永遠に泣き続けなさい
体が重い。息苦しい。胸が圧迫され押しつぶされるような感覚に、真夜中の真っ暗な寝室でベジータは目を覚ました。
一人で寝るには大きなベッドの上で上半身を起こそうとしたが、思うように動かない。そこでやっと自分以外の何者かがベッドの上にいると気がついた。姿を見なくてもよく知るその気のせいで正体が分かってしまい、何故と考える前に身体が動く。
ドゴォッ!という鈍い痛みと共に横で寝転んでいた間抜けな寝顔に向かって拳をぶつければ、ベッドから転げ落ちた男が痛みに悶えていた。
「痛ッてぇ!!!」
見れば、床に尻餅をついている悟空が手で顔を覆い涙目でこちらに何かを訴えていた。
「ベジータぁ、いきなり何すんだよ!」
「それはこっちの台詞だ!……貴様、何故ここにいる。誰の許可を得てオレの隣で寝ているんだ」
痛みが引いたのか普段の表情に戻った悟空は再びベッドに乗り上げてくると胡座をかき、ベジータに顔を寄せてきた。
「な、なんだ……」
ベジータは後ずさるが、ベッドの上では逃げられる場所も限られている。あまり騒いで寝ている家の者達を起こしたくはない。近づいてくる悟空の真意が分からず、調子が狂ってしまう。
「なあ、ベジータ」
鼻先が触れそうな程に近づいてきた悟空に、ベジータは眉間に皺を寄せる。顔を離せと言おうとしたその瞬間、口を塞がれ言葉を失った。
「ん、ン……ッ!?」
力任せに押し付けてくるだけのキスにベジータは呼吸を忘れそうになる。何をされてるのかやっと理解した時には、再び身勝手な顔面を殴りつけていた。
「貴様、なんのつもりだ!」
口を拭いながら、今度は床で仰向けに倒れている男に問いかける。寝床に現れたかと思えば突然キスをしてくるなんて、理由がまったく分からない。悟空が不可解なことをするのはいつものことだが、それは戦いの中での話だ。普段はここまでではないだろうと思ってはいたが、今の行為はやはり意味が分からない。
そして床に倒れたままの悟空が天井を見上げながら口を開いた。
「前にオラが口と口を合わせたことないって言ったら、びっくりしてただろ?なんでか考えてみても分かんなくてさ。子どもがいるならしたことがあるはずなんて言われても、全然ぴんとこなくて」
悟空は喋りながら体を起こすと後ろ頭をがしがしと掻き、ベッドの上のベジータをじっと見つめている。その視線から逃れたいのに体が動かなくなってしまい、いつになく真剣な目の同胞を同じように見つめ返してしまう。
「ベジータは知ってるみたいだったから、やってみたいと思って」
へへ、と笑う男にベジータは頭を抱えた。
確かに、キスをしたことがないという悟空を前にして呆れたことがあった。子どもを二人も作っておきながら一体どういうことだと思ったが、それが“孫悟空”という男なのだから仕方がない。それに大して深く言及するつもりは無かったが、まさか本人から突き付けられるとは思わなかった。
「それで昨日の夜に気になったら仕方が無くなっちまって……ここに来たけどベジータは寝ちまってたからさ。起きるまで一緒に寝てようと思って」
「待て、昨日の夜だと?」
「そうだけど」
なんでもない、という顔の悟空に更に頭を抱えたくなる。と、いうことは。知らないうちに昨夜から悟空とベジータは同じベッドを共にしたことになる。先程目を覚ますまで全く気が付かなかった自分も悪いが勝手に人の寝床にやって来て隣で眠る方が非常識だろうと言ってやったが当の本人は気にしていない様子だ。
「勝手に来て悪かったけどさー、どうしても気になっちまって!な、キスってやつ教えてくれよ」
こちらを見る大きな目に引き寄せられそうになる。さっさと諦めてくれればいいのに、悟空は絶対に引かない様子だった。
