がちゃがちゃ

宵が振る

 たった3年。たかが3年。長いような、短いような時をこの男を二人だけで過ごすこととなった。
 精神と時の部屋には以前にも入ったことがあるのでどういう場所かは分かっている。修行するにはうってつけの場所である代わりに過酷な場所であるという事も理解している。だがベジータにとって問題はそこではない。3年間をともに過ごすのが、隣にいる同胞だということだった。
 初めは悟空から「一緒に行こう」と誘われたのを渋った。だけれど、それを断れば好敵手に先を越されるかもしれないと思うと結局は同行する他なかった。

 ベジータが悟空の誘いを渋った理由はいくつかある。その中でも一番の不安要素を抱えながら精神と時の部屋へ出発する前日の夜を過ごしていた。
 自室の寝室に一人で籠りベッドに寝転んだまま、その不安要素について考える。目を瞑れば浮かんでくるのは間抜けな笑顔と特徴的な髪型。だけれど、身体が疼いて仕方がない。ベジータは寝間着を捲ると片手で自らの胸を揉み始めた。
(ああ、くそ。まただ……)
 いつからだったか、ベジータが悟空に対して劣情を抱く様になっていた。修行中や戦っている時は何も問題が無いのだが、こうして静かな夜に思いを馳せるとどうにも体中が熱くなってしかたがない。
 鍛え上げられた胸筋を揉み、つんと尖った突起を指の腹で擦る。すると無意識のうちに「あっ」と声が漏れており、それでも手を止めることは出来なかった。
 片手でくにくにと乳首を弄りながら、もう片方はゆるく勃ち上がっているペニスに這わせる。先走りで濡れている先端に触れると、くちゅりといやらしく音が響いた。
(あ、ああ、カカロット……)
 絶対に叶うことのない想いと感情は、とっくの昔に心の奥へとしまい込んだ。だから、せめて誰にも見られない所では曝け出させてほしい。
 悟空を想いながらの自慰は一度や二度ではない。もう何度目か分からない無意味な行為に涙が出そうになるが、それでも自分を保つためにはこうするしかなかった。
 ペニスを扱く手を止め、それをゆるゆると下へ移動させる。脚を広げ、ひくひくと疼く窄みに手を這わせつぷりと指を入れていくと自分のものとは思えない声が漏れ始めた。
「あぅ、あっあ、ぁ」
 以前、悟空に抱かれる夢を見たことがある。初めは陰茎への刺激だけの自慰だったが、その時からそれだけでは足らなくなり胸や後ろも触るようになった。
 夢の中の悟空はベジータの胸を揉み、吸い、後孔に触れ、安心させるようにキスをしてきて、そしてバキバキに勃起した逞しいペニスをそこに宛がうと激しく揺さぶってきた。
(こんな指じゃなくて、ちんぽ欲しい、カカロットのちんぽが、欲しい)
 悟空のものを想像しながら何本もの指を挿入する。自分の気持ちいいところは分かっているのでそこを攻めると腰がびりびりと震えた。同時に乳首を弄ってやると、より刺激が増していく。ずっと揉んでいたそこは今ではすっかり性感帯と化しており、少し触れただけで甘い痺れが起きて声が止まらなくなってしまう。
「あっあ、んぅ……かかろっと、ぉ」
 こんなにも自分を惑わせると男と、明日から3年間も二人きりで過ごさなくてはならない。とても正気でいられるはずがない。だけど置いて行かれたくはない。力の差を広げたくない。
 ベジータの葛藤は答えを見つけられぬまま、気が付けば欲を吐き出していた。

 * * * * * * *

「わっ、相変わらずなぁんにもねえ場所だなー!」
 精神と時の部屋に入った当日、持ってきた荷物を置きながら悟空は何が楽しいのか笑顔で伸びをしていた。
「ぐずぐずするな、オレたちは修行をする為にここに来たんだぞ」
「分かってるって。じゃあ、早速はじめるかぁ!」
 軽くストレッチを行った悟空が神殿から飛び出していく。その後に続くようにベジータも外へ出れば、より空気の重さや異常な程の気温を嫌という程に体感させられる。寒暖差が激しいことは知っているが、今は熱い時の様だ。
 真っ白な空間の中、戦闘態勢になっている悟空の前で構える。これから強くなる。強くなってやる。その気持ちに嘘偽りなど決してない。
 ベジータは悟空への劣情を忘れ、修行に集中することにした。

 どんどん気温が上昇していく中、もう何時間も二人は拳を交えている。
 そろそろ体力の限界が近いという時、運悪く避けきれなかった悟空の蹴りが腹に入りベジータは地面に倒れてしまった。
「ベジータ、大丈夫か?」
 悟空が駆け寄って来る気配に安堵してしまうのが情けなく、声をかけられても何も言い返せなかった。一瞬悟空と目が合った気がしたが、次の瞬間には意識を手放していた。

