がちゃがちゃ

夢で会えるよ

 ある日のカプセルハウスでの夜、修行後に悟空とベジータはいつもの如く情事に耽っていた。そして散々にベジータを抱いた後、ベッドの中で悟空は「オラのこと好きか」と訊いてきた。
 普段の悟空はそんなことを言わない。はじめて体を重ねたあの日以来その言葉を口にしたことなど無かったはずなので考えた結果、ベジータの中では例の夢が原因なのではないかという答えに至った。どうやら当たっていたようで、こちらの回答を聞いた悟空は気まずそうに頷いている。正直、夢のことは全て忘れて欲しかった。ウイスは修行の一環のように話していたが今のところ何も変化は無いし、ただ戸惑うばかりで良いことなどない。現実ではないとはいえ悟空の前で乱れてしまっている自分を許せないし、好きだと口走ったことも耐え難かった。
 だからベジータは悟空に「下らんことを訊いてくる様ならこの関係もここまでだ」と宣言した。そう言ってしまえば悟空はこれ以上何も言ってこないと思ったのだ。案の定口を噤んだ悟空がおかしくてベジータの口元が緩む。広い胸に抱き寄せられるとあたたかくて、頬を寄せると心臓の音が聞こえてきた。
 このままでいいんだ。ずっと、このままで。そう思いながら瞼を閉じると、あっという間に微睡みに包まれていった。

 目を覚ますといつものカプセルハウスの景色が広がっていて、おかしな夢の中ではないと確信して安堵したベジータは隣を見る。いつもなら呑気にいびきをかいている男の姿が見えず、ぽっかりと空いてしまっている空間に手を伸ばした。まだあたたかくて、ぬくもりを探る様にそこまで這って乱れた布団を抱き寄せると悟空の声が聞こえてきたので視線を移す。自分よりも先に起きている同胞が珍しくて眺めていると上に覆いかぶさって来て、そしてもぞもぞと布団の中に入ってきたので迎えてやると笑顔でこちらを見つめていた。
「なあベジータ。やっぱりオラはおめえのこと好きだよ。でも、別に同じ言葉を返してくれなんて言わねえ。オラが言いたいから言うんだ」
「……なんのことだ」
 悟空の好きという言葉に反応しそうになってしまう。夢の中とは言え、自分もその言葉を散々口にしてしまったことを思い出すと恥ずかしさに顔に熱が集まっていくのが分かり、布団を手繰り寄せて顔を隠した。
「べっつにー。な、オラやりたくなっちまった。シていいか?」
「どうせ、断ってもやるんだろ……」
「へへー、当たり!」
 本当は、ベジータとて同じ気持ちだった。だがそれを悟られたくないが故につい突き放す様な返事をしてしまうのはいつものことだ。
 直後、悟空は顔中にキスをしてきた。首筋に吸い付いて来た時には「痕を残したら殺す」と警告したにも関わらず止めることはなかったので後で殴ろうと思う。
 次第に悟空の顔の位置が降りて行って、胸を吸われた時にぴくりと反応してしまった。舌先で乳輪と乳首をなぞられ声を漏らした時に悟空の視線を感じて見つめ返すと、ぺろりと突起を舐めた悟空が口を開いた。
「ベジータのおっぱいさぁ、前より大きくなったよな?」
「ッな!?げ、下品なことを言うな!そんなはずは……」
 とんでもないことを言い始めた男にベジータは激しく動揺する。だが悟空は目の前の戸惑う姿に構うことなく胸を揉み続けていた。
「いや、やっぱり大きくなってるって!筋肉もあるだろうけど、なんかこう、えっちな感じに……って、痛ッ!!」
 聞いていられなくなったベジータは遂に悟空の髪を引っ張って胸から顔を剥がすと背中を向けて布団をかぶった。背後から「べじーたぁ……」と子犬の鳴き声のような情けない声が聞こえてくるが、今どんな顔をすればいいのか分からないベジータに振り返ることは不可能だった。
 