「それは貴様の妻とやれ!なんでオレが貴様とそんなことをしなきゃならないんだ!」
「チチともやったさ!だけどオラと一緒でチチもこういうのよく知らないし、なんか違う気がして。ベジータ、そういうの詳しそうだからさ」
そう言われて、はい分かりましたと言えるやつがどこにいるというのだ。諦めの悪い男だという事は知っているが、そこまでは面倒見きれない。こんな奴がよく子どもを作れたものだと逆に感心してしまう。
こんな場面を誰かに見られたりしたら、きっと自分は死んでしまうだろう。だからあまり騒ぎ立てたくない気持ちが先走り、ベジータはシーツを握りしめながら悟空へと顔を寄せた。
「……オレが教えてやれば、貴様は満足するのか?」
「ああ、もちろん!」
暗い部屋に似つかわしくない眩い笑顔にベジータの目は眩みそうになる。それを耐え、悟空の頬に手を添えた。指先から悟空が緊張しているのが伝わって来る。お互いにいい年の大人の男だというのに、まるで生娘の様だ。
目を開いたままの悟空に「目を閉じろ」と言えば大人しく従っており、それに少し気をよくして薄い唇にキスをした。
「ん、んぅ……」
溢れる声と吐息がどちらのものかは分からない。先程悟空がしてきたようなものは子どものママゴトだと教えてやる様に舌で口を割り、その中を味わってやった。
悟空はベジータのキスに驚いたのか最初の内は固まったままだったが、しばらくすると自ら舌を絡ませてきた。順応してくるのが面白くて角度を変えながら何度もキスをしていると、ふいに悟空の手が腰に添えられて来た。
「カカロ、ット」
無意識のうちに名前を呼んでおり、それに応えるように腰を抱き寄せられる。ぐっと距離が縮まり、深くなっていくキスにベジータは目の前の男の背に腕をまわしていた。
「ベジータぁ……」
同じように名前を呼ばれ、我に返る。密着していた胸板を押し返し距離を取ると互いの間を糸が引き、ベジータは顔が熱くなっていくのを感じた。
悟空は惚けた表情をしているわりに満足そうにしている。それに無性に腹が立ったがどうすればいいのか分からない。何も言わず口を拭っていると、悟空は「やっぱベジータはすげえや!」と何故か感動した様子で目を輝かせていた。
「これがキス?っちゅーやつか!気持ち良かったなぁ……なあ、もっかいしていいか?」
前のめりでそれを言われた時、ベジータは本日三発目のパンチを喰らわせていた。
* * * * * * *
あれから悟空はベジータと会う度にキスを強請る様になった。はじめは普段通り修行をしているのに、一息ついた時に「キスをしていいか」と問われるのだ。それにベジータが頷くはずもなく、だけど悟空も「そっかぁ」と言うだけでそれ以上食い下がっては来ない。悟空の考えが読めないベジータは戸惑うことが多くなり、それは最近の悩みとなった。修行をするまではいいのに、どうしてこうなってしまったのだろう。今日も今日とて荒野での修行を終えた時に「キスしたい」と言われ、ベジータはいい加減にしろと一蹴する。
「だから、それは妻とすればいいだろう。オレとやりたがる理由はなんだ」
「んー、なんだろうなぁ。それが分かればオラも苦労しないんだけど」
分からないとはどいうことだと思ったが、これ以上追及したところでまともな答えが返って来ないことは明白だ。ベジータは腕を組んでうんうん唸る同胞を尻目に持って来ていた水の入ったペットボトルを呷った。
「ベジータはさあ、オラとキスしたいってならねえんか?」
それを言われた時、まさに文字通り「はあ?」と発してしまった。こいつは何を言っているんだと言ってやりたいが、あまりにもまっすぐな瞳で見つめられて言葉に詰まる。
