ホワイトアウト/ブラックアウト
あの日から、レッドはオレの家にいたりいなかったりした。朝起きた時には既に家を出た後だったこともあれば、オレが起きるまでベッドの中にいることもあった。別に、この家にずっといてくれと頼んだわけじゃない。ただレッドがここにいたいと言えば受け入れるし、出て行きたいと言えば送り出す。それだけだった。
だけど理解はしているものの、やはり帰宅した時に、家に誰もいない寂しさを感じるようになってしまっていた。今まではそれが当たり前で、子どもの頃から「おかえり」なんて言われなくても平気だったのに。
ドアを開ければ真っ暗な部屋が広がるだけ。誰もいない空間が、ずっとずっと、普通だと思っていた。
今日も、帰宅後の部屋は真っ暗だった。オレはすっかりジムから帰る時は自宅へ直行するようになっていた。そもそも、寄り道するような場所もこの町には無いに等しいのではあるのだが。
明かりもつけぬまま、荷物を床に投げ捨て、上着はかろうじてハンガーにかけて、ソファへと倒れ込む。最近レッドの顔を見ていない。あいつちゃんと飯食ってんのかな、風呂に入れてんのかな、どこで何してんのかな……なんて、考えたってどうにもならないことで頭の中が埋め尽くされてしまう。
ここで寝転んだままでは仕方が無いので起き上がり部屋の電気をつけて、そこで気が付いた。机の上に、見慣れない銘菓のロゴがプリントされている紙袋がある。その隣にはつい最近作ったばかりの合鍵も置いてあって、オレは慌てて玄関へと戻った。自分のものではない靴が一足あるのを見つける。散々靴は揃えろと注意してきた甲斐があったものだ、先程は暗くて気が付かなかったのだが。
オレは寝室へと急ぎ、暗闇の中まっすぐベッドへと向かう。小さな寝息が聞こえてきて、思わず「ばかやろう」なんて呟いてしまった。
ベッドの縁に手をつくと、自分よりも大きな手がその上に重なって視界が鈍る。
「……グリーン、おはよう?」
寝起きの掠れた声が自分の名前を呼ぶ。それだけで苦しくなって、どうしようもなくなるなんて考えたことも無かった。
例え「おかえり」ではなくたって、その声が聞ければなんでも良かったのかもしれない。
「おはよう、じゃねえんだよ……」
怒ってやろうなんて考えは、とうに消えてしまっていた。
そのまま腕を引かれ、明かりをつけぬままベッドの上のレッドの隣に倒れ込む。苦しい程に抱きしめられながらキスをされるが抵抗はしないままでおいた。今は少しでも、この熱を手放したくない。
背中に回されていた手が体のあちこちを撫でるように触れてくるのでくすぐったい。身を捩ると耳元で「逃げないで」と囁かれるので動けなくなってしまう。オレは、この男になんて弱いのだろう。
レッドに身を任せながら、ここでの初めての行為を思い出す。あれから、いつも流されていることには気が付いている。そして、何も進展していないことも。
腰まで降りてきた手を振り払い、勢いに任せて自分よりもでかくなった体を押し倒す。すると驚いたのか、暗闇の中でもレッドの「どうして」と言いたそうな視線を痛い程感じた。
「そのまま、動くなよ」
先程自分が触れられたように、今度はこちらからレッドの腰へ触れていく。既に反応がある箇所をゆるりと撫で、少しぎこちない手つきで前を寛げてやれば、苦しそうにしていたものが顔を出した。根元から先端までをツツ……と指先でなぞる様に触れてやればビクビクと反応するので気分がいい。
「いつも挟むだけで、どうせ物足りねーって思ってんだろ」
「そんなこと」
「いいから」
そこに顔を埋めるように近づけて、改めて緊張が走る。いつもは背後から挟まれるだけなのでこんな間近で他人のものなんて見たことが無かったし、比較対象が自分のものしか無いのでそれがよりグロテスクな気がした。だけど吐息をかけるだけで待ち遠しそうにしているのを感じるので、ほんのちょっとだけ優越感に浸ることが出来た。
