がちゃがちゃ

purusha

 それから二人は一週間という期限が終わるまで、修行もそこそこにセックス三昧だった。
 ある日はリビングで、ある日は屋外で、ある日は浴室で、ある日ははじめの寝室で。
 服を着ている時間の方が短いのではないかと思う程に昼夜を問わず身体を繋げては呆れるほど止まらぬ欲に溺れ、互いにそれを異常だとは思わぬように見て見ぬふりをしていた。
 
 今も壁に手をついて尻を高く上げるベジータを背後から悟空が突いていた。床に脱ぎ捨てられている互いの服と汗の浮かぶ背を眺めながら腰を掴み、すっかり悟空の形に広がったアナルへと怒張を押し込んでいる。部屋に響き渡る嬌声に、つい口元を緩めてしまっていた。
 抜き差しする度にひくひくと疼いている後孔に引き寄せられ、ナカで吸い付かれ搾り取られる。こんな姿を知ってしまえば逃げられるはずもなく、知る度にもっと、もっと、と欲しくなってしまう。
 善がる声に脳が溶けそうになりながら悟空は必死に腰を打ち付ける。お前がこうさせたんだ。それを言うことが出来たらどんなにいいか。

「んん、カカロ、ットぉ」
 徐々に視力が戻ってきたベジータは肩越しの悟空の顔もしっかりと捉えられるようになっていた。
 その欲を含んだ視線を感じる度に全身が昂って仕方がない。やっぱりベジータは何か魔法の様なものが使えるのではないかと疑う程だった。
「すげ、うねってて……ベジータのナカ、最高だなぁ」
 言えば、きゅうと締め付けられた。悟空の言葉にいちいち反応する身体が愛おしくて背後から首筋にキスを落とす。耳を舐めながら腹の中に屹立を押し込んでいくと、ひと際高い声が上がった。
「はッあ、ァあっ!んぅ、ンッあぁ、んっ!あッは、ぁん!」
「あ、あー……出ちま、う」
「いいから、ッあ、はやく、ぅ」
 最後にきゅうっとキツく締め付けを受け、呆気なくナカで絶頂を迎えてしまった。どくどくと欲を注ぎながらベジータに「大丈夫か」と声をかけると、こくりと小さく頷いたのが見えた。
 萎えたペニスを抜くと先程までそれを咥えていた箇所はだらしなくパクパクと開閉を繰り返し、白濁がだらだらと溢れ出てきた。本日何度目か分からない絶頂を迎えたベジータは身体を震わせるだけで何も出していない。
 そんな姿に再び硬さを取り戻していく自分のものに悟空は苦笑する。以前はこんなことなかった。本当に、どうなってしまったのだろうか。

「カカロット」
 ゆっくりとこちらを振り返ったベジータに名前を呼ばれ、悟空は顔を上げた。
「オレの目は明日にでも完全に戻るだろう。ちょうど一週間経つしな。だから、こんなことは今日でお終いだ」
「え、あー……」
 分かってはいたことだが、改めて言われるとどう受け止めれば良いのか分からない。明日からはもとの好敵手として、修行相手として、力を高める相手として過ごさねばならないことは理解しているのに、どうにもしっくりとこない。
 ――これからもこの関係を続けていたい。だなんて、言える立場ではない。悟空がはっきりとしない返事だけで済ませたのが気に入らなかったのか、ベジータはきつく睨み上げてきた。
「どうせ貴様のことだ、別にこのままでもいいなどと思ってるんだろう?」
 図星を突かれ、悟空の視線は泳ぎっぱなしだ。それを見たベジータは口元を緩めると、悟空の前で膝をついた。
 何をしているのか、だなんて見たとおりだった。再び勃ちあがっていた悟空のペニスにベジータがキスをしている。付着している白濁を舐めとる様に丁寧に舌を這わせ、先端を吸いながら手を使い全体を刺激していた。
「はァ、べじーたぁ……」
 恐ろしい程に情けない声が出てしまい、悟空は苦笑する。そんなことは気にしていないのかペニスを貪るベジータの口は止まらぬままで、ぱくりと咥え込まれてしまった。
 じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てながら吸ったり舐めたりを繰り返され、悟空は何も言えなくなる。見下ろした先の髪を指で解くと時折ちらりと視線を送られるだけで、言葉などもはや不要だった。

 咥えさせたまま口の中で再び果てると、ベジータは見せつけるように口を開き中を確認させた後にごくんとそれを飲み込み、小さく舌をのぞかせた。
 まただ、また囚われていく。手を伸ばしても届かないのだと実感してからはもう遅い。ベジータもいつも、こんな気持ちだったのだろうか。
「なあ、カカロット」
 口を拭いながらベジータは脱ぎ捨てた服を拾い上げ悟空の名前を呼ぶ。二人でいるからか、名前を呼ばれることが多くなった気がする。
「お前は欲のない男だ。だが、欲しいものはいつだって手にしてきただろう」
「……ベジータ、オラは」
 悟空の口にベジータが手を当て首を振る。
「くそ、認めたくはないがずっと前からオレはお前のものなんだ。だから、お前が望めば……だが、そんなことは起きないんだ。だから――」
 その先を言わせてはいけない気がして、ベジータの手を払いキスをした。先程彼が飲み込んだ自分の味がする。変な味だ、どうしていつもこんなものを美味しそうに飲み込んでいるのかが、ずっと不思議だった。

「上手く言えるか分かんなくてずっと言わなかったけど……ベジータだけじゃねぇんだ。今やっと分かった気がする。だから勝手に決めつけないでくれよ」
 ベジータの目が今は何色なのかが分からない。さっきまで、あんなにいろんな色をしていたのに。
 じっと見つめているとベジータは一瞬だけ柔らかく微笑むと「降参だ」と呟いた。
「ああ、本当にむかつくぜ。貴様のその顔。いつか絶対ぶっ殺してやる」
 すぐにいつもの険しい表情に戻り毒を吐く姿に悟空は笑顔になる。
 抱きしめた体はあたたかい。ずっとこのまま、と願うことは本当に許されないのだろうか。