盲目的な愛を説く
夜も更け静かなはずの室内に、二人の熱い吐息が混ざり合っている。先程まで組み敷かれていたテメノスは、今度は四つん這いになっていた。
その背後で細腰を掴んだクリックが後ろから容赦なく突いている。深く貫かれ、テメノスは自ら腰を振っている。無意識に自身のイイところに導こうとしているのだろう。
「そこッ深い、ぃ♡奥きもちぃ、んっあ、ン♡もっと、もっとぉ♡」
「はァ、テメノスさん、ずっとイきっぱなしで可愛いです。そんなに、気持ちいいんですか……?」
「だって、ぇ、クリックくんにナカ擦られると、ひぅッ♡気持ちよくてすぐイっちゃ、うぅ♡」
その言葉通り、締め付けてやまない媚肉を怒張で擦るだけでテメノスはメスイキし続けている。カリで前立腺を引っ掻くと「あっ♡」と可愛らしく鳴き、その度にクリックの昂ぶりは質量を増していく一方だった。
腰を抱えなおし再びピストンをはじめると、テメノスは再び喘いだ。
「やぁ、あッ♡いま、イったばっかりだから、あん♡」
「でも、もっとできますよね?」
「ッん……ぅ♡」
もう、どれだけ交わっているのか分からない。ただテメノスが求めるがままに突き、射精して、その度に「もっと」と強請られる。
これは本当に彼が求めているものなのか、それとも自分がそうさせているのか、クリックには分からなかった。
クリックはテメノスを起こすと膝の上に乗せて、対面座位の体勢にさせた。そして下から突きあげると蕩けた表情で喘ぐテメノスの首を吸った。
「ん、やッあ♡くりっくくん、それ好きっすき♡」
首に手をまわし、しっかりとクリックに抱き着いているテメノスの声がしっかりと聞こえてくる。
彼をここまで乱しているのは自分だという高揚感で満たされる。しかし、好きです、愛していますと何度も告げてもテメノスはあの日のように返してはくれない。好意に対しての『好き』しかないのだ。
「テメノスさんが好きなのは、どっちなんですか」
「え……?」
突き上げていた動きを止めると、何故と言いたげな潤んだ瞳に見つめられる。
「僕なのか、僕とのセックスなのか。……もう、あなたのことが好きすぎて、おかしくなりそうです」
繋がったまま抱きしめると、テメノスが頭を撫でてきた。どうしてと顔を上げると、言葉の代わりに触れるだけのキスが返ってくる。
「わたし、は……君のことが、クリック君が、大好きです。でも、だからこそ……私が君にしてあげられることなんて、他に無い。これがないと、君は私を置いてどこかに行ってしまうかもしれない……」
「……そんな、こと」
クリックが否定しても、テメノスは首を横に振るだけだった。
「こんなことしかしてあげられないけど、置いて行かないで。そばにいて。ずっと好きでいてほしいなんて、言わないから」
その瞬間、潤んでいた翡翠から涙が伝うのが見えた。
「もう、一人は嫌なんです……」
テメノスのその姿を見たクリックは彼をシーツに押し倒す。何も言わないテメノスに口づけると、頬を撫でられた。
「あなたは、ご自分を過小評価し過ぎだ。僕にとってあなたは何者にも代えがたい存在で、この理不尽な世界を生きる理由でもあるんです」
「……君は優しいから、そんなことを言ってくれるんですね」
力なく微笑むテメノスの頬にキスを落とし、クリックは彼の腰を抱えなおした。
「それでいいです。分かってもらえるまで、毎日だって言い続けますから」
上から伸し掛かる様に覆いかぶさり、テメノスへと大きく突いた。繋がった箇所からぐぽぐぽと卑猥な音が響いて止まない。
肩にテメノスの手が伸びてきて、はあ、と熱い吐息が耳元にかかる。それがどうしてか心地よくて、クリックは夢中になってなんども突いた。
「あ♡アんッんぅ、あっああ♡くりっく、くんっあッん♡」
「あなたがどう思っていても、テメノスさんは僕の憧れの人で……この身を捧げたい人なんです、愛してるんです、ずっと、ずっと」
「私だって君を離したくない……ん、ンッ♡ずっとクリックくんが欲しくて、ぇ♡君に抱かれたくて、まいにち君のことを考えながら自分で、あ、あ♡気持ちよくなって……憧れてるって言ってくれたのに、こんな、こんなに汚れてて、ごめんなさ、い、ぃ♡」
泣きじゃくりながら吐露するテメノスに、クリックの胸が締め付けられる。
あの違和感の正体。やけに準備がよかったり、はじめてのはずなのに挿入まで至れたり、抵抗がなかったり。テメノスは、ぜんぶ、ぜんぶ、クリックを想ってのことだと言う。
「あなたは本当に……どこまで僕の心をかき乱すんですか……ッ!」
「ぁ……ッ♡わか、んないぃ、んっん、あぁっア♡またイく、イっちゃう、ぅ♡くりっくくん、好きっすき、ずっとそばにいて……ッ♡」
びくんっ♡とテメノスの身体が震えたと同時にクリックも彼のナカに欲を吐き出した。
意識を失っているテメノスの髪を撫でながら、クリックは朝が来たらもう一度この想いを伝えようと心に決めた。