手元を両手で扱きながら、ちゅ、とわざとらしく音を立てて先端を吸う。思ったよりも難しい、なんて考えながら舌を動かし、レッドのいいところを探してやる。時折様子をうかがうように顔を見上げれば、混乱しているのだろう、視線を逸らされてしまった。
「ん、ッん……」
幹や鈴口を丁寧に舐め上げていく内に喉の奥まで入れようとして、急きすぎたのか途端に苦しくなり声が漏れてしまう。だけど、レッドも同じように小さく声を漏らしたのをオレは聞き逃さなかった。
「ここ、……?」
顎の感覚があやしくなるのもお構いなしに、奥まで咥えてじゅうと強く吸ってやる。するとレッドが「もういいから」なんて言うものだから、つまりは「もっと欲しい」ということだと理解する。
レッドは自由奔放なくせに、図々しいのかと思えば突然遠慮をしたりする。どこか本人の中での線引きがあるのだろうが、こんな時こそ普段みたいに甘えてくればいいのに、なんて思ってしまう。
馬鹿だなぁ、と言ってしまえればいいのに、生憎その口はレッドのことでいっぱいだ。あと少し、あと少しで、対等になれる気がする。
頭上でレッドが何かを言っているのを無視して扱く手のスピードを上げて一際強く吸えば、直後どくどくと口の中へ熱が注ぎ込まれた。
「グリーン、かお、はなしてッ」
無理やり顔を引きはがされたが、レッドが吐き出した大部分は今オレの口の中にある。
「もう、なんで……吐いて、ほら」
体を起こすと傍にあったティッシュを差し出されるが、「やだね」という代わりに目の前で飲み込み舌を出してやった。すると、とんでもないものでも見るような……とにかく、今まで見たことが無いほどレッドは驚いた表情になり、そして顔を背けた。
「あれ、レッドくんってば照れてる?」
受け取ったティッシュで口元を拭い声をかければ、レッドは耳まで赤くなっていた。なんだ、かわいいところあるじゃん。
「……照れてない。君が、馬鹿なことするから」
「それを照れてるって言うんだよ」
こんなことなら、もっと早くからこうしてやれば良かった。
そうすれば、もっとオレに甘えて、もっと傍にいてくれたのかもしれない。
次の日の朝、再びどこかへと行ってしまったレッドを見送ったオレはジムで放心していた。これは、完全に良くない。仕事に身が入らない。
次はいつ帰って来るんだ。それだけ、たったそれだけをレッドに聞けばいいのに、それが出来なかった。自分がここまで不器用だとは知らなかった。とにかく周りの人間に自分のこの状態を悟られない様に普段通りを装ってはいるが、はたして上手くいっているのだろうか。
すると、ジムトレーナー達が数人こちらへとやって来た。何故だか皆、どこか楽しげな表情をしている。
「リーダー、最近あまり挑戦者が来ないじゃないですか」
トレーナーの一人がそう口にすると、周りも頷き同意していた。
「……そうだな。まあ、そういう時期だし」
今の時期は挑戦者が少ない。と言うより、この冬場にこんなど田舎まで来ようとする挑戦者が少ない、が正しいだろう。
オレの返事に対し、「そうですよね」といつもより明るい返事で盛り上がっている。
「あの……せっかくですし、今日はもう切り上げて、みんなでごはんでも食べに行きませんか!」
黙っていた他のトレーナー達も「そうしましょう!」と意気揚々に口を揃える。今朝出たばかりだから、どうせレッドは帰って来ないだろう。断る理由なんて無かったオレは、二つ返事でその提案に頷いた。
自分が酒に弱いなんて思ったことは無かったが、もしかしたら、もしかしなくても弱かったのかもしれない。それか、周りの連中のグラスを変える速度が異常なだけだ。アルコールと料理のにおいが漂う店内の座敷で、オレは自分のグラスの残りを一気に呷った。
