気がつくには遅過ぎた
次の日は修行どころではなかった。
とにかくこの異常事態をウイスに知らせた方がいいことは分かってはいるが自分からはなかなか言い出せないベジータに痺れを切らし、悟空が「ベジータからおっぱいが出るようになっちまってよぉ~!」などと言うものだから、朝からビルス星は大混乱だった。
悟空の配慮のかけらもない伝え方に激怒したベジータは、それはもう暴れた。しかし少し動くだけで母乳が溢れてしまいそうで、思うように動けない。それが余計にベジータにストレスを与えてしまっている。今は適当な布で胸を覆ってはいるが、それでもじんわりと母乳が染み出しているようだった。
ウイスは溜息をついたあと暴れるサイヤ人二人を捕まえて床に正座させている。そして何かを考えるような素振りを見せながら、こちらをじっと見つめてきた。
「お二人とも、あまり騒がないでください。眠っているビルス様を起こして、この事態を知られてしまっても良いのですか?」
「ぐ、うう……」
それだけは避けたいのか、黙ってしまったベジータを見たウイスは「そうですねぇ」と遠くを見つめた。
「これは私の考えですが……特定の生命体は、種の存続が危ぶまれた時に子孫を残そうと身体に変化が現れることがあるそうです。この第7宇宙では純血のサイヤ人はもはや悟空さんとベジータさんだけ……そして二人とも子を成すことは出来ない。となれば、こういうことも起こりうるのでしょうかねぇ。何もサイヤ人に限った話ではありません、無限に存在する宇宙の生態系としては珍しい話ではないですしね」
「だ、だが。その話の通りだとして、なぜ変化が起きたのがオレの方なんだ!」
ウイスの唱える説に我慢が出来なくなったベジータは立ち上がり、食い掛る様に一歩前へと踏み込んだ。
「ベジータさんはサイヤ人の王子で、より種族の長としての血が濃い。なので、悟空さんよりも子孫を残そうとする力が働いたのではないでしょうか?」
「……くそ、そんな理由でオレは……オレの身体は……」
悔しそうに唇をかみしめるベジータを見た悟空も立ち上がる。悟空とて、この事態ははやく脱したいのだ。
「なっちまったもんは仕方ねぇだろうけどよ。どうやったらベジータの身体は元に戻るんだ?」
「ああ、それなら簡単ですよ」
ウイスの言葉にベジータは「なに!?」と勢いよく下げた顔を上げる。悟空も驚いた顔をしており、一方でウイスはにこにこと微笑んだまま話を続けた。
「今回は運良く……と言ったらベジータさんには失礼かもしれませんが、変化が起こったのは上半身だけでしたので『全部出す』だけでその内もとに戻ると思いますよ。これが下半身でしたら大変でしたねぇ、それこそ本当に悟空さんの子を産まなければならないところでした」
「な、なに……子どもを産む……全部出す……?」
話に追いつけていないベジータは大きく目を見開き、ぱちぱちと瞬きを繰り返している。
「ええ。今のベジータさんの身体は既に子が存在していると認識しているだけなんです。そもそも本来は子を成せる身体ではないですし、妊娠すらしていません。なので作られてしまった母乳を出し切れば良いんですよ」
「無茶苦茶だ……」
「案外そういうものですよぉ」
にこりと微笑んだウイスの視線が悟空へと移る。それに気が付いた悟空は、無意識に背筋を伸ばした。
「言い忘れていましたが、この事態は悟空さんにも責任があるんですよ」
「え、オラにも?」
悟空は自分を指さし、首を傾げる。思い当たる節がないという表情に、ウイスは困ったように眉を下げた。
「ベジータさんがこんなことになったのは、彼の身体がサイヤ人……つまりは同種族の番がいると認識した結果です。あなた方がほぼ毎晩特定の行為を続けているから――おっと、これはプライバシーに関わりますね。まあとにかく、悟空さんも要因の一つだということです」
「へぇ、ウイスさんってそんなことまで知ってるんだなぁ!」
そんなことよりもっと気にする部分があるだろうと突っ込む気力はベジータには残っていない。どうにも着眼点がずれている会話を聞き流しながら、ほのぼのと会話を続ける二人を尻目にベジータは頭を抱えていた。
* * * * * * *
