がちゃがちゃ

夢で会えるよ

 目を覚ますと、じゅるじゅると何かを吸うような音が聞こえて悟空の頭は一気に覚醒した。ついさっきも同じような感覚を味わった気がして音がする方へ目をやる。すると、やはり見覚えのある光景が広がっておりデジャブを感じた。
「あ、んぅ……かかろっとぉ、……♡」
 脚の間に顔を埋め悟空のちんぽを頬張っているベジータの姿は見覚えがある、なんてレベルではなかった。先程と同じ声に同じ言葉。また夢の続きを見ているのだろうかと悟空は室内を見渡す。しかし見間違えてなければここはビルス星の寝室で、下に穿いていたものを脱がされている以外は昨夜寝る前の状態と同じだった。
 だが、じゅぽじゅぽと寝起きの勃起ちんぽを咥えているベジータは格好こそは現実の姿だが、やっていることは夢の中の姿と変わらない。しかもちんぽを咥えたまま自らの後孔も弄っている。どうしたのだと訊こうとしたところで強く吸われ、悟空は呆気なく口の中で達してしまった。夢の中と同じように、吐き出したものが白い喉を通っていくのが見える。
「は、ぁ……ベジータ、朝からどうしたんだよ」
「知るか、そんなのオレが知りたい。うぅ、今朝起きてから、ずっと体が熱くてたまらないんだ……それもこれも貴様が、ここに来てからオレを一度も抱かないから……ッ♡」
 ベジータは口の中に収まりきらなかった精液を必死に舐めとると目を細め、再びペニスにキスをしていた。ちゅ♡ちゅ♡と可愛らしくリップ音を立てながら甘噛みしては舌で筋をなぞってくるせいで、吐精したばかりで萎えていたはずのモノはいつの間にか硬くそそり立っている。悟空が制止するのを聞かずベジータは着ているものを脱ぎ捨て上に跨ると、勃起したちんぽの先端をヒクヒク♡と疼いている窄みにあてがっていた。
「はぁ、かかろっとのちんぽ……やっと……♡」
 腰を落としたベジータが、あっという間に張り詰めたものをナカへ飲み込んでいく。じゅぷじゅぷと卑猥な音と一緒に甘い嬌声が部屋中に響いていった。
「あッあぁっン♡ちんぽ入った♡かかろっとのちんぽ♡オレの、ッおれのかかろっとのちんぽ……ッ♡」
「ベジータ、おめえ一体どうしたんだ……!?」
「わかんない、ぃ♡ただ、ッ奥にちんぽ欲しくて止まんない♡ふぁ、アっあん♡カカロットのちんぽじゃなきゃヤだ、あ♡かかろっとがいなきゃ、ッだめ、だ♡あ、ひぅッんン♡欲しいッ、はやくちんぽ欲しい……♡」
 ばちゅんっ♡と肉がぶつかる音に合わせるように腰を振る姿に悟空の体も熱くなっていく。望み通り奥へ貫く様に下から突きあげてやれば、途端に「ひぁん♡」と甘く鳴いて仰け反り射精していた。
「ああ゛っ♡ちんぽ奥にきたァ♡イった♡ちんぽでイった♡こんな、みっともなくイきたくないのにィ、またちんぽでイっちゃう、ぅ♡かかろっと、ッふ、あっあんっ♡や、ぁッ、カカロットぉ、――~~~ッッ♡」
 突き上げる度にベジータは連続でアクメしており、終いにはぷしゅっ♡と潮を吹いて肩で息をしている。同じように息を乱している悟空の顔を見るなり蕩けた表情で目を細め、繋がった箇所を抜いて上に倒れ込んできた。
 次の瞬間だった。
 
「悟空さん、ベジータさん!寝坊はよくありませんねぇ!」
 天使の大きな声と共に勢いよく寝室のドアが開けられたのが見えて状況を察知した悟空は、光の速さで上に被さっているベジータごと布団を被せてカモフラージュしようと試みる。しかし声の主にはお見通しの様で、入口から呆れたような声と溜息が聞こえてきた。
「貴方たちが仲良しなのは構いませんが、時間にルーズなのは見逃せません。はやく着替えて朝食の準備をお願いしますね」
 今度は穏やかに閉められたドアに悟空はひとまず落ち着いたかと布団を捲って中で羞恥に震えている同胞に「もう出てきていいぞ」と声をかけたが、しばらくは動けそうになかった。

 * * * * * * *

 着替えと準備に時間がかかってしまった悟空が調理場へ向かうとベジータの姿はなく、ウイスとレモがいるのみだった。
「あれ、ベジータは?先に来てると思ったけど」
 辺りを見渡しながらウイスに問う。するとわざとらしく顎に手を添えて「うーん」と首を捻っていた。
「ベジータさんには掃除をお願いしました。誰かさんたちが遅かったおかげで、今日は役割分担をしなければなりませんからねぇ」
 ウイスの言葉に悟空は喉を詰まらせ、乾いた笑いを零す。料理の準備はレモがいるから食卓を整えてきてほしいと指示を受け、悟空は大きく長いテーブルが置かれている食事会場へと向かった。

