誰のためでもない
暗雲
部屋から出て行く男の背を見送ったベジータは、先程まで悟空がいた場所のシーツを手繰り寄せる。まるで先程までそこに存在したことを確かめるように残っているぬくもりを撫で、一糸まとわぬ姿のまま流し込まれたものが残っている箇所へ手を伸ばした。
「ん、ぁっア、あぅ、カカロッ、ト……」
一緒にここを出ようと言われた時にそれを断ったのは、消えてしまう前にもう少しだけ一人で考えたかったからだ。
自分が抱いている悟空への感情がやっと分かった。そして次の瞬間には身体を重ねていた。充分過ぎる奇跡の連続に思考が追い付かないが、それもこれで終わりだ。いつまでも自分勝手な理由でこんなところに悟空を引き留めておくわけにはいかなかった。
後孔へ這わせていた指を奥へと進めていく。先程まで悟空がしていたのと同じように触れている筈なのに何かが足らない。もどかしい気持ちを抑えられぬまま、ぐちゅぐちゅと音を立てて自らナカをかき乱していった。
「こんなんじゃ、足りないのに、ィ……かかろっと、うぅ、あ、あっァあッ!」
熱を持った先端からぴゅるっと欲が吐き出され腹の上に散った。何の意味もない行為だ。だけど指は止まらず、次は胸にも手を添えて初めに触れられた時を思い出しながら乳首を擦る。
「んンっあ、ぅ……かかろっと、オレは、ずっと……」
コリコリと乳首を引っ掻くと勝手に腰が跳ね、更にナカに入ったままの指を欲深く前立腺を擦る様に動かしてしまう。誰もいない、誰も聞いていない、誰も見ていない、カカロットももういない。あとは消えるだけだというのに、どうして。
「奥まで、ぇ、欲しいのにっカカロットぉ、あっあん!ふぁ、ああ、好きだ、好きなんだ、ずっと、ずっと……ッ!」
もう何も出ない体はただ乱れるだけで、視界がチカチカと点滅している。こんなはずではなかったのに。どこで道を違えたのか分からない。
魂だけに戻り生まれ変わって、もしまた出会えることができたとしたら、その時は、きっと――――。