がちゃがちゃ

夜もすがら

 テメノスさんを抱きしめたままだった手を彼の胸元へ添わせる。人間の彼もここを触られるのが好きだった、などと考えながら服越しに撫でた。
 すると指先が少し触れただけで、華奢な肩がぴくりと震えた。そのいじらしい反応に、つい意地悪をしたくなってしまう。
「ッ、んぅ……♡」
 気持ちがいいのか、真っ白な耳もぴくぴくと小さく震えて反応を見せていた。
 そのまま片方は擦る様に、もう片方を抓る様に触れる。それだけで反応があり、ぷにぷにと柔らかかった乳頭はいつの間にか服を着たままでも分かる程に甘く尖っていた。
 胸への愛撫を続けながらテメノスさんの様子を窺う。きゅっと服の裾を掴んで、浅く吐息を漏らしていた。
「あっん……ぁ♡そこ、クリックくんに触られるの好き、ぃ♡」
 テメノスさんはいつも、ここを触られるのが好きなのに口では嫌だと訴えてくる。反応を見れば彼がどう感じているのかは明白なので、今までは形ばかりの抵抗をされながらも好きに触ってきた。
 なのでこうも素直に「触って」と伝えられるとどうにも調子が狂いそうになる。言葉通りに彼は僕が突起を擦るたびに喘ぎ、身を捩っているので嘘ではないのだろう。

 ふとテメノスさんがこちらを見上げてきた。
 強請る様な視線を受け、無言のまま彼の肩にかかっている細い肩紐を下ろす。すると緩くなった胸元が露わになり、ぷくりと膨らんだ乳頭が視界に入った。彼がそこをどうしてほしいのかが伝わってきたので、そのまま口に含んで舌でつつく。
「あ、あぅ……ッ♡」
 ぴくんっと腰が揺れている。強く吸うと更に反応がよくなって、小さな口から溢れる嬌声も大きくなっていった。
 蕩けた両目で僕を見つめながら、それでも欲を抑えられず、テメノスさんは僕に身を預け切っている。いじらしい姿に少しだけ自分の中にある黒い部分が顔を出してしまい、普段ならば言わないであろうことを思ったままを口にしてみることにした。
「テメノスさん、胸だけでイけそうですね」
 舌で弄りながらもう片方を指で抓ると、僕に胸を押し付けるようにテメノスさんは身を捩った。
「そんな……あっあん♡だって、んぁ、吸われたら、ああッあ、ひぅ♡んンっ……気持ち良すぎて、ヘンになっちゃ、う♡」
 手を胸元から真っ白なふわふわの耳へと移し、毛並みを整えるように撫でる。
 途端に彼の声は上擦って、何かを訴えるように力なく首を振っていた。
「いっぱいヘンになっちゃっていいですよ、可愛いですから」
「で、でも……本当にもう、出ちゃ……あッああ、やだ、ダメだってばぁ♡」
 耳を撫でる手に力を入れると、ぴくぴくと可愛らしく揺れていた耳がぴんっとまっすぐに伸びた。
 無意識に逃げようとする彼の腰を抱き寄せる。喘ぎながらも口元に手をやって、必死に抑えようとしていた。
 更に手を下ろし、耳と同じようにふわふわとしている白くて丸い尻尾にも触れてみる。そこも同様に敏感なようで、少し撫でるだけで表情を蕩けさせていた。
「だめっだめ、も、本当に出ちゃぅ、あッあん♡クリックくん、くりっくくん……ッ♡」
「いいですよ。いっぱい気持ちよくなって、イってる可愛いところ、僕に見せてください」
 ちゅう、と強く乳頭を食んでは吸う。時折わざと歯を立てて刺激を強くすると、限界が近いテメノスさんは僕に縋る様に抱き着いた。
「クリックくん……も、イっちゃ、う♡ん、ぁあっ♡あア、あ……――~~~ッッ♡♡」
 呼吸を荒くさせたテメノスさんはびくびくと震え、きつく瞼を閉じて僕にしがみついたまま達してしまった。
 上気した肩にキスを落としながら落ち着かせる。
 そして今度は互いに向き合ってから啄むように唇を寄せると、まだ呼吸の整わない愛らしい口から僕の名前が呼ばれた。
「ねぇ、クリックくん」
 返事の代わりに首筋を吸う。恥ずかしがりながらも抵抗はされなかった。
「今度は、こっち。……きみの、おっきいのが……欲しいです」
 熱と欲が集まった箇所を服越しに撫でられた僕は、喉を鳴らすほかなかった。
 