「なるわけないだろ!……貴様、一体何を考えている」
「ええ?ベジータのことかな」
悟空の言葉は、がんっと頭を殴られたような衝撃だった。恐らく悟空の言葉に他意は無い。本当にベジータのことを考えているのだろう。
だが、今この状態でそれを言われると、まるで、まるで……。
「自分でもよく分かんねえけど、キス以外もしてえなって思う時もあるぞ」
更に爆弾発言をされて、ベジータはついに何も言えなくなってしまった。悟空の言う「キス以外」が何かを知りたくなくて、無言のまま背中を向けてしまう。持っていたペットボトルを握り潰してしまい、中に残っていた水が溢れ出す。それが手にかかっても気にならない。今気にすべきは、とんでもないことを言い出した同胞のことだけだ。
ベジータはゆっくり振り返ると、頭の後ろで手を組み間抜けな顔をしている男に向かって口を開いた。
「……オレはきっと、貴様と一緒に時間を過ごしすぎた。だから勘違いしているんだ。それはお前がオレに向けていい感情じゃない。キスだって、本来なら貴様は妻と……好いている相手と、すべきだ」
今までベジータは、悟空と数多の危機を乗り越えてきた。必要とあらば共闘することもあった。だから、脳がバグを起こしているのだと教えてやらねばならない。
「ベジータ、よく分かんねえよ」
それでも今一つ理解していない様子の悟空の肩に、ベジータが手を置いた。
「分からなくていい。とにかく、貴様のそれは一時の気の迷いだ。貴様の知らないことをオレが教えてやったから、そんな気分になってるだけだ」
「ふうん。でもそれならそれで良いじゃねえか。オラはベジータとえっちしてえよ」
とうとう直球に伝えられてしまい、悟空の肩に置いた手に力が入ってしまった。眉間のしわが深くなっていくのが分かり、よくない感情がどろどろと全身を蝕んでいく。
すると悟空が首を傾げ顔を覗き込んできた。そして「ベジータは?」と静かに言い放った男がキスを強請ってきた時と同じ目をしていることに気が付きベジータは縛られたように逃げられなくなる。ここで絶対頷いてはいけないのに、どうしたというのだろう。その目で見られると駄目なのだと全身が訴えてくる。
「なあ、ベジータはどうなんだ?」
再び聞かれ、ベジータは顔を反らす。ノーとはっきり言えばいい。たったそれだけのことが出来ない事実が更にベジータの頭を悩ませる。黙ったままでいると、唇に何かが触れてきた。それが何かだなんて確認する必要もない。あの時に教えたことを守っている悟空は目を閉じており、胸の奥がじんわり暖かくなっていくのを感じた。
「……相変わらず、下手くそなキスだ」
「だって、ベジータが教えてくんなきゃ分かんねえよ。それにオラ、ベジータのこと好きだ。これって好きな相手とするものなんだろ?」
どうかしているのは悟空だけではなく自分も同じなのだと気が付いて口元が緩む。
もう、難しいことなど気にする必要はないのかもしれない。
* * * * * * *
ベジータは『何かあった時の為に』と用意していた簡易的なカプセルハウスを森の奥の川沿いに設置すると悟空を連れて入った。
以前、悟空との修行中に滝壺に突っ込んでしまったことがある。全身ずぶ濡れの状態のまま帰宅した際にブルマに長時間注意されたことがああり、それからは汚れた状態では帰れないと悟空との修行の時はこうしてカプセルハウスを持ち歩くようにしていた。それが、まさかこんなことの為に使う様になるとは。後ろめたさも罪悪感も今更ではあるが、自然と足取りは重くなる。
