がちゃがちゃ

あなたと共にある

 少しぐらい乱暴に扱ってくれても構わないのに、クリックは必要以上に丁寧にテメノスをベッドに押し倒した。こんな神聖な場所で、と思わないでもない。だが、それよりもはやく彼に触れたくてたまらない。
 恐らくクリックも同じ考えなのか、多少の躊躇いが見える。顔が赤くて可愛いだなんて言ったら、拗ねてしまうのだろうか。でもそんな顔も見たいな、なんて考えていると彼にはお見通しなのか口を尖らせていた。
「なにか、よくないことを考えてますよね?」
「バレちゃいましたか」
「はい。だから、我慢なんてしなくていいですからね」
 そう言いながら服の中に手を滑らせてきた。するり、と指の腹で肌を撫でられる感覚に全身が強張っていく。ここまできたというのに、余計な考えが巡っていった。

「クリック君」
「はい」
「私は、男で」
「そうですね」
「君より8も年上で」
「知ってますよ」
「触り心地なんてよくなくて」
「でもすべすべしてますよ」
「だから、あの」
 本当に、私なんかで良いんですか。そう聞きたいのに、いざ拒否されたらきっと立ち直れない。
 言葉に詰まっていると頬にキスを落とされた。
「夢なら覚めないでほしい」
 思ったことがそのまま声に出てしまった。それを聞いたクリックは少し考えた後、手をテメノスの太ももへと滑らせてするりと内側を撫でた。
「ん、ぁ」
 突然のことに驚いて小さく声をあげてしまう。その反応に満足げにクリックは目を細めると、更にその奥へと手を進めた。
 そして、ぐに……と後孔を拡げるように指で撫でられる。未知の感覚にどうしたらいいのか分からず視線を泳がせていると、クリックが顔を近づけてきて耳元で囁いた。
「夢だと思いますか?」
「……、……いいえ」
 手を伸ばして、上にのしかかっている広い背中をぎゅうと抱き寄せる。直接見ているわけではないが、背中には無数の傷跡があるようだ。それを指でたどっていると「僕のこと知ろうとしてくれて嬉しいです」と首筋を噛まれた。
「今だから言えますけど、あなたを守るためについた傷へ触れるたびにどうにかなりそうだったんです」
 後孔を撫でるだけだった指が入ってきた。ゆっくりと指を押し進めながらナカを探るように触れられて、無意識のうちに背中を抱く腕に力が入っていた。
「すみません、ちょっとだけ我慢してくださいね」
「ん、乱暴にしていいですから……君の好きに、してほしいです」
 強請るように腰を揺らすと、クリックの表情が険しくなった。
「……それ、ずるいですよ」
「あ、ぁッ!」
 ナカを犯そうとする指を増やされて、背中が仰け反る。しかし甘い声で「逃げないでください」と耳元で囁かれ、逃げ場を失ってしまった。
「待って、クリックく、ん……ひ、ぅ」
「さっき僕の好きにしていいって、言ってくれたじゃないですか」
 そうだけれども。それでも頭が追い付かず、テメノスは首を振る。
 しかしクリックはもう片方の手でテメノスのシャツを捲ると、胸元に手を這わせてきた。そのままぷくりと尖った突起を指の腹で撫でてきて、テメノスがその感覚に身じろぐと今度はコリコリを指先で執拗に引っ掻いてきた。
「それぇ、や、だぁ、あッん、ン!」
「でも、テメノスさん気持ちよさそうですよ」
 こんな男の薄い胸に魅力なんて無いだろうに、それでもクリックはテメノスの反応を見ながら弄る手を止めない。
 いつの間にかナカを探っていた指は抜かれていて、その手には彼の屹立が握られていた。先走りで先端がぬらりと濡れているのが見えて、瞬きを繰り返してしまう。何も言わぬまま先端が後孔に押し当てられ、キスをするようにくちゅ……と音が聞こえた。
 ぐ、と先端が挿入ってくる。やっと、彼と繋がることができる。しかし圧迫されるような感覚で急に怖くなって、クリックの背に爪を立ててしまった。
「テメノスさん、好きです」
 好き。そのたった二文字だけで、頭がおかしくなってしまいそうだった。
 何度も好きだと囁かれながら屹立が肉壁を擦る。浅いところをカリが引っ掻いて、善がるように腰が揺れた。
「あ、んっンん、あ、ァ……」
「僕しか聞いてませんから、声、我慢しないでください」
「でも、はずかし、いから、あッあう、ひぁ、あ」
「恥なんて、とっくに捨てたんじゃなかったんですか……?」
 どちゅんっと一気に奥まで押し込まれる。今まで陶器を扱うように丁寧だったのに急に激しくピストンされ、揺さぶられながらだらしなく嬌声を響かせてしまう。
「あッあン、ンッ……奥まできて、るッ……くりっくくん、もっとおく、まで、ぇ……ッ」
 全部ほしい。消えそうな声しか出せないが、きっと彼にも届いたはずだ。
 クリックは余裕がなさそうに眉を寄せると、深く覆いかぶさってきた。今まで届かなかった場所まで暴かれて、テメノスの隘路は彼の形になってしまっている。
 彼の声も、体も、指も、髪も、心さえも、すべて自分のものだと感じる。
「もう、置いていかないで……」
 君が望むのならば喜んでこの身を捧げるのに。どうして、それは叶わないのだろう。
 この体温を失いたくない。私を守った傷だけでは嫌だ。わざと背中を引っ掻けば、クリックはふわりと笑った。
「大丈夫、ずっと、死ぬまで一緒ですから」
 ぐ、と強く腰を打ち付けられてナカで彼の欲が弾ける感覚があった。同時に自分が達したのも分かって、彼がしてくれたように上下している喉に噛みついた。
「ん、……その約束、忘れたら地獄行きですからね」
「それは怖いな。でも、天国でも地獄でも、あなたと一緒の場所がいい」
 すり、と頬を寄せられる。甘えてこられるのが嬉しくて、柔らかな頬にキスを落とした。
「テメノスさん、僕はいつもあなたと共にあると約束します。だから、その日が来るまで……あなたが信じるものを貫いてください。僕のために、涙を流さないでください」
 お願いですから。その声が聞こえたとき、きっと最後の涙が頬を伝った。
「この先、誰とどこにいて何をしていても……きっと、君が隣にいてくれるような気がします」