わたしは月を見ている
「テメノスさんは、どうしてそんなに僕へくっついてくれるんですか……?」
今日も二人して同じベッドに潜り込み、布団の中で僕に引っ付いて離れないテメノスさんへ問う。
「あれ、嫌でした?」
彼は身じろぎながら、一層ぎゅうぎゅうと抱き着いてきた。その表情が楽しそうで、ついつい口元が緩んでしまう。
「嫌ではないしむしろ嬉しいですが、どうしてかなって。もちろん甘えてもらえるのは大歓迎です」
「ふふ、だって君ってば抱きしめると気持ちいいんだもん」
だもん、と来たか。いくら寝間着を着ているとはいえ、普段着よりも薄い布のためテメノスさんの体温を感じて気恥ずかしくなる。
この人は自分の魅力を理解しているようで、実はしていないのではないのだろうか。だからこんなにも惜しみなく僕にその姿を晒してくれているのだと感じる。
「私はこんな体で筋肉もつきにくいから……その点君は私とは違ってしっかりした体格だし、抱き心地が良いんですよねぇ。大きなぬいぐるみを抱きしめているみたいで」
なんだか複雑になる表現ではあったが、それでも彼が全力で甘えてくれているのは嬉しい。
だけど、あまり積極的なことをされてしまうと、困ることがあった。
「ねえ、クリック君」
引っ付いたままのテメノスさんが、視線の少し下からこちらを見上げてくる。
「今日は、とっても寒いから。君も私にくっついて良いんですよ……?」
試す様な視線が僕を捕えて離さない。それに気が付かない程、僕は初心でも無垢でもなかった。
誘われるがままにテメノスさんの腰を抱き、ぐっと力を入れる。吐息を感じるほどに互いの顔が近づいて、どちらからともなく唇を重ねていた。
「ん……クリックくん……」
口を離すと、とろんと蕩けた目で見つめているテメノスさんがこちらを見ていた。少し開いたままだった小さな口をもう一度吸って舌を捻じ込むと、僕の背に回っていた手に力が込められたのが分かった。
「は、ぁ♡」
キスだけで腰が揺れているのが可愛いと正直に伝えると「ばか」と言われてしまった。そんな言葉さえも戯れに違いなくて、僕の表情も緩んでしまいそうになる。
何度もキスを繰り返していると、テメノスさんの膝が僕の中心をぐりぐりと押してきた。ゆるく勃ちあがっていたソレを容赦なく刺激され、体が固まってしまう。
「テメノスさん……」
見れば、彼の細められた瞳の奥がゆらりと揺れた気がした。
「好きなだけ甘えてください。私はぜんぶ、君に捧げたんですから」
テメノスさんが寝間着の前のボタンを、ぷちぷちとゆっくり開けていく。
その奥に隠されていたものを想像して思わずごくりと息を呑む。僕の視線がそこに釘付けになっていると気が付いたのか「えっち」と罵られてしまった。
「だ、だって。僕は男ですよ、見るに決まってるじゃないですか!」
必死に弁明していると、くすくすと笑いながら開けた部分を静かに曝け出された。一度浴室で触れた部分ではあるが、こんなに近くでまじまじと見たのはこれが初めてた。
どうすれば良いか分からず固まってしまう。そんな僕を見て、テメノスさんは両手で優しく僕の手を包み込んだ。
「おいで、子羊君」
* * * * * * *
僕はテメノスさんの胸元に顔を埋めて、艶をまとった箇所へ舌を這わせていた。
昨日と同じでぷっくりと膨らんだ乳首を口に含んで吸いながら、もう片方も乳輪から引っ掻く様に擦る。それだけで「ひぁ♡」と甘い声が聞こえてきて、脳が溶けてしまいそうだ。
テメノスさんは喘ぎながら腰を揺らし、それでも「もっと」と強請ってくる。
「あ……そこ、ぉ♡きもちぃ、んぅ……いっぱい、触って♡」
言われなくてもそうするつもりなので、容赦なく貪りながら甘く尖った乳首をコリコリと引っ掻く。するとびくんっと彼の腰が跳ね、更に息を荒げ始めた。
すこし触るだけで善がる様に乱れている。弄りながら彼の様子を窺うと、口の端から抑えられなかった唾液が伝っていた。