このままでは修行どころか家事手伝いもままならないということで、ベジータは身体に溜まった母乳を出し切ることが課せられた。二人でなんとかしてこいとウイスから適当な指示を受けたベジータは悟空を連れて寝室へと戻り、壁際の自分のベッドに座ったまま自分の胸を見つめている。昨夜よりも更に膨らんでいる気がして、直に確かめる勇気がなかなか出なかった。
そうしていると、じっとしたまま動かないベジータの隣に悟空が腰かけてきた。
「で、どうするんだよ。オラも手伝うからさ、はやく全部出しちまおうぜ」
「……簡単に言ってくれるじゃないか」
そっぽを向いてしまったベジータに苦笑した悟空は、落ち着かせるように肩を抱き寄せる。そのまま腕の中にすっぽりと収まった同胞の心臓の音を感じながら、ゆっくりと話を続けた。
「悪かったって。ベジータがこんなことになっちまったの、オラにも責任があるんだもんな……だから、手伝わせてくれよ」
「手伝うって、貴様……あッ!」
肩に触れていた手が降ろされたかと思うと、胸を露わにするように突然がばりと服を捲られてしまう。さらしのように巻かれた布も乱暴に解かれて、支えられていた胸がぷるんっと曝け出されてしまった。いつの間に移動したのかベジータは背後から悟空に抱えられるような体勢へとなっており、そのまま両脇から差し込まれた大きな手に両胸を揉みしだかれる。
「んっ、カカロット、やっやめ……、ひぅッ♡」
「確かに前よりもやわっこくなってるかもな。ほら、じっとしてなきゃ出せねぇぞ?」
むにゅっと揉まれた瞬間、ぴゅるぴゅると母乳が溢れ出す。止まらないそれは滴り、悟空の手を伝っていった。ただそれだけの行為なのに無意識にベジータの腰は動き、抑えが効かなくなりそうになる。それに気が付いた悟空は背後から顔を寄せ、振り返ったベジータの口を塞いだ。そのまま啄むようなキスを続け、意識を反らせる様にベジータの胸を揉み続けている。
「ん、んぅ……♡」
キスが気持ちいいのか、ベジータは悟空の腕の中で大人しくしている。胸を揉まれていることも忘れているかのようにキスに夢中になっているが、このままでは埒が明かないことも分かっている。そして一度に大量に出せないものかと考えた悟空は、ピンク色の両の乳首をきゅむっ♡と強く摘まんだ。
「ひ、ァ!?♡あッ、あ――ぁ、ん……♡」
その瞬間ベジータの身体はぴくんっと跳ねて、もじもじと太ももを擦り合わせはじめた。
「悪ぃベジータ、ちょっと強くし過ぎた」
悟空は小さく震えるベジータの様子を窺いながら、溢れたものがお互いの体も服も汚していることに気が付いた。一度胸から手を離し服を脱ぎ始めるとベジータが不思議そうにこちらを見ていたので「汚れっから脱いじまおうぜ」と提案すれば、何かに気が付いた彼は大人しくそれに従った。
互いに裸になり改めてベッドの上で向かい合う。ベジータは今もなお垂れている母乳を止めるように両腕で押さえているが意味をなしていない。
このまま手で揉み続けても少量しか出せそうもない。どうしたものか、と考えた悟空はベジータを横にさせるとその上に覆いかぶさり、いつもの様に胸を吸った。
「き、貴様なにを……!?」
「こっちの方がはやく出し切れると思って」
慌て始めるベジータを押さえつけながら胸を吸う。口の中に溢れる液体はほんのりと甘い気がして、舌を這わせながら悟空はその行為を続けた。
耳まで真っ赤にしたベジータはこの恥辱に耐えるように腕で顔を覆っている。唇を噛み時が過ぎるを待とうとしているが、視線を下げれば目の前では同胞が自分の胸をしゃぶっているのだ。気がおかしくなりそうで、どうしても意識がそちらに向かってしまう。
「か、かかろっとぉ……」
ついには耐えきれず、愛しい男の名前を呼んでしまう。目線を上げた悟空がこちらを見て、何かを言いたげにしながら強く乳首を吸ってきた。
「や、ァあっあん♡吸われると、おかしくなる、ぅ……♡」
「んー、でもこうしないとなぁ……」
確かに先程よりは一度に出る量が多いようで、少しずつ胸の苦しさが和らいできているのが分かる。しかしずっとこれを耐えなければならないのもきついのだ。それも、一人だけこんな辱めを――――。
そこでベジータは『ひとり』でなければ、少しは耐えられるのではないかという考えに至った。見れば、悟空の怒張は硬度を持ちしっかりと天を向いている。
