理解して支配して繰り返して
僕は疲れていた。
とんでもなく疲れていた。
原因は恐らく自業自得というか、要領の悪さが起因している。
ずっと憧れていたテメノスさんとの関係が深まり恋人という立場となって舞い上がっていたのも束の間、悲しいことに互いに住んでいる場所が異なるため顔を合わせる機会は少ない。
時折フレイムチャーチやストームヘイルで会ったとしても一緒に過ごす時間は限られている。
だから僕は、テメノスさんに少しでも“一緒にいて楽しい”と思ってもらえるよう努力し続けていた。
二人の関係についてだけではない。仕事にも一層励んでいた。
普段からオルトや他の騎士から「お前は肩に力を入れ過ぎだ」だの「張り切り過ぎだ」だのなんだのと言われているが、テメノスさんが認めてくれた聖堂騎士としての自分をもっと磨くことで、より彼の隣に並ぶにふさわしい男になれるのではないかと思っているのだ。
聖堂騎士として、テメノスさんの恋人として恥じぬ男でありたいという想いから、気が付けばそういった生活になっていた。
それはまあ、いい。
疲れが取れないといっても疲労で立ち上がれないほどでは無いし、体調を崩しているというわけでもない。
一晩ぐっすり眠ればある程度は回復するし、疲れているところを誰かに、特にテメノスさんに見られたくはない。
だからいつもと変わらないようにと振舞っていたのに。
「クリック君、なんだか疲れていませんか?」
図星である。僕の恋人はすごい。事件だけではなく人間の些細な部分にもすぐに気が付いてしまうのだから。
今日はテメノスさんがストームヘイルへ訪れてくれているので、一緒に宿に泊まっている。二人で一つの少し狭いベッドでくっつきながら眠るのも慣れたものだ。
横になったまま訊いてくるテメノスさんの言葉になんと返すべきか考えていると、彼の方から距離を詰めるように密着してきた。
「私に嘘は通用しませんから。さあ、白状なさい」
「白状って……」
なんだかまるで審問されているような気分だ。
じっとこちらを見つめてくるテメノスさんの目に僕が映っている。
確かに疲れている。だけどそれで何かに支障があるわけではないし、何より彼に心配をかけたくはない。
だから僕はあたたかく寄り添ってくれている身体をぎゅっと抱き寄せた。
「確かにちょっと疲れていますけど、大丈夫ですよ」
なるべく自然な笑顔を浮かべたつもりだった。
だというのにテメノスさんはどこか納得いかないといった表情をしており、眉を寄せながら「そうですか」と呟いた。
そして、いつの間にか朝になっていた。どうやら僕は眠ってしまっていたようだ。
普段ならばもう少しテメノスさんと語らって、互いに求めていれば身体を重ねていたところであるが昨夜は何も無かった。
思っていたよりも疲れていたのかもしれない。テメノスさんには申し訳ないことをしてしまったと、まだ半分眠っている頭で猛省していた。
——が、すぐに覚醒してしまった。
というのも、身体に違和感が……具体的には下半身に、なにかが触れている、気がする。
布団をめくり、徐々に冴えていく頭と視界で“そこ”の確認をとる。
すると、そこには。
「あ、おはようございます」
「おはようございます……って、何やってるんですか!?」
視線の先には、愛しい恋人がいた。
テメノスさんはふわりと微笑み、ごそごそと布団の中で身じろぎながら僕の脚の間に収まっている。
状況が理解できず固まってしまう。あろうことかテメノスさんは、僕の下半身を……更に朝だからなのか疲れているからなのか、主張してしまっている“それ”を、服の上から綺麗な手で撫で始めた。
「昨夜は何も無かったからよほど疲れているのだと思ったんですけど。ふふ、やっぱり君も男の子ですものねぇ?」
「えっと、いや……その……」
吐息がかかりながら、つん、と指先で弾かれる。正直それだけでクるものがあり、歯を食いしばった。
