ディミクロ

suger rush

大概の人間は第一印象を顔で決める。その顔が完璧に近ければ近いほど、中身が良ければ尚のこよ、近寄って来る人間が多いだろう。だから今目の前で広がっている光景が別段おかしなこととも思わないし、これがある意味では人間のあるべき姿だとも思う。ただ、当…

ラストダンス

その言葉は、まるである種の脅しのようだった。いつもはなかなか合わない視線が今は恐ろしいほど真っ直ぐとこちらに向けられていて、まるで頭の中のその奥まで見透かされているとさえ思える。恐怖とはまた違う感覚が全身を襲う。これが初めてではないのに、口…

You’ve changed

まるで罠にかかった野うさぎの様だ。ベッドの上から動けない体と目の前の陰にため息が出る。エアコンの効いた室内は真夏といえど快適な温度を保っているはずで、それなのに首筋を何度も汗が伝う。外からうっすらと聞こえてくるセミの鳴き声も、時折通知音を響…

all falls down

最後に視界で捉えたものは、こちらに向かって振りかざされる剣の切っ先だったように思う。丁度逆光であった為、剣を握る相手の顔が見えなかったことが悔やまれる。相手が分からないのでは、後を追って復讐することも、化けて出てやることも出来ない。倒れる間…

intro

雨の大修道院はひどく静かだ。雨音につられるように生徒たちの足音がよく響く。講義を終えた教室には、自分以外誰もいない。いつもの騒がしさも無ければ面白みもない。しめった紙のにおいが、やたらと鼻につく。何か理由があってここに残っているわけではない…

Sparkling

例えば赤。食欲を誘う刺激の色。フライパンの上で油とともに踊る肉を嫌うやつなんて、そうそういない。例えば、黄色。一見薄味のようだが噛み締めるとじわりと舌の上で旨みが広がる卵。フライパンの上で薄く伸ばし、くるくるとかき混ぜると途端にふわふわにな…

into you

「好きだ」金髪碧眼、すっと通った鼻筋、長い手足、引き締まった身体、形の良い唇。嘘のような、もとい絵に描いたような男前だ。そんな童話の中に出てくるような王子様に正面からまっすぐに好きだと言われ、頬を染めない女はいないだろう。だが俺は男で、この…

sanctuary

確か、あれは10年前の夏だったと記憶している。あの時住んでいた家は庭が広く、まだ幼い頃の自分は窓から眺める庭の景色が大好きだった。グランドピアノの置かれた広い一室にある窓を開けると心地よい風と太陽の光が降り注いでくるので、その部屋が俺のお気…