「や、ァ♡あ、なんかきちゃぅ、あっんン♡くりっくくん、くりっくくん……ッ♡♡」
「大丈夫ですから、気持ちいいの、全部受け止めてください」
耐えきれそうにないなのか、ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。最後に軽く歯を立てながらぴん♡と勃った乳首を指の腹で撫でるように扱くと、びくびくと震えながら抑えきれない声を溢れさせていた。
「ふ、ぁん……♡」
熱を帯びた表情のまま息を整えようとしているテメノスさんの頬にキスをする。気持ちようさそうに目を細めながら、再び僕の手は彼に包み込まれた。
「今度は、こっちにきて……」
導かれた場所は昨日見た、まるい曲線を描く双丘の、その更に奥。
驚いた僕が「本当に良いんですか」と訊けば、頬を染めながら小さく頷いていた。
「はやく……君のものにして欲しいんです」
お互い服を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿で明かりのない暗い室内で肌を重ねていた。
テメノスさんを組み敷き白い身体のあちこちにキスを落としていると、彼がおずおずと手を伸ばしてきた。
「わたしも、それやりたい」
それ、とは何か分からずにいると僕を抱き寄せたテメノスさんは首に吸い付いて来た。そして、ちゅう、と子どもがするように本当に優しく吸って口を離し、納得いかなかったのか首を傾げていた。
「君の様にやりたいのに、なかなかうまくできないですね……」
ここみたいに……とテメノスさんは自らの鎖骨の下あたりを指さす。そこには僕がつけたばかりの痕が残っていた。他にもいくつか赤く散っている箇所があり、どうやらそれを真似したいようだ。
「もうちょっと強く吸っていいですよ」
そう言うと、テメノスさんは同じ場所へ再び口付けた。先程より幾分か強く吸われている。最後に食みながらぺろりと舐められ、思った通りになったのか満足そうにしている。
「ふふ、上手にできました」
テメノスさんは愉し気に自分が付けたばかりの痕を指でなぞっている。その仕草が愛おしくて彼についている痕を増やしていると「クリックくん」と見つめられた。
「こっちも、はやく欲しいんです。ちゃんと準備してますから、ほら……♡」
テメノスさんは密着していた身体を動かして少し離れると、僕によく見えるように大きく脚を開いた。その奥にある場所を二本の指で拡げながら、ヒクヒクとさせている。そしてそこに自らの指を一本入れて、解す様に動かしている。すると中に仕込ませていたのだろうローションが溢れてきて、とろとろと曲線を辿っていた。そう言えば今日は別に湯を浴びていたが、彼の入浴時間が長かったななどと思い返して顔が熱くなる。
「ん、ぁっ♡」
テメノスさんはイイ所を探る様にぐちゅぐちゅと指で掻き混ぜながら、こちらに見せつけるかの様にへこへこを腰を振っている。シーツの皴が広がって、彼の脚がピンと伸びている。
イきそうなのだと分かって彼の手を退けさせて、代わりに自分の指をそこに這わせた。待ちわびていたものの訪れに、ヒクヒク♡と疼いている箇所が咥えるように指に吸い付いてくる。
「駄目ですよ、一人で気持ちよくなったら。ほら、僕も混ぜてください」
「ん、ごめんなさ、ぃ♡クリック君のがほしくて、ひぅッ♡」
たった一本の挿入だけで圧迫感があったが、しばらく解すと肉壁は柔らかくなってきた。浅い部分をトントンと押し潰す様にしてやれば、腰を揺らして快感を享受しようとしていた。
「クリックくんのゆび、きもちぃ……んン、あッあん♡」
反応がイイ場所を押し上げながら刺激してると、彼の呼吸が乱れていくのが分かった。二本、三本と指の数を増やしているとナカはすっかり雄を咥える準備ができてしまい、とろとろになっている。
そうしているとテメノスさんはか細い声で「きて」と囁いた。