そして僕が抵抗しないのを良いことについに下着と一緒に下穿きまで脱がされてしまい、先ほどまで刺激されていたものが勢いよく顔を出す。
ぺち、とテメノスさんの頬に触れてしまっているのが見えて慌てて不可抗力だと伝えようとしたというのに、彼はそれに向かって愛おしそうに頬ずりをして口づけていた。
「いつも君が気持ちよくしてくれるから、今日は私が君を気持ちよくしますね」
「それって、どういう……?」
ちゅ、と先端に口づけられたかと思うと根元から幹まで細く白い指が這い、上下に扱き始めている。
舌先による鈴口への奉仕も続けられ、僕は息を荒げることしかできなかった。
「ん、んぅ……♡」
先端だけ舐めていた小さな口がより奥まで咥え込み始め、テメノスさんの艶っぽい声が溢れ始める。
頬を染めながら悩ましげに眉を寄せ、それでも懸命に奉仕を続けている姿に目を奪われてしまう。
気持ちいい。気持ち良過ぎるぐらいだ。
だけどこのまま続けていたら……とその先を想像して、僕はやっとの思いで彼へと手を伸ばした。
「テメノスさん、もう……離してください」
さらさらと流れる彼の髪を撫でながら、僕から離れるよう促す。
しかし彼は一瞬こちらを見るだけで、口淫を止める様子は無かった。
「まだダメ。最後まで、しますから」
「最後って……ッ!?」
じゅる、と強く吸われる。
思わず息を呑み、彼を見るとうっとりと目を細めていて、僕の反応を窺っていた。
そして扱く手の速度が上がり、くちゅくちゅと音を立て始めている。
僕の息が乱れているからなのか、テメノスさんは更に強く吸い、ねっとりと舌で舐めあげてきた。
「ほら、いっぱい出していいですよ……♡」
「くッ……!」
途端、彼の口内へ熱を吐き出してしまった。
僕は慌てて目の前の状況に狼狽えるばかりだったが、テメノスさんはなんと僕が出したものを何も躊躇うことなく飲み下し、口に入りきらなかった分まで丁寧に舐めとっていた。
その様子に硬度を失ったはずのソレが再び勃ち上がっていく。
「ふふ、元気いっぱいでよろしい」
「うう……」
先端を「よしよし♡」と撫でられ、それだけで反応してしまう。
こんな自分が情けないとは思うが、好きな人にこんなことをされて何もない方がおかしい。
テメノスさんは口元を綺麗にしたのち、自分を覆っていた布団をばさりと剥ぎ取った。
薄暗い布団の中にいたため分からなかったが、彼も下に何も穿いていない。上に乱れてボタンが外れた寝間着を羽織っているだけだ。白い胸元がちらちらと見えて非常に目に毒だ。
そして僕に跨る様に膝立ちになると、どこまで用意周到なのか、普段僕たちが潤滑油に使っている香油を取り出した。初めからこのつもりだったのか。
「私がするから。いいですね?」
「え、え……?」
テメノスさんは器用にも、膝立ちのまま香油をまとった片手で再び僕の亀頭をぬるぬると扱き始めた。
同時にもう片方の手は彼の後ろへと向かい、見えはしないが何を行おうとしているのか分かってしまった。
「ん……♡もう少し、だけ……ぁ、ん♡待って、くださいね……♡」
くちゅ、と想像を掻き立てる音が聞こえてくる。
時折「あ♡」と小さく喘ぎながら、テメノスさんは前では僕を受け入れる準備をしてくれていた。
「……、テメノスさん。触っても?」
訊くと、テメノスさんは頬を赤く染めながら小さく頷いた。
「君の触りたいところ、どこでも触っていいですよ……♡」
許しを得たので、彼の白い太腿に触れる。内側を撫でる様に触れただけでぴくんっと可愛らしい反応があり、息を呑んだ。
そして横になっていたままだった上半身を起こし、彼の頬に触れる。すると彼がひだまりのように微笑んだので、それを合図に互いの唇を重ねた。
「あ、クリックくん……キス、きもちぃです♡」
柔らかな唇を食みながら互いの舌先で触れて、絡める。
キスをしたままテメノスさんは僕の亀頭を扱きながら自身の孔の準備も続けている。