 そして、ベジータは夢を見た。以前見たことがあるような夢だった。
 ベッドに横たわる体に悟空が乗り上げてきている。こちらを心配そうに介抱してくれたかと思えば、今度は無遠慮に胸へと触れられていた。
(随分と、リアルな夢だ)
 突っつく様に触れられているかと思えば、今度は両手で鷲掴みにされ激しく揉まれた。ずっと焦がれていた、悟空の指の感覚だった。
 ――――これは、自分に都合の良い夢だ。カカロットがこんなことをするはずがない。
 そう考えたベジータは悟空の好きにさせることにした。いつの間にか服は捲られ、直に胸に触れられている。今まで自分で弄っていたせいで充血した乳首は少し触れられただけでピンと勃っている。夢とは言え好敵手にこんな体を見られたことが恥ずかしいのに、もっと触って欲しい欲には勝てない。乳首と乳輪を散々弄ばれ、息が上がって来る。指だけならまだしもザラザラとした舌先で転がされ、つい息を漏らしてしまった。
 今度は勃起した乳首を太い指で摘ままれ、上下に扱かれる。強く引っ張られる度に喘いでしまいそうで、恥ずかしさに耐えることへ集中した。
(ああでも、そこ、きもちいい。もっとシコシコ弄って、触って、舐めてほしい)
 自分の胸に夢中になっている悟空が可愛くて仕方がない。こんな姿に、こんな情けない身体に欲情しているのだろうかと思うと胸の奥が熱くなる。舐められるたびに体が震え、夢の中なのにリアルなのは想いの深さだろうかとぼんやり考えていた。
 
 しばらく好きにされたあと、悟空が離れていく感覚があった。
 待て、行くな。まだ、まだ足りないのに。こんなに好き放題触った癖に。オレの胸に夢中でしゃぶりついていた癖に。
「……、カカロッ、ト」
 気が付けば名前を呼んでいた。消え入るような声量だったが悟空の耳には届いたらしく、優しく腹を撫でられる。
「なあベジータ、……本当はずっと起きててさあ、オラのこと揶揄ってるんだろ?」
 違う、これは夢だ。お前がオレの夢の中にいるんだ。夢だから、こんな風に触ることも触られることも許しているんだ。
 悟空の言葉には返事はしなかった。だってこれは夢だ。返事をしたって意味が無い。
 なのに悟空はこちらの股間を掴んできた。反応してしまっているのがバレてしまうと思うと、焦りから身体が硬直していった。
「ベジータが悪い、なんて思っちまうんだ。オラ一体どうしちまったのかな。全然分かんねえや」
 一体、何が悪いと言うのか。それを考える隙も無くブーツと服が剥がされていく。ゆるく反応していたペニスが露になり、ベジータは羞恥に耐えるだけで精いっぱいだった。
 そうしていると太ももを掴まれ足を開かされる。まさかと思った時には、ずっと自分で慰めていた場所に悟空の指が入っていた。
(あ、ああ、カカロットの指、入ってる)
 時間をかけながらではあるが、普段から自分の指を入れているからか悟空の指はすんなりと収まっていく。次第に挿入する本数を増やされて、つい反応してしまう。もっと、もっとイイところに触れてほしい。
 無意識にベジータの腰は揺れ、悟空の指を求めている場所へ導く。すると「んっ、んン」と甘い声が漏れ、そのままナカで指を締め付けてしまった。
 そして指が抜かれたかと思うと、その寂しさを感じる間もなくずっと夢にまで見ていた悟空の怒張が押し付けられていた。
(ああ、ちんぽ。カカロットの太いちんぽ。はやく、はやく欲しい)
「は、あ……ベジータぁ」
 確実に欲を持った声色に、身が震えそうになる。ちゅう、とキスをするようにベジータの窄みが悟空の先端へ吸い付くと、あっという間に咥え込んだ。もうこちらのイイところを熟知したのか、そこを目掛けて腰を揺さぶられる。
「んん、かかろっとぉ……」
 快感に塗れながら愛しい名前を呼ぶ。はやく、奥に、もっと奥に。
 強請る様に腰を揺らせば引き寄せられ、激しく奥まで貫かれた。

