がちゃがちゃ

気がつくには遅過ぎた

 ビルス星の寝室で、今日も生まれたままの姿で二人のサイヤ人影が重なっている。家事手伝いに修行にと一日体を動かして疲れているはず筈なのに熱の共有を忘れず行ってしまうのは、もっと好敵手のことを知りたいという本能なのかもしれない。
 そして悟空に組み敷かれながら、ベジータはあることをぼんやりと考える。それは悟空と体を重ねる際、必ずと言っていいほど執拗に胸を揉まれる、ということだ。初めの頃は女の様に扱われているようで良い気はしなかったが、幾度目かの情事で好きにさせてやることにした。というのも、悟空があまりにも夢中になってこちらの胸を揉んだり吸ったり舐めたりしてくるので、よっぽどこれが好きなのだろうと思ったからだ。どうせやめろと言ったところで聞きはしないだろうし、ごねて好き放題にされるぐらいならば満足するまで触らせてやった方が面倒なことにはならないだろう、という考えに至った。
 男の胸なんて触って何が楽しいのかと疑問に思い訊いたことがあるが、その時は「んー……」と生返事をされただけだったのでそれ以上深く追及はしなかった。今日も今日とて押し上げる様に揉みしだかれている自分の胸筋は力を入れていないので柔らかく、収まりきっていない部分が悟空の指の間から溢れそうになっている。目の前の男と体の関係を持つようになってから体つきが変わったような自覚はあるので、程々にしてほしいのが正直なところだ。戦闘中に困ることは無いので今のところは何も言っていないのだが、結局のところベジータも悟空がこちらの体に夢中になっている姿を見るのは気分がいいのだ。
 とは言っても触り心地で言えばやはり女の体の方がいいだろうに何故オレの胸なんか、と思うこともある。しかしベジータは、悟空と言う男が単に物好きな奴というだけなのだろうということにした。