ベッドと少しの家具とシャワールームがあるだけの簡素な部屋は物寂しい。カーテンを閉め切った空間は薄暗く、電気も点けないまま二人はベッドに雪崩れ込んだ。これではまるで獣と変わらないと思ったが、自分を押し倒す男の顔が少し赤いことに気が付いてベジータは口の端を上げた。
ベッドの上でキスの雨を受けながら、いつだったかベジータがキャベと出会った後に悟空が不貞腐れていたことを思い出す。ベジータとしては他の宇宙の純粋なサイヤ人に興味があった。だから手解きをしたし、その成長を見届けたい気持ちもあった。
後日、悟空が「自分も同じサイヤ人なのに」と零していたことを聞かされた時、ベジータは呆れた。確かに悟空もキャベと同じ純粋なサイヤ人ではあるが、悟空自身は地球で育っているし故郷のことをほとんど知らない。サイヤ人の特性も種族としての知識も、ベジータが教えない限りは知ることもない。恐らく興味だって無いのだろう。なのでキャベと張り合う意味が分からないと思った。
だけど、その時に悟空の中で生まれていたものはきっと別の感情だったのだろう。ベジータは同じ純粋なサイヤ人としての悟空に興味があった。その強さに惹かれた。追い抜きたい背中だった。目標だった。それは悟空も理解していただろう。
だけど、キャベが現れてからはどうだろう。強さは置いておいて、サイヤ人という肩書を持った別の存在に確かにベジータが惹かれていることに気が付いた悟空は良い気分ではなかったようだ。それの意味を今なら理解できる。そうでなければ、この部屋でこんなことをしたりはしない。
「ベジータ、べじーたぁ……」
情けない声で名前を呼ばれ、ベジータは目の前の同胞が知らない男の様に思えてきた。必死にこちらを求めてくる姿は尻尾を振る大型犬のようで、若干の愛おしさを感じてしまう。特徴的な跳ね方をしている黒髪を撫でてやると、目を細めてへらりと笑っていた。
「なあ、今なに考えてるんだ?」
「ん、キャベが……」
言ってから、しまったと思った。案の定悟空は面白くなさそうな顔をしてしまっている。しかし、キャベのことを考えていたのは嘘ではないがそういう意味ではないのだと言い訳のようなことはしたくない。しかたがなく、ベジータは悟空の顔を引き寄せた。
「キャベがオレを師匠と呼ぶようになってから、貴様が面白くなさそうにしていたことを思い出していた」
耳元で囁くと、悟空の体温が少し上がった。そのまま耳を甘噛みすると「そっかぁ」と返事をしていたが、信じているのかいないのかは分からない。
「キャベ、いいやつだもんな」
「ああ、そうだな……」
「でも、オラの方がベジータのこと好きだよ」
子どものような言い分にベジータは思わず吹き出しそうになる。それを堪え、ばれないよう背に腕をまわして心臓の音を分け合った。
いい加減キスしかしてこない悟空に痺れを切らし、ベジータから口を開けた。
「どうした、オレとしたいんじゃなかったのか?」
それでも悟空の下半身に張り詰めたものがあるのは分かる。服を押し上げるとこを膝でぐりぐりと押してやると「うぅ……」ともっと情けない声が聞こえた。
「だって、どうしていいか分かんねえんだもん」
そうきたか、とベジータは天井を見上げる。向こうから誘ってきたものだからある程度の知識を持っているのだと勝手に思っていたが、どうやら違ったらしい。
「キスも、だけど。男同士のえっちもベジータに教えてもらわなきゃ分かんねえ」
悟空自身ももどかしいのだろう。先程からずっとそわそわして視線は泳いでいる。先に進みたいのにその方法が分からないのはつらいのだろうと、ベジータは溜息をついた。
「……いいな、今回だけだぞ」