 そのリアルな感覚のせいだろう。ぼんやりとしたままだった頭がクリアになっていき、自分を犯す目の前の男の姿がはっきりと見えてきた。
「ッ――――ふ、ぁッあ、……っあ、かかろ、っと……?」
「……、……ベジー、タ」
 しっかりと目が合い、ぎらぎらとした視線にもっと強請りそうになる。その願いを叶えるかのように腰を打ち付けられ、それでもこれは夢だと疑ってしまう。
 だって、これはあまりにも思い描いていたままなのだから。
「ぅ、何し、てッ……あ、あん!っあ、ッ!ああッン、ンんっあ、ぁん、あ!」
 これが夢でないとするならば、悟空がどういうつもりなのかが分からない。同じ気持ちだったのか、ただこの空間に気が狂っているだけなのか、見当もつかない。
「ッはぁ、ベジータが、悪いんだぜ……おら、こんなの知らなかったのに。ぜんぶ、ぜんぶベジータが、変えちまったんだ」
「わか、んな、い……、ああっ奥に入って、きて、る、ぅあっあ、ひぁ、ん!」
 善がる情けない声を止められない。こんな姿を見て嫌いになられたらどうしようと思うと不安でいっぱいになる。だけど悟空が抽挿を止めることなく、ベジータを思うがままに犯し続けていた。
 悟空は体勢を変えると上に覆いかぶさって来て、より深く挿入してきた。ずっと欲しかった場所への快感に、ナカで締め付けてしまう。
「あっそこは、ぁ、んあアっ、んッ!そこ、気持ちいい、から、やぁ、ッいく、ぅ、イっちゃう、ッ!」
「……気持ちいいなら、構わねえじゃねえか」
 気持ちいい、気持ちいい。それだけて頭がいっぱいになり、もっと欲しいと伝えたくて広い背に両手をまわしてしがみついた。でないと、この刺激を手放してしまいそうだった。
 その時、夢の中の悟空はキスをしてくれたことを思い出した。キスが欲しいと願えばその通りにされて、夢中で舌を絡ませる。欲しいものを次々に与えられ、脳がパンクしてしまいそうだ。
「ほらベジータ、分かるか?おめえのここに、オラのちんぽ全部入ってんだぞ」
 悟空がベジータの腹を撫でながら言う。分かってる、だってずっとそこに欲しかったのだから。素直にそう伝えられればいいのに、意地っ張りな性格が邪魔をして何も言えなかった。
 何度も何度も奥を突かれる快感を享受して放したくないと締め付けると、悟空が笑った気がした。
「なあ、……オラのちんぽ、そんなに好きか?」
 好き。そう、ずっと好きだ。お前のことも、オレを善がらせるお前のそれのことも。
「ん、カカロットのちんぽ、ちんぽ好き、ぃ……。オレ、は、ぁっ、カカロットのこと、が……」
 全部を言い切る勇気はなかった。夢の中で伝えたところで意味がない。それにこの想いは死ぬまで隠しておかなければならない。そう心に誓ったではないかと、誤魔化す様に同胞の腰に足を絡ませた。
 一際奥まで突かれた後にナカで果てる感覚があり、どくどくと精液で満たされていく。こんなにも幸せなことがあるだろうか。
 
「ああ、ずっと夢みて、た、……いつか、こんな日が来てほしいって」
 ――もう、いいだろうか。夢であれば、好きにしたって、何をしたっていい。
 欲を失っていく体に寂しさを覚え何度もキスをする。すると悟空はこちらを見据えながら口を開いた。
「なあベジータ、もっとオラが欲しいか……?」
 欲しいに決まってる。もっと、もっと欲しい。
「ほし、い、……もっと、カカロットが欲しい、ぃ」
 答えると、悟空は笑っていた。その眩しい笑顔を独り占めしている。ずっと、このままだったらいいのに。
 そして再び胸へ触れられ甘い痺れが起きる。揉まれながら乳首をカリカリと引っ掻かれ、ベジータは身を捩りながら声を上げた。
「んっんぁ、やぁ、あんッ!そこ、はァ、んッ、弱いからダメだ、あぁ、あっ!」
「ここだけじゃなくて、オラが触るところぜーんぶ弱いだろ?」
「うぅ、ぁ、気持ちい、い……、もっと、触ってぇ……」
 自分でも驚くほど素直な言葉が出て、ベジータは何も考えられなくなっていった。
 ぶるんっと揺れる胸を愛おしそうに愛撫する手に、声に、舌に、すべてに夢中になっていく。
 
