がちゃがちゃ

sugar rush

 陽が落ちて薄暗い部屋の中、ローレはサマルのベッドまで来ていた。サマルから助けてほしいと言われれば断れるわけがなかったし、むしろ嬉しいとさえ感じていた。彼に必要とされている感覚が、どうしてか心地良い。
 ベッドに寝そべっているサマルが身に着けているものを下だけ脱がせる。現れた箇所はしっかりと閉じられた太ももでよく見えなかったが、男とは違うということだけははっきりと分かる。緊張で強張っているのが分かったので、なるべく優しく頭を撫でてやると少し落ち着いたのか、小さく息を吐いていた。
 脚に触れ、ゆっくりと開かせる。はじめて見る女性のそれにローレは眩暈がしそうになったが、これも仲間の為……と深呼吸する。
「痛かったら、すぐ言えよ」
 弱々しく頷いたのが見えて、用意していた調合した世界樹の葉の液体を指先に纏う。スライムオイルと合わさってトロリとした液状になっているそれは冷えてしまっていたので、サマルが驚かないように手の平で温めてから使用することにした。
 少しして人肌まで温まった液体を纏った指で膣口に触れる。ぬるりとした感覚に一瞬サマルの身体が震えたので「大丈夫か」と訊いたら「へーき」と返ってきた。
 今まで大した女性経験があるわけでもないが、一応王族としての教養でそれなりの知識があった。こんな風に女性の(と言って良いのかは分からないが)身体を触るのは初めてではあったが、なんとなくこうすればいいだろう、ぐらいの感覚で手を進めることはできた。もし世界を救って誰かを娶ることになれば、サマル以外の人と同じようなことをするのだろうか……とぼんやり考えて、どうしてかそれは想像がつかず首を振る。今はそれどころではない。
 ゆっくり、ゆっくりと人差し指を入れていく。第一関節ほどまで収まったところでサマルの表情が歪んでいることに気が付いた。可哀想ではあるが、このままにはしてやれない。心の中で謝りながら少しずつ指を押し入れて、第二関節まで入ったところで指を曲げてみた。
「ひ、ぁ……」
 彼の小さな声が漏れているのが聞こえて、ローレは落ち着かせようとサマルの腹を撫でた。ぎゅっとシーツを掴んでこの状況に耐えている姿を見て、自分はとんでもないことをしているのでは、と思ってしまう。実際、とんでもないことは行っているのだが。
 まだ奥まで指を入れるには狭く、解そうと指の腹で肉壁を擦る。するとサマルは身じろぎ、脅えたような目つきでローレを見上げてきた。
「ろ、ろーれぇ……」
「悪い、こわいよな。痛くならないようにするから」
「うん、あの……丁寧にしなくて、いい。ローレのやりやすいようにして、いいから」
 そんなことを言われて、分かったと頷けるほどの度胸は無い。下手なことをして彼を傷つけたくはないし、泣かせたいわけでもない。ただ仲間を救いたいという気持ちでここまでやってきたのだ。
 しかし、何故だろう。ベッドの上で、目の前で脚を広げながら見つめてくる姿に息を呑む。胸の奥が苦しくなって、ローレはサマルの言葉に頷いてしまった。

「あっん、あっあ、あぅ、ああ……」
 少しずつ指が入るようになってきて、肉芽を擦りながら同時に柔らかくなってきた肉壁を執拗に指で押し拡げる。そのたびに抑えきれない彼の声が溢れてきて、ローレは本能に任せて行為を続けた。
 はじめは緊張で固まっていたサマルの身体が汗ばみ始めている。きっと、もう子宮口に指は届くだろう。しかし、そうすると今の状況が終わりを告げてしまう。きっとお互い分かっている。だけど止めることが出来なくて、何も言わないまま時間が過ぎていく。
「……ねえ、ローレ」
 虚ろな目のサマルが見つめてくる。どうしたと聞けば、手を伸ばしてローレの指を抜き取った。
 どうしたのかと戸惑っていると、今朝のようにおずおずと服を捲りはじめた。目に映る豊満な胸に魅入っていると、また同じように手を取られて胸元へと引き寄せられた。指先が甘く尖っている乳頭へと触れてしまう。無意識に指の腹でそこを擦っていると、サマルが腰を揺らし始めた。
「んッ、ぁ……好きにして、いいから……だから」
 視線がローレの顔から下へと降りていく。辿り着いたのは見ないようにしていた箇所で、服の上から出も分かる程にすっかり反応しきっているそこをサマルが足先で撫でてきた。
「そっちが、欲しい」