ジムトレーナー達との酒の席なんて、思えばあまり無かったかもしれない。リーダーとはいえオレ自身が周りの人間よりも年下という理由からこういった場を自分から企画しにくいというのもあるし、単純に忙しい時期が重なった、というのが理由だ。
「リーダー、大丈夫ですか?」
隣に座っているジムトレーナーのヤスタカに顔を覗き込まれて、今オレはそんなに弱っている顔をしているのかと気が付いた。そういえば、顔も熱い気がする。
「大丈夫だって。こういうの久しぶりだから、楽しいだけで……」
これは本当だった。店内に自分たち以外の客も多くかなり賑わっており、雰囲気に流されている。ジムでの雑談とは違う会話があちこちに広がって、緊張が消えていくのが分かる。
「でも、顔真っ赤ですよ」
マジかよ、と眉間にしわが寄る。確認して来ようと思い立ち上がろうとして、ふらついたところをヤスタカに支えられる。
「ほら、やっぱりかなり酔ってるじゃないですか。どうしますか、もう遅いし帰りますか?」
「……いや、そこまでじゃ」
ない、と言おうとしたが、いつの間にか談笑していた筈の他のメンバーも皆心配そうな表情でオレの方を見ていた。どうして皆、そんなにオレの行動に敏感なんだ。
「おれ、送りますから」
ヤスタカの言葉に、オレはまたしても頷いてしまった。
ヤスタカの肩を借りながら、薄暗い雪道を歩く。こんな時は何か話した方が良いのだろうが、なにも言葉が出てこない。
ただ二人で帰路を進んでいると、途中でヤスタカから口を開いた。
「みんな、リーダーのことを心配してるんですよ」
「……しんぱい?」
呂律が回らず舌ったらずになってしまう。認めたくはないが、確かに想像以上に酔っている。
「この間の挑戦者と揉めた件の時から、ずっとリーダーの様子がおかしいから。リーダーって、あんまりおれたちに普段から相談とか、そういう話をしてくれないじゃないですか」
「ああ、……」
「リーダーがおれたちに気を遣ってくれているっていうのは分かってます。ただ、もっと信頼してほしくて」
「……そうだな、悪かった」
困ったような表情で「謝らないでください」と笑うヤスタカをはじめ、他のトレーナー達にもきっと最近の自分についてバレている。先ほどの席で皆の様子がおかしかったのはその為だろう。全部、お前達のせいじゃない、オレ自身の問題なんだ……と、言えれば良いのだが。言ったところで無用な心配をかけてしまうだけの気がして、なにも言えなくなってしまう。
確かに、ヤスタカが言うように挑戦者の件がずっと引っかかっているというのもある。だけど、オレの脳内の大部分を占めているのはもっと別の問題だ……なんて、口が裂けても言えるはずが無かった。
自宅の玄関の前まで辿り着き、ヤスタカに礼を言う。
「助かった……それに、悪かった。また雪も降りだしそうだし、はやく帰った方が良い。お前の家、ここから遠くないよな?」
「はい、でも本当に一人で大丈夫ですか?」
まだ少しふらつくオレの足元を見てか、ヤスタカが心配そうな視線を向けてくる。
「流石に、もう大丈夫だから」
借りていた肩から離れるが「でも」と食い下がられてしまう。ここまで面倒を見てもらった手前その好意を無下に出来ず、どうしたものかと動けずにいると、突然目の前のドアが開かれた。
「———なんで」
ドアを開けて顔を出したのは、レッドだった。どうして、今日は朝出て行ったばかりじゃないか。
「グリーン、おかえり。それから……えっと、こんばんは」
レッドはオレとヤスタカの顔を交互に見ると、少し気まずそうに軽く頭を下げる。突然のことに困惑しただろうヤスタカも「ど、どうも……」と消えそうな程の小声で返事をしていた。
「グリーンのこと、送ってくれたんだよね?」
自然とレッドの腕が伸びてきて、気が付けばオレの体はヤスタカからレッドに預けられている。見上げた先の表情は、笑っているのか、そうでないのか、よく分からない。
「あの、もしかして……ですけど、あなたは」
「今日はありがとう。よければ上がって……って、僕の家じゃないんだけど」
