がちゃがちゃ

寝ても覚めても

 テメノスさんの着ているものを丁寧に、ゆっくりと脱がせていく。
 初めてではないのにボタンひとつ外すのにも緊張してしまい、楽しそうに笑う声が聞こえてきた。
「なんだか初めての日を思い出しますね。あのときも君は固まってしまって……」
 まるで昔話を語る様な口調に顔が赤くなっていく。恥ずかしくて仕方がない。
「あのときは……自分が情けなくてしかたがないです」
「ふふ、そんなことないですよ。私相手に緊張してる姿はとっても可愛かったんですから」
 指がすべってしまい、そんな僕の手をテメノスさんが優しく包む。
 そして自ら服を脱いでいく様はさながら蝶の羽化の様で、思わず見惚れてしまう。
「私はいつまでも真剣に向き合ってくれる、君のそんなところが好きだから。急に慣れてもらっても困るんです。揶揄い甲斐が無くなるじゃないですか」
 すべて脱ぎ終えたテメノスさんが顔を寄せて来たので、導かれるがままキスをする。
「結局それなんですね……」
「は、ァ……もう生き甲斐の様なものですよ」
 舌を絡ませながら他愛ない言葉を交わす、この時間が好きだった。
 彼から与えてもらった愛を同じように、いや、もっと多く返したい。
 そんな想いのまま肩を抱き寄せる。背に腕が回ってきたのを感じて、そのまま静かにシーツに沈めた。
 するりと腰のラインを撫でればテメノスさんは小さく身じろぎ、ゆるゆると脚を開いた。その奥を清廉な指が僕を導く様に拡げる。
「久しぶりですから。……クリック君で、いっぱいにしてください……♡」

 * * *

 久しぶりだというのに、驚くほど素直に僕の熱はテメノスさんの中へ呑み込まれていった。
 全身が互いを覚えているとでも言うかのように咥えた箇所は離すまいと吸い付き、きつく締め付けられる。
「クリックくんの、いっぱい入ってる……嬉しい……♡」
 きゅう、と隘路で扱かれる感覚に愛おしさが募る。彼もずっと、僕を求めてくれていたのだ。
 テメノスさんに無理をさせ過ぎないよう穏やかに抽挿していると、緩慢な動きにもどかしげな吐息が漏れているのが分かった。
 見れば、彼は焦れたように眉を寄せていた。
「やだ……もっと、強くして」
 足りないと訴えられ、理性が崩れていく音が聞こえてくる。
 おねだりを断ることが出来るわけもなく、僕は彼の太ももへ手を添えた。
「反則ですって、それは」
 ぐ、と腰を引き寄せると奥へ辺り、途端にテメノスさんは可愛らしく喘いだ。
「あッあァ♡」
「あなたが僕を欲しがってくれるように、僕もあなたが欲しいです……ぜんぶ受け取ってくださいね」
 抉る様に突き、悦びに汗ばむ身体を何度も貫く。
 彼の腰を抱えなおすと上気した艶っぽい肌が手に吸い付いた。それすらもこちらを煽る材料となる。
「んぁ、あッんン♡奥、いっぱいきてるぅ……もっと欲しいから、おねがぃ、クリックくんッ♡」
 言われた通り深く腰を打ち付けると、テメノスさんはびくびくと身体を震わせた。
 嬌声を溢れさせながらもシーツを掴み、僕から更に種を絞ろうとしている。
 片手をそんな彼の胸元へ這わせる。身体を重ねる前から彼のここは弱く、少し触れるだけで全身から力が抜けてしまうようだ。
「そこ、やだ、あッああ♡待って、ぇ、今イってるから、あっあん♡」
「僕はいっぱい気持ちよくしてもらいましたから、同じようにテメノスさんにも気持ちよくなってもらいたいんです」
「でも、またイっちゃうから、ひぅ♡あっやだ、やらぁ♡」
 その言葉通り、乳頭を少し引っ掻くだけでテメノスさんは再び達してしまった。甘い痺れを残しながら、ぴゅるぴゅると熱を吐き出している。
 互いに息を乱したまま抽挿を続けると、律動に身を任せながらテメノスさんがこちらへ腕を伸ばしてきた。
「ん……クリックくん……」
 名前を呼ばれ、彼の髪を撫でる。
 すると隘路が更に狭くなり、僕にも再び限界が近づいてきた。
「君に触られるだけで、こうなってしまうから……一緒にいるときは、いつだって触れていてほしいです」
 今夜、彼に触れないまま眠ろうとしていたことを言っているのだろう。
 結果こうして抱いてはいるが、少しでも恋人に寂しい思いをさせてしまったことは間違いない。
 自分の愚かさを悔いながら、テメノスさんの頬へキスを落とす。
「すみません、僕だって同じですよ。もうあなたを悲しませんから」
 テメノスさんは小さく頷き、そして幸せそうに微笑んだ。
 口付けながら、今まで抑えていた欲を溢れさせるように愛しい人の身体を抱く。
 求められるがまま欲しがっている場所を突けば、よがる声が響いた。
「ん、クリックくん……んぁっあ、好き♡くりっくくんが好き、すき♡いっしょにイって、おねがぃ……ッ♡」
 ずっとこの人に心の奥を揺さぶられている。
 どれだけ触れても抱いても足りず、与える愛が足らない気がしてならない。
「僕も好きですよ、ずっとあなただけを、愛していますから」
 どくん、と熱が弾ける。
 それをすべて受け止めてくれたテメノスさんが乱れた呼吸の中で僕の名前を呼び、彼も果てているのが分かった。
 締め付けが緩み、ゆっくりと性器を抜く。その動作すら快楽に変わるのか、テメノスさんは小さく喘ぎ声を漏らしている。
 抜き終えると今し方注いだばかりのものがどろりと溢れてきた。身を清めるものを持ってくるためにベッドを離れようとした瞬間、テメノスさんに腕を掴まれてしまった。
「テメノスさん……?」
 どうしたのかと振り返ると、熱を含んだ吐息の中で「クリックくん」と何度目かの名を呼ばれた。
 彼は大きく脚を開き、溢れているものをこちらへ見せつけるかのように『そこ』を指で拡げた。
 更に僕の性器へ触れていたその指でナカを解す様に掻き混ぜている。くちゅくちゅと卑猥な音が耳へと届き、僕は息を呑んだ。
「まだ行かないで、もっと……♡ね、クリックくん……♡」
 そして今夜、僕の恋人はとんでもなくおねだりが上手い人だったと知ることになる。