ベジータは身体を起こすと悟空をベッドに横たわらせ下半身に身に着けているものをすべて剥ぎ取ると、自分の服も床に脱ぎ落した。目の前に現れた悟空の怒張が想像よりも質量を持っており、怖気ついてしまう。だが、ここまで来て今更止めようとも思わない。それにそっと手を這わせて腰をかがめ四つん這いになり、先端を吸う様に口を付けた。
「わ、ベジータ……ッ!」
「いいから、大人しくしていろ」
ちゅう、と吸えばびくびくしていて可愛いなどと思ってしまう。しっかり咥え込んで吸いながら舌で筋を辿り、じゅぽじゅぽと音を立てながら口淫を続けた。
ちらりと様子を窺えば悟空は浅い呼吸を繰り返しながらうっとりとした表情でこちらを見つめている。この場では完全にベジータが優勢で、悟空はされるがままの状態だ。それに胸が躍らないと言えば嘘になる。顔にはっきりと「気持ちいい」と書かれている様子を見て気分が乗ってきたベジータは、悟空がより感じている部分を見極めるとそこを何度も吸った。
「やっぱ、ベジータすげえや……おら、チチにもこんなことされたことねえぞ」
その名前を聞いて胸が痛む理由には目を瞑った。例えどんな関係であろうとここで妻の名前を出すのはマナー違反だと言ったところでこの男には通用しないだろうとベジータは無言のまま悟空のペニスを味わう。
一番かどうかは知らないが、常に大切に思っているのは己の家族のことだろう。それはベジータも同じことだった。何か起これば真っ先にブルマとトランクスを守るだろう。
だけど悟空と言う男は家族を大事にはしているが、それが「家族」だからではないと知っている。例え友人だろうと、師匠だろうと、神であろうと、ただ身近にいる大切な人を守っている。それだけのことだ。チチも悟飯も悟天も、例え家族ではなくたって大切にしているだろう。守るべきものが多い男は大変だなと鼻で笑ってやるぐらいが丁度いいほどに単純な男だ。
だから妻の名前が出てこようと気にしない。そういうものだと割り切れるし、そもそも誘ってきたのは悟空の方でベジータはただ付き合っているだけだ。何も傷つく必要などない。
だと言うのに心臓がうるさい。頭が痛い。“カカロット”は誰のものかなんて、どうでもいいはずなのに。
じゅる、と卑猥な音が響いて一際強く吸えば悟空はベジータの口の中で果ててしまった。喉まで押し込まれる精液に息苦しくなり、収まらなかったものが口からぼたぼたと溢れながら垂れていく。
「ベジータ、ごめん!何か拭くもの……」
「いい、そのまま寝てろ」
口の中のものは飲み込み、悟空の腹の上に垂れたものは舐めとった。最後に腕で口元を拭う。そんなベジータの姿を見ていた悟空のペニスは再び勃ち上がり、天を向いていた。
ベジータは悟空の腹の上に乗り上げると腰を浮かせ、後孔に自分の手を這わせる。ごくりと生唾を呑む男は無視した。ゆっくりと指を入れ、中を解す様にぐにぐにと入口を押し広げていく。久しぶりの感覚に息が乱れるが、なんとかなりそうだと安堵した。悟空が見ている目の前でこんな痴態を晒すのは抵抗があるが、手は止まらない。気が付けば、イイ所を探して忙しなく手を動かしていた。
「んン、ぁ、ぅ、ぁあ!」
溢れる声を抑えることも忘れてしまった。過去、フリーザ軍にいた頃に散々好き勝手されていたことを思い出すと吐き気がするが今自分を抱こうとしているのはあいつらではない。そう思うだけで気が急ってしまい、知らず知らずのうちに腰が揺れていた。
「……なあ、ベジータ」
「なん、だ……」
悟空は手を伸ばすとベジータの太ももをすりと撫で、その中心で勃ちあがっているものに優しく触れた。
「やめ、今触るな、ぁッ!」
それでも悟空はゆるゆると手を動かすとベジータのペニスを扱き始めた。その間もナカを動く指は止まらず、二本三本と増えていく。