「い、いえ!帰ります、その、すみませんッ!」
ヤスタカは何故か慌てた様子でもう一度頭を下げて、そのまま踵を返し去って行った。
急に二人きりになってしまい、レッドに肩を抱かれたまま「なんでいるんだ」と問いかけた。
「逆に聞くけど、なんでいないと思ってるの?」
冷たくて鋭い視線に貫かれるのを感じる。レッドは今、怒っているのだ。何年もライバルをやっていれば自然と分かってしまう。
レッドは空いている片手で玄関のドアを閉めると、オレからも離れてすたすたと明るい室内に入って行った。
「待てよ。だってお前が、今朝出て行ったばかりだから」
「でも、帰って来ないなんて言ってないよ!なのに、一人じゃなくて、その……誰かと、帰って来る、なんて……」
「はあ? そんな勝手な、……」
突然声を荒げ普段よりも口数の多いレッドに驚きつつも、向けられた背を追い越し顔を覗く。
すると、むすっとした表情が現れた。そんなレッドを見ていると、段々とおかしくなってきてしまう。こんなことで不貞腐れるなんて。お前はどこまで自分勝手で、わがままで、そしてオレのことが好きなんだ。
「何を勘違いしてるのか知らないけど。あいつ、うちのジムトレーナーだから」
「……知ってるよ」
そうか、とわざと素っ気無く返してやる。
「レッドが不器用なのなんて今にはじまったことじゃないけどさ」
「……悪かったね」
「でも、オレ様ってば優しいから。お前のそういう所が気に入ってんだよな」
ふふ、と口の端を上げる。戸惑っているレッドの視線が、こちらにゆっくりと向けられた。
「グリーンって、変わってる」
「レッドにだけは言われたくないな」
こんなに独占欲むき出しのレッドを拝めるのなんて、カントー中……いや、世界中どこを探したってきっとオレだけだ。
「いいよ、お前の欲しいものなんでもくれてやる。だから、レッドもオレの欲しいもの、くれないか?」
見上げたまま問えば、レッドがごくりと喉を鳴らした。なんて分かりやすい。そして、なんて愛おしい。
気が付けばあの日のように、薄暗い室内のベッドの上にレッドと倒れ込んでいた。まるで世界に二人きりのように、何にも構わず貪る様にキスをした。首に回した手から、もう絶対離してやらないと思っていることが伝わればいいのに。
互いの吐息が交わる度に、汗が首筋を伝う度に、確かめるように唇を重ねる。大丈夫、ちゃんとここにいる。だから、ずっとずっと、お前のここにいてくれればいいのに。
「あ、ぁっ、レッド、れっど」
たまらず名前を口にする。すると応えるように抱きしめられて、口内を弄る舌が活発になる。
「ねえ、グリーン……僕のお願い、聞いてくれる?」
ん、とキスをしたまま頷くと、安心したように離れた唇がそのまま額に落とされる。
「全部、欲しい。今まで欲しいって言えなかったもの、全部」
言いながらオレの両足の間に、レッドの太ももが差し込まれる。
「さっき、なんでもやるって言っただろ。だから聞かなくていいんだよ」
「うん、……そうだね、ありがとう」
嬉しい、ともう一度額にキスをされる。それがくすぐったくて、ふふ、とつい声が出てしまった。
「だからさ、オレもお前から貰うから。覚悟しとけよ?」
そのつもりだよ。その返事が胸の奥を熱くする。ああもう、こんなにも待ち遠しいなんて。
ぐちゅぐちゅと艶めかしい音が響く。仰向けになっているオレはと言えば声を抑えるのに必死で、そんなオレに覆いかぶさっているレッドが今どうしているのかなんて窺う余裕もない。
ローションを纏ったレッドの太い指がオレのナカを探り、時折イイ部分を擦られる。ずっとその繰り返しで、いよいよ耐えられなくなってくる。
「力抜いて……足、閉じないで」
そんなことを言われても、同時に胸元に舌を這わせるものだから体に力が入ってしまう。
「んなとこ、舐めるな、ぁ」
「だって、気持ちよさそうだから」