もう、これ以外に自分を保つ方法が思いつかない。ベジータは意を決し、悟空の肩を押して自分も上半身を起こした。
「……カカロット、ここに寝ろ」
「ええ?」
シーツの上に座ったまま閉じた太ももを軽く叩けば、悟空はそことベジータの顔を交互に見やった。
「いいから、さっさとしろ」
状況を理解できていない悟空は無言のまま指示された場所――ベジータの太ももへと仰向けに寝そべった。見上げた先には切なげに眉を寄せた男の顔がある。何か覚悟を決めたのか普段の表情に戻ったベジータは片手で悟空の頭を支えながら少し上半身を下げ、たった一言「吸え」とだけ言い放った。
「は……え?この体勢で?」
「……そうだ」
悟空の問いに返事をするベジータの顔が、徐々に赤く染まっていく。わなわなと震えているのが分かり、悟空は大人しく従った方が良いことを悟るが未知の状況に混乱がやまない。
「そ、それは……かなり恥ずかしいんだけど」
「そんなものオレとて同じだ!オレばかり、こんなことをさせられて……き、貴様が手伝うと言ったんだろうが!責任をとりやがれ!」
ずい、と悟空の目の前に豊満な胸が押し付けられる。少し顔を上げれば吸い付ける場所に何度も味わった乳首があり、ごくりと生唾を呑んだ悟空は口を開けるとぱくりと母乳の滴る胸へと吸い付いた。
「!! ん、ん……ッ♡」
必死に抑えようとしているベジータの声が溢れる。甘い嬌声を聞きながらその声の主の胸をしゃぶるという行為に頭がおかしくなりそうではあるが、悟空は同胞の為にそれを続けている。
そしてベジータはちらりと視線を外し、悟空の股間へと向ける。おずおずとそこへと手を伸ばして触れてみると、驚いた悟空が胸から口を離した。
「わっ、今そっちもするんか!?」
「いちいち騒ぐな、今まで何度もやってるだろうが!貴様は黙って吸ってろ、オレだけこんな惨めな姿を晒すなんてごめんだ……!」
そう言えば悟空が黙ったので、ベジータも悟空への手淫を続ける。既に先走りでぬるぬるとしているソレを扱くと、悟空の息も上がっていった。それに釣られるように胸を吸われる強さも高まっていき、じゅる、と音が出るまでになっている。
「あっ♡かかろっと、強くするな、ァあっあぅ♡」
想像よりも強い刺激に腰が抜けそうになる。あんなに恥ずかしがっていたくせに、引き剥がそうとしても悟空は離れない。それどころか、より刺激を与えるように舌を使って吸い付いてくる。
「我慢しろよ、オラに責任取らせるんだろ……?」
「で、でもっ……んン♡んッ、やぁ、ああ♡」
吸われていない方の胸に悟空の手が這い、そちらも揉まれながら時折乳首を抓られる。両の胸からとめどなく母乳が溢れており、ベジータから漏れる嬌声は更に甘ったるくなっていった。
「ッんぅ……もぅ駄目だ、あッあん♡やら、ぁあ♡も、止まって、ぇ♡」
「たぶんもうちょっとだから……。はァ、おらも駄目だ、イっちまいそうだ」
「んンっあ、ああ♡カカロット、かかろっとぉ……ッッ♡♡」
ベジータの手の中で熱が弾け、びゅるっ!と吐き出されたものが腕にかかる。そして悟空は胸から顔を離して口元を拭うと体を起こし、同胞の肩を抱くと何度も何度も触れるだけのキスをした。
「さっきの、やばかった……オラ、なんか変な感じだ」
「オレだって……。あ、待て!」
少し良い雰囲気になった途端に舌を入れようとしてきた悟空を押しのけ、ベジータは自分の胸に手を添える。お預けを喰らった悟空は不満げにベジータの様子を窺うと、「あ!」と声を上げた。
「乳出るの、止まったんか!」
「あ、ああ……」
さっきまで出ていたものがぴたりと止んでいる。すっかり元通りになった自分の体に安堵して、ベジータは胸を撫でおろした。
「あー良かった!へへ、だったらさ……」
ベジータは再びシーツに縫い付けるように押し倒され、何が起こったのかと悟空を見上げる。
「悪いベジータ、こっちも我慢できなくなっちまった!」
先程押しのけたことが気に入らなかったのか後孔に怒張を押し付けてきて、そのまま顔中にキスをされてしまう。
無垢そうな声で、無害そうな笑顔で、恐ろしいことを言うではないか。だけど、そんな男を選んだのは自分なのだとベジータはため息をつき、腕を伸ばして愛しい同胞を抱き寄せた。