from eternity
テメノスさんとは、それからも会うたびに媾っている。回数を重ねる度に遠慮が無くなっている気がするが、なにも問題は無い。淫らな関係が続いているなと思ってはいるが、そんなことはどうだって良かった。
身体だけの関係であったならば、きっと今頃僕は悲しみに暮れていただろう。しかし、自分たちは身体と同様にしっかりと心も繋がっているのだ。揃って寝る時は愛を伝えるし、それ以上のことをしている癖にいまだに手を繋ぐだけで恥じらったりする。とにかく、すべてが愛おしいのだ。
性交以外の時間だってしっかりと作っている。今日だって「装備品を見繕ってほしい」というテメノスさんのために、お互い休みなこともあって一緒にニューデルスタまでやって来た。今まで二人で会うときは宿かテメノスさんの自宅が多かったので、こうしてお互い私服でちゃんとデートらしいデートをしているのは初めてのことだ。内心、ものすごく浮かれている。子ども扱いされそうなので黙ってはいるが。
装備品は、テメノスさん用のものとそうでないものが必要らしい。いつ暴徒が現れるか分からないこの時代、フレイムチャーチの戦うことができない神官達にもそれなりの装備をさせたいというのがテメノスさんの目的だった。
確かに、自分がはじめてフレイムチャーチへ訪れた際にも暴徒が村人を襲おうとしていたことを思い出す。ああいった連中がいなくなれば困ることは無いのだが、それをすぐに実現することは難しい。テメノスさんも、いつだって村人を守れる場所にいるかと言われればそうでもない。不在時に何かあっても無事に逃げることができるよう、安心できる装備を持たせたいのだろう。
あまり口にはしないが、村や村人のことを考えている慈愛に満ちた彼のことが好きなのだと改めて感じた。僕のことも、揶揄いはするが会うたびに体調を気遣ってくれる。お互い危険と隣り合わせの職ではあるので当然と言えばそうなのかもしれないが、それでも嬉しい。心配などしなくても良いように、もっと、一緒にいられればいいのに。
テメノスさんは必要な分の装備品を確保できたらしく、表情には出さないが満足そうだった。
購入物はそれなりの量があったので、気を遣わせないよう支払い中のテメノスさんから自然と受け取った。すると「なんだか恋人って感じですね」と笑われ、つい俯いてしまう。良い格好をしようとするとこうなるので、どうにも反応しにくい。なかなかスマートにいかない。
今日はこのまま宿で一泊して、明日午後にはここを発つ。それぞれフレイムチャーチとストームヘイルへと戻るが、途中までは同じ方向なのでもうしばらくは一緒にいられるな……などと考えていると、テメノスさんが腕を引いて来た。
「クリックくん、はやく荷物を置きに行きましょう」
くい、と可愛らしく袖を引っ張るのをやめてほしい。しかし今僕の両手は買ったばかりの装備品で埋まっているため、下手に動けない。
そういうわけで、テメノスさんに言われるがまま腕を引かれ、宿へ向かうのだった。
――――宿へ向かった、はずだった。
だというのに、今目の前に広がっているこの光景はなんだろう。
テメノスさんに腕を引かれた先は、確かに宿の方角だった。しかし、いきなり道中の路地裏に連れ込まれてしまった。どうかしたのかと問いかけるが返事はなく、そのまま壁を背にしている僕の前に膝をつきはじめたのだ。
そして、ずるりと下着ごとズボンを下ろされた。
「――えっ」
状況を飲み込めていない僕の声と同時に、性器が外気に晒される。彼は、何をしようとしている……?