舌先で胸のつん、と尖った部分を押しつぶされて「あ」と声を漏らしてしまう。羞恥心でいっぱいで、とにかくもう爆発してしまいそうだった。
オレの言い分なんてお構いなしに、胸の柔らかい縁から突起までを執拗に吸うように舐め上げられる。くそ、この間の仕返しか。
「も、ぅ、いいから……あ、んッ!」
ぐに、とナカにいるレッドの指が曲がる。それがイイところを掠めて、びくんと小さく体が跳ねた。
「はッ……ぁ、なあ、れっど、ぉ」
「ん、なに……?」
下に伸ばされている手は止めぬまま、ちゅ、ちゅとまるで赤ん坊の様に執拗に胸を吸い続けるレッドの顔と体を無理やり引き剥がす。
そして先程までは閉じようとしていた足を開き、先程までレッドに弄られていた箇所を自ら手で開いて見せつけてやる。散々解されたそこからは、とろりとローションが溢れだした。
「はやく……、ああもう、言わなくてもいいだろ……?」
何も言わぬまま、もう一度覆いかぶさってくるレッドに触れるだけのキスをされる。「はやく、はやく」と、いい加減心臓が鳴りっぱなしで煩いのだ。
想像以上に質量があったソレがゆっくりと挿入ってきたかと思ったら、今はずちゅずちゅと音を立ててピストンを繰り返している。
「やぁ、れっど、それやめッ……あッ!」
挿入ったばかりの時は愛おしそうにこちらの頭を撫でていたくせに。一言「動いていいよ」と言ってしまったばかりに、こんなことになってしまった。
「んっん!だめだって、ば!あ、ンっぁ、あ!!」
「なんで、だめ……なの?」
「だって、ぇ…んっ!んぅ…ッきもち、いっ……から、…ッん!」
腰をぶつけながら、指とは比べ物にならないモノがごりごりと攻め立ててくる。しっかりと腰を掴まれているので逃げることも出来ない。やだやだと首を振っても涙を流しても、それが止まることは無い。なんとかレッドを受け入れることができたと思ったのに喘ぐことしか出来ず、自分が情けなくなる。
「とまッてえ、ぇ……ッ、あン、ら、めだ、ってば、ァッ!」
「だって、欲しかったんでしょ。それになんでもくれるって、言ったじゃないか」
確かに強請ったのはオレではあるし、なんでもくれてやるとも言った。だけど、こんなの聞いてない。こんなになるなんて、教えてくれなかったじゃないか。
「こわ、い……こんなの、オレじゃあない、オレじゃ……!ゃあ、ん、ンっあ、ぁン!!」
どちゅ、と最奥を突かれ自分のものとは思えない高い声が溢れてしまう。最早止まらぬ嬌声なんてどうだっていい。ただ早く、一刻も早く、レッドに全部くれてやりたかった。
「も、らめ……ッ!やぁ、ッいく、ぅ、!あっ、!も、イっちゃう、うぅ……」
まっすぐにレッドの目を見て言えば、うん、と小さく頷いたのが分かった。
「いいよ、全部あげる。だから、全部ちょーだい……?」
「はやく、ん…っ!んン、ぁ、あんっあ、すき、レッド、ぉ、すきぃ、……ッ!!」
必死にシーツを掴んで耐え、目の前のレッドに懇願する。そうすれば、先程のように優しく額にキスを落とされた。顔が近づいた時にレッドの匂いが濃くなって、たまらずナカをきゅう、と締め付けてしまう。
「ぼくも好き。これで全部、ぼくの……だよね?」
その言葉と共に、全部受け止めろと言わんばかりに最奥にどくどくと熱を注ぎ込まれる。同時に果てたオレ自身もぴゅるぴゅると吐き出し、レッドの腹を汚した。
ずるり……とソレが抜かれると白濁が溢れてきてしまって、もう行為は終わっていると言うのに「ん、ん」と声が出てしまう。
「すごい、なんか……言葉にすると、怒られそう」
「正解だから、じろじろ見るな……ああもう、もう…お前だけだから、こんな……」
言いながら、どんどん意識が遠のいていく。その瞬間にキスをされた気がするけれど、それが確かかどうかは分からない。
いつもは屈辱的なことのはずなのに、目の前が暗く閉じていく様子がこんなにも幸せに満ちているなんて。