「クリックくん、きて。おねがい……」
はあ、と熱い吐息を感じる。僕は昂って腹につきそうになっているソレを手に取り、涎の様にローションを垂らしながら疼いている後孔へとあてがった。それはキスをするように吸い付いて、すぐに先端が飲み込まれてしまいそうになる。
「やっぱり君のは、その……大きいですね。挿入るかな……たぶん大丈夫ですけど」
ちらりと視線を向けられて、恥ずかしさに耳まで赤くなりそうになる。
「すみません……痛かったり苦しかったりしたら、すぐに教えてください」
「もう、心配性ですね。でも、そういうところも好きですよ」
ふわりと微笑みながら「はやく」と強請られる。意を決して先端をそこへ押し込むと、ぐぷりと咥え込まれてしまった。
「や、ぁ……ッ♡」
「テメノス、さん……」
緊張のあまり、力の入れ方が難しくなる。呼吸を整えながら緩やかに動こうと思ったその瞬間。
「ん、ぅ……――――あ、あァッッ♡♡」
加減を間違えた僕は、いきなり奥まで挿入してしまった。
途端にテメノスさんは仰け反り、ぴゅるるっ♡とトコロテンして腹の上に白濁を散らしている。
「ごめんなさい、だ、大丈夫ですか……!?」
「ふぁ、わかんな、ぃ……うう、おく、すごい……んっ♡くりっくくんの好きにして、いいからぁ……♡」
少し動くだけテメノスさんは甘イキを繰り返している。好きにしていいと言われたのでその言葉通りにピストンすると、自身の先端からとろとろと欲を溢れさせていた。
欲望のまま腰を打ち付けると肉壁で締め付けられ、搾り取られそうになる。
「ッく、テメノスさんのナカ、すごい……とろとろで、ふわふわで、気持ちいいです」
「ん、いっぱい気持ちよくなって、いっぱい気持ちよくして……♡」
どちゅっ♡どちゅんっ♡と挿入を繰り返す。その度に怒張を味わうかのように締め付けられ、媚肉を擦るのを止められない。ぐぽぐぽと卑猥な音を立てながら奥を突いてキスを落とすと、背中に腕が回ってきた。
「はァ、クリックくん、好き……♡」
啄むようにたくさんのキスで首筋を愛撫され、僕はテメノスさんの腰を抱えなおした。
「くりっくくん……?」
不思議そうに見上げてくるテメノスさんへ、なるべく優しく微笑みかけた。
「ごめんなさいテメノスさん、でもあなたは……僕だけのものですから」
「くりっく、く……う、あッあアあ゛♡」
上から深く腰を落とし、ごりゅ♡とのしかかる様に最奥を突く。テメノスさんは中イキしながら掠れた声を上げて、僕の背に爪を立てた。
「おく、すごぃ、あっあン♡もっと奥ぐりぐりってして、ひぅ、あッやぁ♡」
「いいですよ……テメノスさん、ずっとイってて可愛いです。もっと僕で気持ちよくなってください……」
幾度も絶頂を繰り返し、いつの間にかテメノスさんはメスイキしていた。とろとろになった芯からは既に何も出ておらず、びくびくと震えながら彼のナカを犯している僕を締め付けてくる。
「あっ♡またイっちゃう、や、ァあ♡クリックくんのでイく、イっちゃ、ぅ……♡あっンん、ああッ♡」
突いて、擦って、また突いてを繰り返し、テメノスさんの目で僕をぼんやりと捉えているだけだ。
「ぼくもイきそう、です……テメノスさん好きです、これからずっと、僕だけのものでいてください」
思いの丈をぶつけると、テメノスさんは僕にしがみついて脚を腰に絡ませてきた。
「わたしも好き、すきっ♡クリックくんが好き、ぃ♡ずっと君だけのものでいます、だから、ぁっ♡おねがい、ナカにくださ、ぃ……ッッ~~~♡♡」
ぎゅう、と締め付けられ、僕はテメノスさんの中で果てた。愛しい人のナカへ容赦なく種を叩きつけ、射精後の脱力感に酔ってしまう。
僕の欲を受け止めながらびくびくと仰け反り一緒に絶頂を迎えたテメノスさんは、そのまま意識を手放してしまった。彼が目を覚ます前にすべて綺麗に元通りへしようと心に誓い、くったりとしている無防備な顔に口付けた。