 * * * * * * *

 あれからベジータはしばらく悟空と会ってはいない。悟空から会いに来ることもなかったし、なんとなく気まずい思いをしているベジータも顔を合わせづらく、一人でトレーニングをしている時間が増えていった。
 ある日ブルマがトランクスと孫一家を連れてCCが協賛しているテーマパークのプレオープンに参加すると言って出掛けたので、興味がないベジータは家に一人で残っていた。と言ってもやることは変わらないベジータはトレーニングに明け暮れるのみで、食事を終え夜が来ればあとは眠るだけだった。
 ブルマ達は泊まりの為、今日の夜は静かだった。真っ暗な寝室の大きなベッドに倒れ込み、天井を仰ぐ。黒いような青いような天井を見つめていると余計なことを考えてしまいそうで、ベジータはぎゅっと目を瞑った。
 ふと、ベジータが最後に悟空に会った時に言われたことを思いだしていた。自分の胸についての変化なんて考えたこともないし認めたくもないが、どうにも気になってしまう。恐る恐る自分の胸に触れてみると筋肉が増えたのもあるだろうが、確かに以前と比べると大きさも触った感触も変わった気がした。悟空から見て変化があると言うのなら、気のせいではなく本当に変化しているのだろう。服を脱ぎ捨て、もにゅ、と悟空がするように柔らかい胸筋を揉んでいると指先に突起が触れ、おずおずとそれを指の腹で擦ってみた。
「ん、うぅ……ッ♡」
 それだけで声が溢れはじめ、躊躇いながらも両のぷっくり乳首をコリコリ♡と引っ掻いては扱く。次第に身体の奥がじん……♡と熱くなっていき、ベジータは夢中になって乳首を弄り続けた。
(ンんッ♡なんだこれ、おっぱい気持ちいぃ♡乳首コリコリってするの止まんないッ♡ダメだっこれだけでイく♡おっぱいでイくっイくぅ♡)
 ぴゅっ♡とアクメしたベジータは己の姿と行動を信じられず呆然とするが、それでも止まらず乳首は弄ったまま今度は片方の手を下腹部へと下ろした。きゅん♡と疼いている淫穴に触れるだけで腰が跳ねそうになる。指を入れて悟空に抱かれている時を思い出しながら隘路を辿り、いつも触れられる箇所を探した。
(ダメだぁ、手、止まんない♡ちんぽ欲しいっちんぽでイきたい♡カカロットにちんぽ突っ込まれたい♡)
 前立腺を見つけ、そこを押しつぶす様に触れてみる。気持ちが良いのに物足りなくて、ベジータは身を捩りながら自慰に耽った。甘イキを繰り返してトロトロになっているペニスはくったりとしている。なのに身体は疼いたままで、より強い刺激を求めてベジータは指を増やしていった。ぴゅっ♡ぴゅるっ♡と再度アクメして、気が付けば同胞の名前を口にしていた。
「ぁ、あっあぅ、んんッあ、ぁ……ッ、かかろっとぉ……」
 ここにはいない男の名前を呼んで何になるというのだ。空しい想いを抱えていると、突然バンッと大きな音を立てて寝室の扉が開かれた。
 驚いたベジータが音のした方を見ると名を呼んだ男が立っており、動揺したベジータの体はすっかり固まってしまっていた。
「ベジータ、オラに言うことないか?」
 こちらを組み敷きながら怖いほど真剣な声色で問いかけてくる悟空にベジータの体がますます強張る。耳を甘噛みされ、逆らえなくなっていった。
「な、なに……、貴様ッ急に来たくせに、勝手なことを、ぁッあ、ん!」
「オラはベジータのこと好きだ。前にも言ったよな、伝えたいから言うんだって。だからベジータが言いたくないなら、それで良いと思ったんだ。なのに、なのに……」 
 そんな言葉、本当は聞きたくはないのだ。勘違いしてしまいそうになる自分が嫌で、ベジータは必死に聞こえない振りをした。
 悟空は「自分が自分じゃなくなる」「どんどんおかしくなる」と言っていた。それはこっちの台詞だと言いたくて睨むが、それは無意味に終わる。
「さっきもここ触って、後ろ弄ってたもんな。オラにされてるみたいに。……なあ、オラにおっぱい触られるのとちんぽ突っ込まれるの、どっちが好き?」
 悟空に勃起乳首を舐められ、待ち焦がれていた刺激に全身が蕩けそうになる。ヒクヒク♡と疼く後孔を指でなぞられ、途端に喘いでしまった。
 おかしくなっているのは悟空ではない、こちらなのだ。あの夢のせいだと思っていたのに本当は違う。きっと、初めて出会った時からずっとおかしくなっている。一体どうして、どうして、どうして。
「ベジータぁ、これからも、ッ好きだって言ってくれなくていい、から……だから、オラのこと見るのは、やめないでくれ、……ッッ」
 抽挿しながら悟空が囁く。本当に勝手な男だ。どれだけ力を得ようともその背を追わない日はないというのに。ぜんぶぜんぶ、分かっている癖に。
 
 そのまま一晩中抱き潰されたベジータは、悟空から「好きだ」と言われたことを思い出す。どうして、それがまやかしだと気が付かないんだ。そんなこと、無理して言わなくていいのに。
「オラ、自分勝手だったな。おめえのこと、こんなにして。なのに好きって言ってほしいなんて……」
 屹立が抜かれ、栓がなくなった箇所からどぷ……♡と溢れてくる。こちらの身体を気遣って拭くものを探しに行った悟空の背を見送ったベジータは体を抱くようにしながら悟空のにおいが残ったシーツを手繰り寄せた。
「言葉にするのは簡単だ。だが、それを失うのも簡単なんだ。それを分かっているから、オレは……」
 ベジータは口から漏れた言葉をぐっと飲み込む。悟空の言う「好き」が一時的なものではないと証明などできない。同族の男、同じ力を持つ存在、良く知った間柄。たまたま近くにいるだけで、今は勘違いしているだけだと何故考えない?
 もし悟空の「好き」に応えたとして、それが間違いだったと気が付いた時きっとあの男は後悔する。そして無駄に筋を通そうとしてきて、きっと死ぬまで大事に扱ってくる。そんなの耐えられないだろう。“カカロット”を縛ることはあっても“孫悟空”を縛ることなんてしたくはなかった。
 それなら一生気が付かない振りをして、いつか何事もなかったようになればいい。そっちの方がお互いのためだ。そう信じて、ベジータは瞼を閉じた。