 * * *

 真っ白なシーツの上に、真っ白なうさぎが無防備な姿で寝転んでいる。もう互いの触れあいを阻むものは必要無いと、いつの間にか二人して着ていたものをすべて脱ぎ捨てていた。
 まだ少し戸惑っているような、だけれども強請る様な様子を見せるテメノスさんを組み敷く。すると彼はふわりと微笑んで、僕の頬に手を添えた。
「いっぱい気持ちよくしてもらったから、今度は君に気持ちよくなってほしいです」
 言いながら、彼が両脚を開く。その奥にある窄みに自らの細い指を這わせ、僕へ見せつけるように拡げた。
 夢の中だから、だろうか。どうしてか濡れているそこは、テメノスさんが少し指で弄るだけでくちゅくちゅと卑猥な音をたてている。
「ねえ、はやく……。もう待ちきれないです」
 ヒクヒクと疼いている箇所を物欲しそうにくぱ……と拡げ、僕をそこへ導こうとしている。
 こんな姿を見せられたら我慢できる自信があるわけもなく。しかしこんな夢を見ている自分もどうかしているのではないかという後ろめたさもあり、どうにも次の行動に移せない。
 そのままたじろいでいると、じれったくなったのかテメノスさんは綺麗な足の裏で僕の中心を撫で始めた。
「てっテメノスさん、何して……!?」
「ほら、いつまでそうしてるんですか。苦しそうにしてるくせに、迷うことなんてないでしょう?」
 穢れなど知らなさそうな白い足の裏が、僕の熱を吐き出させようと扱いている。丁度いい柔らかさで擦られたかと思えば、今度は器用にも足の指で挟んだり亀頭を撫でられたりと好き勝手に扱われてしまう。
「わ、分かりましたから……ッも、それやめてください」
 彼の悪だくみを止めたくて慌てて抵抗したが、テメノスさんは悪戯が成功した子どもの様に目を細めるだけで足で僕を扱き続けた。
「へえ、君ってこういうのが好きなんですね。新発見だ」
「揶揄わないでください……」
 無防備だった耳を撫でると一瞬だけ隙が生まれたので、今だとばかり彼の脚を掴んでこちらへ引き寄せた。
 そのまま好きに扱かれたせいで更に質量を増したソレを強請る様に疼いたままの窄みへとあてがう。途端に吸い付いて、一気に引き込まれそうになった。
「……決心はつきました?」
 試す様な視線に射抜かれ、頷く。
「夢であろうとテメノスさんはテメノスさんですし、勝手に抱いたことは起きたら謝ることにします」
「そう。……ふふ、君の困った顔、見ごたえがあるんでしょうね」
 勝手なことを言ってくれる。
 しかし原因は僕が抱える欲望で、彼は何一つ悪くない。普段から綺麗だとか可愛いだとかは思っていたが、年上の男性に向かってうさぎの様だなんて。
 だけれど、思わず触れたくなるような愛らしさも抱きしめたくなる儚さも嘘ではない。それがたまたまうさぎのようだと表現されただけで、揶揄ったつもりはない。
 可愛いと思っていた人が、なにやら可愛らしい小動物のようだと思えただけ。たったそれだけだ。
 と、なんとか頭の中で言い訳を並べる。我ながら器用なことをしていると感心してしまう。
「それに現実のあなたは、きっと許してくれます。なんだかんだで僕に気持ちよくされるの、好きだって知ってますから」
「慢心……」
 何かぼそりと呟かれたが、気にせず亀頭を咥えようとしている箇所へ押し込む。
 すんなりと受け入れられて、浅い箇所を先端で擦りながら彼が好きな場所を探す。そこばかりを狙って腰を揺らすと、テメノスさんは切なげに表情を歪ませた。
「ぁっんン♡そこ、ばっかり……あんっあ、あア♡」
「あなたの好きなところ、全部知ってますから」
 快楽を隠しきれず、普段は端整な顔立ちが乱れはじめる。何度も見てきたはずなのに、いつも見惚れてしまうのは僕が彼に墜ちてしまっている証拠だ。
 ゆるゆるとした抽挿が勢いを増していき、抑えが効かなくなる。治まらない熱をぶつけるように腰を深く打ち付けると、互いに少しずつ理性が削られていくのが分かった。
「ん、ぁ……クリックくんの、入ってる……♡」
 名前を呼ばれて熱が融け合って、このまま一つになれるのではないかという気さえしてきた。
 それに応えるように、奥を抉る様にピストンを繰り返す。苦しいだろうに、こういうときでさえテメノスさんは逃げずに僕を見つめている。
「そこ、好き……もっときて、君のでこすって、おねが、ぃ♡」
 腰に彼の脚が絡み、ぐっと引き寄せられる。
 なるべく乱暴にはしないよう気を付けながらも、しかし抑えが効かず夢中で貪るように突いてしまう。
 それでもテメノスさんは熱の籠もった声で僕の名前を呼び、愛らしく啼いて、時折喉を仰け反らせた。
「ぅ、あッああ、ん♡またイっちゃ、ぅ……ひぁ、ああッん♡」
「ッテメノスさん……、いっしょに、イきたいです」
 ぐ、と最奥へ押し込むように突く。甘く痙攣して、僕の熱を受け入れるように閉ざされていた狭い奥へと迎えられた。
 身体を強張らせながらも受け入れてくれたテメノスさんは、奥深くで繋がったことを悦ぶかのように瞼を伏せる。
「そこ、入っちゃダメなのにぃ……あんっあア♡イっちゃう、んぁ、クリックくん、あアァっあ……ん……――~~ッ♡」
 彼が達したと同時に僕もナカで果て、じわりと熱が広がっていく。
 僕は心も体も満たされていく感覚を噛み締めながら、汗が浮かぶテメノスさんの額へキスを落とした。