苦し気に、だけれど恍惚とした表情で喘ぎながら深く口づけていた。
「ふぁ、あ♡あ、んン……っ♡」
「もっと触りますね?」
「あ、やっあァ♡」
ぷに、と淡く色づいた乳頭に触れる。
そこは指で何度かつつくだけですぐに硬くなり、カリカリと引っ掻くとテメノスさんは更に瞳を蕩けさせていった。
甘くぷっくりと尖った乳頭を食み、今度は舌でつつく。
「や、舐めちゃだめ、あっん♡やら、あんっあア♡」
「どこでも触って良いって言ってくれたじゃないですか」
「でも、でもぉ……あ、吸っちゃだめぇ♡ん、気持ち良すぎてヘンになっちゃ、う……あ、んぁ、あ……——ッ!♡♡」
強く吸い、もう片方もきゅむっと摘まむ。すると、ぴゅるぴゅると彼の先端から熱が溢れたのが分かった。
テメノスさんは息を乱しており、既に僕や孔には触れておらずシーツに手をついている。
「ここでイってるテメノスさん、可愛くて好きです」
赤いままの頬にキスを落とすが、テメノスさんは唇を尖らせていた。
「……へんたい」
「あなたが僕をそうさせてるんですよ」
もう一度触れるだけのキスをして、彼の腰を抱える。
テメノスさんが状況を理解できていない表情をしているので、僕は思い出させてあげることにした。
「僕のこと気持ちよくさせてくれるんですよね。せっかく準備してくれたわけですし、続きしてください」
「ん……」
テメノスさんは僕の言葉にどことなく不服そうな顔をしながら、天を向いたままの亀頭に窄みをあてがうように腰を揺らしている。
ちゅう、とキスをするように吸い付いていく。しっかり準備してくれたおかげですぐに挿入ってしまいそうだ。
「それじゃあ、大人しくしててくださいね……?」
少しだけ険しい表情をしたテメノスさんが、ゆっくりと腰を落としていく。
先端はすぐにぐぷりと咥え込まれ、柔らかな隘路に包まれていった。
「んっ、んぅ……♡」
テメノスさんが腰を振り、ぱちゅっぱちゅんと肌が触れあう音が響く。
締められながら擦れる感覚が良過ぎて僕も頭がおかしくなってしまいそうだった。
「あ、ん♡クリックくん、くりっく、くん……ッ♡」
普段は表情一つ崩さないテメノスさんは、僕とこうしている時だけまるで夢を見ているかのように熱に浮かされたような顔をする。
名前を呼んでくれる時は特にそうで、僕がここにいるのを確認するかのように何度も僕の名前を口にするのだ。
「テメノスさん、気持ちいいですか?」
「はい……君とこうしてるの、好きです……♡」
テメノスさんの両手を取り、指を絡める。握ったまま腰を揺らしている彼に見惚れたまま「僕もです」と返事をした。
「今でもあなたとこうしているのが夢みたいです……もっと、あなたと釣り合う男になりたいのに、難しくて」
「そんなの……、私が好きなのは今のクリックくんで……ぁっん♡君だから、こんなことしたくなるぐらい好きになったんです」
今の僕が、好き。
想いを告げた時も同じことを言われた。今の真っ直ぐな君が好き、だから伝えてくれて嬉しい、と。
改めてそう言われると照れと幸福が入り混じって不思議な感覚になっていく。
「……僕はきっと、今世界で一番幸せなんだと思います」
「ん……♡あ、待って、ひぁっ♡君の、おっきくなって……あ、あんっ♡」
我慢が出来ず、少し下から突いてしまった。そのせいか思ったよりも奥を抉っており、深く貫いてしまった。
手を握る力が互いに強まって、このまま溶けてひとつになってしまうのではないかと思ってしまう。
「くりっくくん、好き、だいすき♡だから、私のことも、いっぱい好きにして……♡」
「僕もずっと好きですから、もっといろんなテメノスさんを見せてくださいね」
「うれしい……ん、あ♡奥、君のでいっぱいできもちぃ……♡もぅ、イっちゃ……あ、ああ……——ッ♡」
とちゅんっと下から突きあげるとテメノスさんは再び達して、僕も彼の中へ容赦なく注いでしまっていた。