 しかし、ついに「そんなに楽しいのか」と興味を持ったベジータは悟空の胸へと手を伸ばした。
「わっ、どうしたんだよ」
 驚いた悟空はベジータの手つきにそわそわとしている。普段触れられることのない部位へと急に手が這う恐怖、緊張、驚き、すべてこちらは経験しているというのに、という嫌味も込めてしまっているかもしれない。
「……貴様がどういうつもりでオレの胸を揉むのか分からないから、やってみただけだ」
 しばらく自分がされているのと同じ様に両手で揉んでみたが、別に面白みなどなかった。悟空もきょとんとした顔をしており、不思議そうに首を傾げている。そして何かを考えるそぶりを見せた後、へらへらとした笑みを貼り付けて話し始めた。
「オラの胸を揉んでも楽しくないかもなぁ」
「……何故だ」
「だって、オラの胸とベジータの胸は全然違うだろ?」
 一体何が違うというのか。体格差はあるが筋肉量は然程変わらないはずだ。確かに以前と比べて自分の体つきが変わった自覚はあるのだが見た目は同じ様なものだろう、とベジータは視線を下げてみる。悟空の胸と今も尚揉まれ続けている自分の胸を見比べて、そこでやっと、悟空の言いたいことが分かった気がした。形は同じようなものなのに、触れられた時の反応の仕方が明らかに違ったのだ。
「おめぇはちょっと触っただけでこんなになるからさ、なんか……やめられなくなっちまって」
「そんなこと……、ぁ♡」
 つん、と指先で乳首をつつかれるだけで甘ったるい声を出してしまう。ぷっくりと膨らんだ色づく乳輪の中央で主張するように乳首が勃起しており、ベジータは小さく首を振った。
「貴様が、何度も触るから……んンッ♡」
 乳首の下側を擦るようにコリコリと引っかかれ、もどかしさに腰が動きそうになるのを必死に堪える。すると、ぴんっ♡と尖る両方の乳首を抓られて、徐々にベジータの息は荒くなっていった。
「や、ぁ……んぅ♡」
「あー、いつ見てもうまそう」
 味なんてするはずがないのに、悟空はベジータの胸をうっとりと見つめた後に片方の先端をぱくりと咥えて舌先で乳首を転がしはじめた。たまらず声をあげるベジータを押さえつけながら愛撫を続けており、乳首をねっとりと舐められる感覚についにベジータの腰がびくびくと跳ねてしまった。
 おかしい、普段はこんなことにはならないのにと、ベジータは混乱する。悟空からこんなことをされてもくすぐったいと感じる程度で、それが快楽になることなど無かったのに。
 それに、先ほどから妙に体が熱い気がする。乳首からじんじんと不思議な感覚がして、ベジータは悟空の顔を胸から引き剥がそうと抵抗した。
「か、かろっと、ダメだ……あっあン♡や、ァ……なにか、なにかおかしい……から、ぁ♡」
 それでも悟空は離れず、ひたすらにベジータの胸を堪能している。すると視線を上げてきたので視線が交じり、悟空は何か言いたそうに瞬きを繰り返した。そして、ちゅぽんっ♡と口を離して胸から離れていくと、口元を触りながら何かを考えるように眉を寄せていた。
「うまそうだなとは思ってたけど、なんか今日は……本当に甘い味がするっちゅーか……」
「そんなこと、あるわけ……あっこら!」
 シーツの上に縫い付けられ、再び胸を吸われる。先ほどよりも強く吸われてしまい、胸の先端がじんわりと熱を持ち始めた。
「や、かかろっと……ぁ、んっ♡何か、変だぁ……あ、あッ♡♡」
「分かんねぇよ、ああもう我慢できねぇや……いれていいか?」
 駄目だと言っても聞かないことを知っている。それに、我慢が出来ないのはこちらも同じことだ。言葉を発さぬままベジータが小さく頷くと、幸せそうに微笑んだ悟空がキスを落としてきた。そして腰を掴まれたので触りやすいように少し浮かせてやるとすぐさま目当ての場所に指が挿入される。何度も続けてきた行為のおかげか、あっという間に具合が良くなる己の体にため息が出そうになった。目の前で大きく脚を開いてやれば待てが出来ない犬のようにがっつかれて、指を抜かれた直後にはずぷんっ♡と遠慮のかけらも無く一気に屹立で奥まで突かれてしまった。
「あッあ、やぁ、あ……♡んッぁ、ああァ♡」
「ん、奥いっぱいになって気持ちいいな……?」
 愛おしそうに目を細めて見つめてくる悟空に、ベジータは顔を反らしたくなった。以前は男の抱き方など知らなかったくせに。無垢で能天気だったくせに。何も知らなかったくせに。
 それを全部自分が壊してやった。変えてやった。痕を残してしまった。それに罪悪感を抱かないと言えば嘘になってしまう。しかし、これぐらいは欲張ったっていいだろうと思ってしまうのもまた事実だ。
 もはや何がきっかけだったかなど覚えてはいないが、ほんの少し背中を押してやっただけで悟空は“これ”に夢中になったし、それのおかげで永遠に手に入らないと思っていた男がまるで同胞の血を求めるようにこうして貪って来るのだ。これは本当に、気分がいい。
 こうして自ら受け入れる側となったのは、悟空も己もその関係を求めたからだ。今まで追うだけだった存在を振り回してやる快感に勝るものなど無く、ただただ胸の奥が熱くて熱くて全身が溶けそうになる。それの名前を知ろうなどとは思わないが、手放したくないということだけは分かる。
 だが、その代償だろうか。体の変化は以前よりも顕著になっている気がする。身体中の熱の持ち方、快感の得方、すべてが変わってきている気がするのだ。そんな中、悟空はこちらに覆いかぶさってまるで獣のように腰を振っている。必死に、激しく、情けない顔をして。それを愛おしいと感じてしまうのだから、本当にどうかしている。
 種を注ごうと突いてくる雄を媚肉で締め付けると表情が変わったのが分かった。歪んだ口元から熱を持った吐息が漏れており、我慢する必要がないことを伝えるように腕を伸ばして目の前の男を抱き寄せる。より深く挿入されて腰が跳ねて、抽挿を続ける男の頬に手を添えればその瞳に自分が映っているのが見えた。恐ろしい姿なのに、これが間違っていないことを証明しているような気がした。
「ベジータ、もう出るから……ッ!」
「さっさとしやがれ、ぇ♡ひぁ、あんッ♡このオレ様が貴様を受け入れてやってるんだ、あッあァ……ッッ♡♡」
 深く突かれて、奥に注がれているのが分かった。同時にベジータも絶頂を迎え、ぴゅるるっ♡と欲を吐き出す。すると胸の奥が熱を持ち始め、じわじわと全身を覆うように広がっていった。
(な、なんだ……?)
 体の異変に慌て、ベジータは己の胸に手を当てる。それに気が付いたのか悟空も心配そうに眉を寄せ、ベジータの胸へと手を這わせてきた。
「どうかしたか?なんか、様子がおかしいけど……」
 撫でるように触れられただけで、びくんっ♡と体が反応してしまう。やはりおかしい、とベジータは首を振る。
「や、め……今触るな、ぁッ!」
「で、でも。さっきから変だぞ」
 慌てるベジータを落ち着かせようと悟空は優しく胸を撫で、ぷくりと膨らんだままの乳輪と乳首に指がかすめる。すると余計に苦しくなり、ベジータは上半身を起こして両腕で胸元を覆った。
(なんだ、何か……何かが出そうな……だがそんなことあるはずがない。でも、ならばどうして……)
 視線を降ろして自分の胸を見る。普段よりもやや膨らんだ状態の胸に恐る恐る触れ、苦しそうに尖っている乳首へと触れた。その様子を悟空は黙って見守っており、二人の間を静寂だけが流れている。
 覚悟を決め、ベジータは同胞の目の前で自分の乳首を摘まむ。痛くならないように優しく触れてみたが、その瞬間、まるで射精したかのように何かがぴゅっ♡と乳首から溢れてベジータの手を汚した。起こってしまった事態にベジータは唖然としたまま動くことが出来ず、信じられない光景に目を瞑りたくなった。
 すると黙ったままだった悟空が近寄って来た。固まったままのベジータの手を取ると顔に近づけて、小さく出した舌でそれをぺろりと舐めていた。
「……甘ぇ」