが。感動の再会だと言うのに、下半身へ熱が集まってきているのが分かる。最悪だ。
 最愛の人とこうやって抱き合っているわけで、それも一ヵ月も会っていなかったのだ。生理現象なので許してほしい。

「あの、テメノスさん……すみません、一度離れてくれませんか」
「嫌です」
 あまりにもはっきりとした返事に慌てるが、なんとか引き剥がそうとした。
 しかし、テメノスさんは意地でも離れようとしない。
「お願いですから、今は離れてください……!」
「嫌だ、もう離れませんから!」
 正直、こうして体温を感じているだけでやばい。今すぐ押し倒したい欲望を抑えているこちらの身にもなって欲しい。
 そうして僕は大きく息吸い込み、腹から声を絞り出した。
「……僕が!我慢できなくなるんですッ!」
 夜中なのであまり大きな声は出したくなかったが、状況を考えつい声を荒げてしまった。
 それに驚いたテメノスさんは大人しく引き剥がされ、ぽかんとした顔でこちらを見ている。
「……え?」
 目を合わせるのも恥ずかしいというのに、テメノスさんは一向に目線を反らそうとしない。
 しかも、あろうことか下半身を覆ってくれていた厚い布団をめくってしまった。
 そこに現れたのは、怪我人用の患者衣を躊躇いなく押し上げる愚息。
 それを見たテメノスさんは何も言わない。せめていつもの様になじってくれたら良いのに、無言は更にキツい。

「あの……そういうわけですから。だから、ちょっと外していてもらえると助かります……って、あ!?」
「……」
 テメノスさんは、いつかの日の様に躊躇なく僕の患者衣のズボンを下ろした。一体、何をしている――?
 しかも、そのまま勃ち上がっている性器を綺麗な手で扱き始めた。
「ちょっと、さすがにここでは……!」
「こんな状態の君を放っておけるわけがないでしょう?」
「う、……ッ」
 悲しいことに何も抵抗できない。滑らかな手のひらに包まれて、たまらなく気持ちがいい。
 テメノスさんの扱く速度が上がり、さらにソレは質量を増していった。
「君、丸一日寝た切りだったんですよ。しかも、最後に私たちが会ったのは一ヵ月も前。相当溜まってるんじゃないですか……?」
 そう囁く口元は弧を描いている。悔しいが彼の言う通りで、溜まりに溜まっている。会えていなかった期間は一人で発散してはいたが、どうしても満足はできなかった。
 今までは長い期間会えなかったとしても、顔を合わせればすぐに抱き合うことが出来ていた。今それを許されないのは、かなりキツい。
 だが、だとしても、だ。
「誰か来たらどうするんですか!」
 なるべく小声で言うが、テメノスさんは変わらず楽しそうなまま、僕の愚息へ奉仕している。
「ここは離れの病棟ですし、この時間帯は見回りもいませんから安心して」
 なぜ聖堂機関の人間でもないのに内部の様子にそれほど詳しいのだ。
 そう思っている僕の考えなど分かりきっているとでも言うかのように、テメノスさんは先ほどまで泣き腫らしていたのが嘘のように軽やかな口調で続けた。
「君が寝ているとき、オルト君もお見舞いに来たのでそのときに教えてくれました。いい友人を持ちましたね?」
 なんてことだ、すべてオルトに見透かされている。
 しかし起きて真っ先にすることは“これ”ではないだろうと思うが、彼も僕の最近の様子を察して気にかけてくれていたのかもしれない。毎日テメノスさんに会えない寂しさを呪いの様に伝えていたのだから、仕方がないと言えばいいのか……。
「ほどほどに、とは言われているので……もう、いいでしょうか」
 何が“ほどほどに”で、何が“もういい”と言うのか。
 あまり分かりたくは無かったが、それでもテメノスさんはこの状況を理解させるようにベッドへ横たわる僕へと跨ってきた。
 そうして法衣を脱ぎ捨て、下に着ていたシャツのボタンを外していく。その様子を艶めかしいと思うと同時に、美しいとも感じてしまう。
 前をはだけさせたテメノスさんは下に穿いていたものも全て脱ぎ捨てていき、僕の患者衣の前も開かれてしまった。
 そして散々しごいていた性器に双丘を押し当てるように腰を動かしている。
「あ、あの」
 やっぱり、まずいのでは。そう思うのに、この先を期待してしまって声が出てこない。
 そんな様子すらも見透かされているのか、テメノスさんは聖母の様に愛おしげに微笑んだ。
「大丈夫。君は見ているだけで、いいですから……あ、んッ♡」
 ぬぷ、と先端が窄まりに収まっていく。すっかり僕の形を覚えてしまっているのか、久しぶりで大して慣らしてもいないというのに、すんなりと咥え込まれてしまった。
「あァ、ぁん……♡クリックくんの、おっきぃの、いっぱい入って……る……ッ♡」
 ゆるゆると腰を上下させながらテメノスさんは眉を下げ、恍惚とした表情でこちらを見下ろしている。はぁ、と吐き出される息にすら魅了されそうだ。
 するとこちらへ向かって手を伸ばしてきたので、僕は迷わずその手を取り指を絡ませた。もう片方も同じようにすると幸せそうに微笑んで、快楽に身を委ね始めている。
「んァ、あ♡あッああ、んっン♡」
「テメノス、さん……!」
 限界が近い。もっと欲しくて、見ているだけで良いと言われたのについ下から突いてしまった。
「あッあ♡や、ああ♡」
 途端にテメノスさんはぴゅるっ♡と射精して、僕の腹を汚した。
 もう我慢なんて出来るはずもなく、僕は絡めていた手を解いて彼の腰を掴み、深く下から突きあげた。
「ん♡くりっく、くんっだめ♡だめぇ、あッやああ、あんッあア♡」
「駄目って、どの口で言ってるんですか……」
 自分から煽ってきたくせに。
 僕を愛しているくせに。
 もう離れないと、言ったくせに。
「これ以上シたら……あ♡本当にきみから、離れられなくなっちゃ、ぅ♡」
「いいじゃないですか、そうなったら、ずっと一緒にいれば良いんです」
「でも、そんな……あ、んァ♡あ、ああァっ♡」
 どちゅんっ!と強く抉る様に突くと同時に、彼の胎内へ熱を放つ。それに善がって、れん縮させながら隘路で扱こうとするテメノスさんへため息が出そうになった。
 身体の痛みなどとうに消えている。彼が懸命に看病してくれたおかげだろう。傷跡はあるものの、骨も神経も異常はなさそうだ。そもそも問題があれば、神官ひとりを置いて患者と病室へ二人きりにするはずがない。
 きっとこうなることが分かって、離れの個室をあてられたのではないだろうかと錯覚してしまう。真実は不明ではあるが、今となってはこの状況が有難いので誰の差し金だったとしても礼を言いたい気分になる。