 悟空が綺麗に磨かれた食器を割らない様に丁寧に並べていると、部屋にウイスがやって来たのが分かり振り返る。
「ウイスさん、どうかしたか?」
「ええ。悟空さんは、ベジータさんの悩みを知りたいですか?」
 ウイスの言葉に驚いた悟空は皿を落としてしまった。床に落ちる直前だった皿はウイスの力で光に包まれる。ふわりと浮かんだ皿はテーブルの上にゆっくりと置かれ、悟空は胸を撫でおろした。
「……そりゃ知りたいよ。でも、そういうのはベジータの口から直接聞くまで待ってた方がいいと思ってるんだ」
「そうですか、貴方らしいですね。でも悟空さんはもうベジータさんの悩みに触れているんですよ。いや、触れていると言うより悩みそのもの、と言った方がよろしいでしょうか?」
 意味ありげに微笑みながら話すウイスに悟空は首を傾げる。そもそも何故ウイスはベジータの悩みとやらを知っているのか。分からないことが多過ぎるせいで、どんどん悟空の表情が強張っていく。

「悟空さん、少し前から変わった夢を見てはいませんか?」
「ど、どうしてウイスさんがそれを!?」
 目を細めたウイスの話に悟空は息を呑む。すると穏やかな笑みを浮かべたままの天使は一歩悟空に近づいた。
「お二人が己の殻を破れるよう、ちょっとした細工をしたと言ったでしょう。あれの効果がそろそろ出ている頃だと思いまして」
 悟空の額を汗が伝い、夢の中のベジータが話していたことが頭の隅から徐々に思い出されていく。ベジータは、あの夢は天使が作ったものだったと言っていた。見ている者の望みを誇張して映し、さらに現実とリンクしている、とも。
「あの変な夢、ウイスさんの仕業だったんかぁ」
 悟空が腕を組みウイスを見上げると、わざとらしく「まぁ!」と声を上げた。
「変な夢だなんて!貴方がどんな夢を見たかまでは知りませんが、貴方たちを思ってのことですよ」
 どこから出したのか、ハンカチを取り出して嘘泣きをする素振りに悟空は溜息をつく。ウイスの考えはまだ分からないが、悪い方向へ進んでいる様ではないらしい。
 「だから夢の中のベジータはえっちな格好してえっちなこと言いながらオラのちんぽ咥えてたんだな。今朝も起きたらこっちのベジータが同じようにオラのちんぽ咥えてて……」
 途中で「んん゛っ!」と大きな咳払いが聞こえてきて、悟空の言葉が遮られる。
「……悟空さん、詳しくは話さなくて結構ですよ。まあ、貴方たちの殻が破れやすい様に悟空さんの夢には少しサービスもしておいたのは事実です。夢とは見る者の願望を映し出す鏡……疎くて鈍い悟空さんには夢を見させるだけでは限界がありました。なので、色々と盛らせてはみましたけどね」
「サービスかは分かんねえけど、あのえっちな夢がどうオラ達に関係してくるんだよ」
 悟空の言葉に、ウイスは不敵に微笑む。そして背を向け「そろそろ朝食にしましょうか」と部屋から出て行ってしまった。どうやら、これ以上話すつもりは無いらしい。

 * * * * * * *
 
 朝食中、悟空はずっと上の空だった。ウイスにいろいろとバレてしまっていると分かったことも原因だが、それよりも夢の中でベジータが言っていたことが気にかかっている。
 『現実世界の“ベジータ”に影響を与えているように、その逆もある』とは、どういうことだろうか。もうその影響が出ていると言うのなら、夢の中で起こったことは、つまり――――。
「おい、さっきから何をぼけっとしている」
 隣からかけられた声に、悟空は目の前の食事に意識を戻す。気が付けばほとんどが食べ終えられており、慌てて残り少ない料理を口に運ぶ。ちらりと横を見るとベジータは既に食事を終えたようで、自分が使った皿を片付け始めていた。
「貴様が食い終わらんと片付けられないだろうが。あとは自分でやれよ」
 言いながら悟空を残し、さっさと食堂から出て行ってしまった。他の者も次々と片付け終え、この場に残っているのは悟空とウイスだけになる。
「なあ、ウイスさん」
 大きな肉の塊を頬張りながら話すと、優雅にティーカップに口を付けていたウイスが「なんでしょう」と返事をした。
「夢の中のベジータが言ったんだ。夢で起こったことは現実に影響を与えるし、その逆もあるって。オラの夢の中にベジータがいるってことは、オラがベジータに思うことがあるからだって。でも、どれもよく分かんねえんだ。ウイスさんなら分かるのか?」
 向かいに座っている天使は静かにカップを置く。眉を動かさないまま、ただ真っ直ぐ悟空を見据えていた。
「言ったでしょう、貴方はベジータさんの悩みそのものなんです。私としては悩みなどどうだっていい。貴方たち二人がより高みを目指し、更に強い力に目覚めてくれさえすれば良いんです。どうしても気になるというのなら、本人に直接聞いてみてはいかがですか?」
 ウイスの杖から光が放たれた途端、テーブルはあっという間に綺麗に片付けられていた。さっさと行けと言っているのだと気が付いた悟空は、感謝の言葉とご馳走様だけを告げ食堂を後にした。