「オラ、頭の中すっげえことになってる。止まんねえかも……」
「ッ知る、か、そん、なこ……と、ッ……!」
びくんっと腰が跳ね、ベジータは悟空の手の中で達してしまった。無垢な男の綺麗な手を汚してしまったと思った時、それを先程ベジータがしたのと同じように舐めとっている姿が目に入った。
「貴様、なにして」
「ベジータもやってたじゃん。だからオラもやってみようかなって」
おんなじだな。そう言って無邪気に笑うものだから、ベジータは泣きそうになってしまう。どうして、こんな男が自分を求めるのか分からない。
だけどもう遅い。ここまで来てしまったのだから。
ベジータは腰を落とし、悟空の屹立を後孔で咥え込む。先端を飲み込み扱く様に動けば悟空の息が乱れていった。
「はッぁ、ベジータそれ、やばいかも」
「……今のうち、に、楽しんでいろ」
腰を揺らし、生で咥え込む感覚を味わう。過去のあの時とは全く違う。そう思えばベジータの表情も緩んでいった。
膝を立て深く腰を落とすと悟空が腰を掴んできて、そのまま一気に奥まで貫かれる。どちゅどちゅと突かれ、ベジータは仰け反って嬌声を上げた。
「あ、ぁあッう、ひ、ぁんッ、ンんッ!」
「すげ……、オラのちんぽ、全部ベジータの中に入ってる……」
「ぅ、かかろっと、ぉ、ッ貴様……調子に乗る、な……ぁッ!?」
腰の動きに合わせてずぷんっと奥まで突かれ、隘路を這っていた怒張がS字結腸までたどり着く。ここまで暴かれたことはなかったと、ベジータは脳まで犯されていく感覚に浸っていった。
「や、ぁッう、かかろっと、そこッ嫌だ、やぁ、ンん!やら、ぁっあん、ぁッん!」
「なあ、教えてくんなきゃ分かんねえ。どこが気持ちいいのか、全部言ってくれよ」
見下ろした先には普段とは違う意地悪そうな顔をした同胞がいた。乱暴に腰を掴み、激しく突き上げ、欲にまみれた顔で精液を注ぎ込もうとしている。
それを分かってしまった時に、きゅう、と媚びるように中を締め付けてしまう。すると悟空は表情を歪め、息を乱していた。
「へへ……ちんぽ、ぜんぶ食われちまいそうだ」
「くそ、言ってろ……ぅ、うぁ、あっあぅ、ァああっ」
「いい加減に教えてくれよ、ここ、気持ちいいんか?」
奥を目掛けて何度も貫いてくる生ちんぽにベジータは堪らず身を捩る。もはや自分で動く気力は無く、腕をつきシーツを掴みながら必死に体を支えているだけだ。そんな弱々しい体を下から突いては喘がせる悟空はどこか満足そうな顔をしている。
頭のまわらないベジータは、遂にこくこくと頷く。力の入らない体をゆるゆると動かし、悟空のちんぽを強請る様に必死に淫穴で咥え込んだ。
「気持ち、いぃっそこ、いっぱい突かれるの、きもちいぃ、ン!んぅ、ッあ、んっ!」
「うん、オラもベジータの中あったかくて好き、だ……ッ」
とちゅとちゅと激しくピストンされ、部屋中に淫らな音が響いてやまない。止まらない甘い嬌声に、ベジータは自分が誰で自分を犯す男が誰なのかも分からなくなりそうだった。
「ベジータ、好きだよ。もっと、もっとこういうの、おめえと一緒に……」
「カカロット、かかろっと、ぅ、オレは、ッ……おれも、きっと……」
互いが同時に喋り、言葉尻が消え行ってしまう。それでも伝えたかったことは通じたのだと分かり口元が緩まり、悟空はそのまま奥へ吐精していた。
どぷりと注がれる感覚に身体が震え、ベジータも果ててしまった。ぴゅるっと溢れた精液が悟空の腹に散り、また、綺麗な体を汚してしまったと視界が暗くなる。だけど自業自得だ、自分から求めたのだから。
こちらへ向かって伸ばされた大きな手に頬をすり寄せると、途端に微睡みに襲われてしまった。