 痛みと同時に理性も失われたのではないだろうか。そう思うほど、僕は飢えていた。
 一度の射精で収まるはずがなく、身体を起こして体位を変えるように僕と繋がったままのテメノスさんを押し倒す。こちらを見上げる目には期待しか含まれていない。
 なんて、素直で可愛い人なんだろう。
「……クリックくんが、好き。君になら何をされたっていいって、ずっと思ってるんです」
 恥じらいつつ、小声でそう呟く彼へキスをする。出会って一年近くが経とうというのに、こうして愛を持って接してくれるところが好きだと、どうすれば伝わるのだろう。
 再び熱を持った屹立で、深く律動させる。奥を突くたびに可愛く喘ぐ姿を誰にも知られたくない。こんな欲深さが自分の中にあるなんていまだに信じられない。こうしてテメノスさんと交わることで知ったことが、僕にはたくさんあった。
 奥まで咥え込んだ窄まりが更に深くまで導こうと締めつけてくる。それに応えるように腰を掴んでいた手を彼の後頭部へ回し、抱きかかえるようにして深く貫いた。
 すると、ぐぽん、と今まで知らなかった場所へ辿り着いた。互いの息が絡む。直後、テメノスさんは再び射精して身体を震わせていた。
「あッああ♡んぅ……クリックくんの……、ひぁ、あん♡奥まできて、るぅ♡」
「ここに入るの、絶対に僕だけにしてください」
「きみだけ、です……こんな、姿見せるの……んぁ♡だから、もっと、もっと……おねが、ぃ♡」
 腰に脚が絡みつき、射精を強請られる。甘イキを繰り返している彼を何度も突き、知らないところなど無いのではないかと錯覚させるほどに乱した。
「ずっと、僕だけのもので、いてください……」
「なる、クリックくんだけのものになるからァ♡んァ、あんっ♡まだ、いっぱい欲しぃ……ん、あン♡」
 それからは、まるで獣の様に抱き合った。
 互いに何度射精したかなど、覚えてはいない。