「おっぱい気持ちいいの、やらしいな。……なあ、ベジータはこういうの、慣れてるんか?」
 違う、お前だけだ。他の男になど触れさせてやるものか。
 だけど、だとしたら何故こんなにも敏感なのかと問われた時になんと返せば良いのか分からない。お前を想いながらずっと一人でこの体を慰めていたなどど言えるはずもない。黙ったままでいると、悟空の表情は険しくなっていった。
「ベジータぁ、ちゃんと話してくれなきゃオラ分かんねぇよ」
 胸を強く揉まれ、弱く敏感な箇所を弄られる。
「かかろ、っと、ぉ、ッぁん、あッああっあ、あん、ッああ!」
「あんあん喘いでるだけじゃなくてさ、おっぱい触られるのも、ちんぽ突っ込まれるのも、どうして好きなのか話してくれねぇと」
 何を言われようとも応えられるはずがなく、ただ与えられる刺激を逃がさぬよう受け止めていった。
「んンっあぁ、もう、や、ぁっあ!あん、またイ、っちゃ、ぅ!ッゃああっっ〜〜〜――ッッ!!」
 腰が跳ね、射精してしまう。ぱたぱたと垂れた白濁が腹にかかり、気を抜いた隙にキスをされた。
「すげーなぁ、おっぱいだけでイけちまうんか。……思ってたよりもえっちなんだな、おめえ」
「それ以上、何も言うな……」
 胸だけでイったのははじめてのことだった。やはりこの男に触られているからなのかと思うと自分の異常性に頭を抱えたくなる。
 羞恥に顔を隠していると再び腰を掴まれる。もう、夢なのか現実なのかどちらでも良くなっていた。
「き、貴様……何して……」
「だってオラまだイってねえもん。それにベジータが言ったんじゃねえか、もっとオラが欲しいって」
 ナカに入ったままの悟空のペニスが肉壁を押し広げてくる。その感覚だけで、もう他はなにもいらないと思えてしまうのは悪夢なのかもしれない。
「なら、もっと寄越せ。……オレが、満足いくまで」
 
 * * * * * * *
 
「あ、ああっう、ぁっああ!きもち、いい、もぅだ、めだ、またイっちゃ、う!」
「ああ、何度目かな、オラもまた出そうだ」
 ベジータは四つん這いになったまま、背後から悟空に貫かれている。数えきれないほどイっては挿入され、どこを触られてもいやらしく反応してしまうようになってしまった。
「ベジータがオラのちんぽ離さねえからだぞ。ほら、また中に出してやるからな……」
 誰が離してやるものか。そう言えたらいいのに腰を振ることしか出来ず、甘い刺激に耐えながら欲しいものを強請る。
「あんっ、ああ、かかろっと、かかろっとのちんぽ、ちんぽ欲しい、ぃ、ぁッあ、あん!もっと、ぉ、んぁ、ああ、ッッッ〜〜〜!」
 直後、中に射精された感覚があった。腹の中は悟空の種でいっぱいなのに自分からは何も出ない。

「結局、答え聞いてねえな」
 強く掴まれ過ぎて感覚を失ってきたベジータの腰を撫でながら、悟空がぽつりと呟いた。
「……なんの話だ」
「おめえが、オラ以外の男とこういうことやってるのかって話」
 その話題を蒸し返されるとは思っておらず、ベジータは黙ってしまう。するとペニスが抜かれる感覚があり、ああ、夢もここまでなのかと気持ちが沈んでいく。
 するとペニスではなく指が入って来て中に出されたものが掻き出されていく。オレのなのに。オレがもらったのに。勿体ないと思うが何を言っても意味は無い。そう思い黙ったままでいると、わざとなのか前立腺をぐにぐにと刺激された。
「そんなことをするなら、もう一回……、あっ!」
 もう一度入れてほしいと言う前に、再び待ち侘びた怒張を押し込まれる。
「あんっあ、ぁっ!また、ちんぽ入って、るぅ、ッ!カカロットのちんぽ、っうう、あ、もっと、もっとぉ」
「おめえが満足するまでって、約束したもんな。……はは、おめえの中……もう、オラの形になっちゃってるかもな」
「ひ、ぁッああ、きもいいい、カカロットのちんぽ気持ちいい、好き、好き、ぃ、あ、あん!もっと、奥にぃ、ほしい、いッ!」
 本当に好きなものは何か。それが分からなくなるほど、ベジータの頭の中は悟空とのセックスのことでいっぱいだった。
 背後から深く貫かれ、媚びるように屹立を締め付ける。
「もう、オラも止められねぇんだ。……何度でもやるからな、ちゃーんと全部受け取れ、よ……ッ!」
「ァあ、ああっん、ん!かかろっとのちんぽ、んん、!んぅ、中にきて……る、ぅ、あんッあぁ、またいっちゃ、うぅ~~~──ッッ!!」
 びゅるる、と種を注ぎ込まれ目の前が暗くなっていく。駄目だ、この夢を手放すわけにはいかないのに。だけど、どうしようもない。
 夢を見続けた瞼は重く、次に目が覚めた時はいつもの二人に戻っていればいいと願った。