 気が付けばお互い一糸まとわぬ姿になっており、今まで遠慮がちに触れていたローレはサマルをシーツに縫い付けるように組み敷く体勢となっていた。
 どこか不安そうにしている仲間を安心させたくて、口を塞ぐ。嫌がられるかもしれないと思ったがそんなことはなく、むしろすぐに受け入れられて舌が絡められた。何度も貪る様にキスをしながら手の平に収まりきらない胸を揉み、色づいている突起を摘まむ。それだけでサマルの腰が揺れて、甘い声が溢れていた。
「ん、ぁ……ッ♡」
 気持ちいいのか、もっと、と強請る様にキスが深くなる。指先で乳輪をなぞり先端を引っ掻いてやると、ひと際高い声で鳴いていた。
「あッや、だめ、そこコリコリってしちゃ、あ、ァ♡」
「嫌じゃないだろ」
「ちが、あァ♡ぁッああっあ、あ♡」
 嘘が下手だなと思う。びくびくと跳ねている彼の反応を見ながら、どうしてほしいのかを探っていく。
 乱れる息が交わって、なんの目的でこんなことをしているのか忘れそうになってしまう。だけど、彼が求めていると言うのなら、それは叶えてやりたいと思った。
「もぅ、いいから、ぁ……はやく、こっち……♡」
 大きく脚を開いたサマルが、導く様にそこを指で拡げて見せつけてくる。くちゅ、と音を立てながら拡げられて糸を引いている箇所を見て、ローレは汗で顔に張り付いている乱れた髪をかき上げた。
「本当に、いいのか」
 確認しつつも、しっかりと涎を垂らしている自身の先端をそこに宛がう。とろけるように吸い付いてきて、今更やめろと言われても止められる自信は無い。
「いいよ。……君が、ローレがいいんだ」
 ふわりと微笑んだサマルにもう一度キスをすると、幸せそうに目を細めていた。

 * * * * * * *

 室内には嬌声が響き、ベッドは悲鳴を上げている。
 サマルの腰を掴んでいるローレは、本来の目的である例の液体を纏わせた自身で何度も彼を突く。シーツを掴み刺激に耐えている彼の胸が、動きに合わせて大きく揺れている。
「ああッあ、んン、あっあんっああァ、ひぁ♡」
 どちゅ♡と奥を突くと先端が子宮口とキスをしてサマルの腰が大きく跳ねる。きゅん♡とナカで締めつけられたと思えば、強請る様にローレに脚を絡ませてきた。
「も、っとぉ奥♡おくに来ていいから、ぁ♡」
 甘い誘惑に負けて、深く覆いかぶさったローレは言われた通り奥を突く。媚肉を強く擦ると、善がりながら腕を伸ばしてきた。
「あ、んン♡イく、いっちゃう、ぅ♡や、ああぁ……ッ♡♡」
 びくびくと大きく跳ねて、サマルが達したのが分かった。構わずピストンし続けると、呂律があやしくなった口調で喘いでいた。
 いつの間にか、ひどくサマルを欲していた。本来の彼は男で、こんな関係になることはきっとない。彼に元に戻って欲しいと思う反面、今日と言う日も無かったことになるのかと思うと、頭の中がぐちゃぐちゃと掻きまわされているような感覚になる。
「ん、ぁあ♡ろーれ、ぼく……本当は、ぁ♡」
 サマルが小さな口を開ける。善がる声を抑えることもなく、ローレに突かれながら必死に受け止めようとしていた。
「ずっと前から、君のことが好きで、ぇ、だからこんな、こと……♡ご、ごめんなさ、ぃ、あッん、あ、ああ、ん♡」
 彼が何を言っているのか分からない。今、好きだと言った?ずっと前から?
「今日だけで良いか、らァ♡一度だけでいいから君に、抱いてもらえたらって、ぇ、うう……ぼく、きみを利用して、ひどいことして……でも好きなんだ、ずっと、ずっと……ごめん、ごめんなさ、ぁ……ッ♡」
 ローレはごめんなさい、ごめんなさい、と謝り続けるサマルを見つめる。一体、何に謝っていると言うのか。
 この行為を断らなかった自分も同罪で、利用されたなどと思っていない。それに、むしろひどいことをしているのは……。
「サマル」
 名前を呼ぶと、今にも泣きだしそうな瞳がこちらを向いた。
「仲間ってだけでここまでできるのは、たぶんお前だからなんだ。身体は、きっと元に戻る。だけどオレは……これで終わらせたくない」
「それ、って……、……あ、ああア♡」
 細い腰を抱えなおして深く突くと、再び絶頂したサマルが潮を吹いた。それでもローレは止まらず挿入を繰り返す。
「戻っても戻らなくても、こうして……ッだめだ、オレ今変なこと、言って、る」
「ぜんぜん変じゃないよぉ……うれしい、あぁ、ん、あっあ、あん、あ……ッッ♡♡♡」
 サマルの中で達したローレはたっぷりと種付けすると、ゆっくりと自身を引き抜いた。それに寂しさを感じて、本当は自分がどうしたかったのかが、はっきりと分かった気がした。
「ここ、ローレのでいっぱい……♡」
 うっとりとした表情でサマルがお腹を撫でる。この先の未来がなんとなく見えた気がして、口元が緩みそうになった。
「なあ、もし戻らなかったら結婚しよう。旅が終わったらローレシアに迎え入れるから……ああ、そうしたら、ずっと一緒だよな?」
 明るくなった表情で頷いたのが見えて、ローレは愛しい仲間にキスをした。

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