「はァ……ごめんなさい、少しだけ……♡」
柔らかいままのソレに、テメノスさんが首を傾げながら愛おしそうに口づけた。袋を揉みながら舌を絡ませ、幹を辿る様にねっとりと舐めあげられている。
「ちょ……!テメノスさん!?」
いくら声をかけても彼はやめようとしない。ちゅう、と愛おしそうに吸いながら鈴口を指で弄られ、垂れさがっていたソレは徐々に熱を含み、硬く勃ち上がってしまった。テメノスさんは僕の熱が大きくなったことに満足そうに微笑み、そこからは小さな口へと含んで、まるで奉仕でもするかのように懸命に扱いている。やばい、気持ち良過ぎる。だが今はそれに浸っている場合ではない。
しかし、やめさせようにも両手は荷物で塞がっている。咥えられているので腰を降ろすことも無理やり引きはがすことも出来ず、ただただ声をかけることしかできない。
「んぅ……ッ♡」
夢だろうか、夢ならば覚めないでほしい……ではなくて、止めなければならない。だけど目を細め、おいしそうに咥えられてしまってはどうすることもできない。
ありがたいことに人通りも少なく、奥まった場所なので他人がやってくることもないだろう。お互いにとって、いつ人に見られてしまうか分からない状況というのも興奮材料となってしまっている。宿まではあと数分で辿り着いただろうに、それすらも待てない恋人が愛おしくて仕方がなかった。
ならば満足いくまで――は流石に無理なので、早々に射精して彼を抱きたい。咥えたままじゅぽじゅぽと卑猥な音を立てながら奉仕しているテメノスさんを見下ろしながら、腰を揺らす。すると驚いた彼はこちらを見上げ、挑発するように瞳を揺らした。
喉奥まで咥え込ませるように腰を振りながら、苦しそうに、しかし幸せそうに喉を鳴らすテメノスさんを見る。熱が集まってきている。
「く……ッ!」
「んぅ……くりっく、くん……♡」
舐めながら喋らないでほしい。……ではなくて、喋りながら舐めないでほしい。
そんな想いも届かず、じゅるるっと強く吸われて僕の熱は呆気なく彼の口内で弾けてしまった。
射精後になり、やっと「なんてことをしてしまったのだ」と慌てて抜いたが、見えたのはぜんぶ飲み干して微笑むテメノスさんの姿だけだった。
そして、予定よりも大幅に遅れて宿についた。記帳は住んでいるので早々に与えられた部屋へと向かう。
質素な内装ではあるが、しっかりダブルベッドの少し広めの部屋へと入る。僕がドアの鍵を閉め荷物をテーブルに置いた瞬間、テメノスさんが抱き着いてきた。それを合図にしたかのように、その場で雑に服を脱ぎ散らかし、明かりもつけぬまま抱いてしまった。
その後は二人とも脱ぎ捨てた服など気にも留めず、ベッドへもつれ合う様に向かい、もう一度。その後の個室のシャワールームでもう一度。湯浴みを終えた後に、更にもう一度。たぶん、夜が更けるまでずっと繋がっていたと思う。
ここまでしてというのに、まったく熱が収まらない。どうしたことか。オルトが言うように本当に病気なのでは……と思いもしたが、ベッドの中で腕の中に収まっているテメノスさんが幸せそうに身を寄せてくるのでなんでも良かった。この人が隣にいればそれで良いなんて、数年前の自分では思いもしなかっただろう。
こんなことが続いているので、淫らなことなど一切興味が無さそうなテメノスさんは意外と自分の欲に忠実なのだということが分かってきた。神官という職の人でも、しっかり性欲はあるらしい。今までどうしていたのか気になるところだが、それについては怖くてまだ聞けていない。
そして、問題も一つ。このままでは、テメノスさんが好きなのは僕ではなく僕の愚息ということになってしまわないだろうか。それだけはまずい。非常に困る。
「あの、テメノスさん」
名前を呼ぶと、ぎゅうぎゅうと抱き着いてきているテメノスさんが顔を上げる。
「僕、テメノスさんのことが好きです。愛してるなんて言葉では片付かないほどに」
「ふふ、急にどうしたんですか?」
「なんとなく……今、伝えたくなって」
同じ気持ちなのだと確認したかっただけなのだが、それを言えばまた揶揄われそうな気がして言えなかった。臆病な自分が嫌になる。
すると、テメノスさんが身を捩りながら顔を寄せてきた。その様子を眺めていると頬にキスをされ、恥じらいを含んだ声色で「私もです」と囁かれる。
「君が思っている以上に、私は君のことが好きなんですよ。……気づいていませんでしたか?」
「……僕、もう、なんて言えばいいか」
好きな人が、自分のことを好きだと言ってくれる。これが幸せ以外のなんであると言うのか。
愛おしさが募り腕の中のテメノスさんを抱きしめる。痛いです、と小言を吐かれるが構わない。サラサラと流れる綺麗な髪に口づけていると、テメノスさんはもじもじと太ももと擦り合わせてきた。
「また、君が欲しくなっちゃいました……」
ぽわわ、と顔を赤らめていく姿に眩暈がする。主よ、感謝いたします……。
僕も彼も、性に奔放というわけではない。ただ愛しい人の傍にいると繋がっていたいと思うだけだ。
それの何が悪いのだと、今度オルトと会った時に言っておこう。