がちゃがちゃ

タンジェリンに酔う

 お互い身に着けていたものを脱ぎ捨て、鍛え上げられた筋肉に触れる。腰に、腹に、胸に、順に触れていくたびに体温が上がっている気がして悟空は苦笑した。
「酒、飲みすぎなんじゃねえか?」
「うるさ、い……やるならさっさとしろ」
「はいはい。体が熱いのもあるけど、いつもより敏感な気もするなぁ」
 胸に軽く触れただけでピンと上を向く乳首とぷくりと膨らんでいる乳輪を指の腹で撫でてやる。ふるりと震えながら反応する身体に愛おしさが募り、見た目よりも柔らかい胸筋を押し上げるように揉んだ。
「っあ、あぅ」
 シーツを掴み、何かに耐えているベジータの様子に思わず笑みがこぼれる。
「ベジータ、ここ触られるの好きだよな」
「ん……、……嫌じゃ、ない」
 普段と比べると幾分か素直な反応にやっぱり好きなんだなと安堵する。顔を寄せて、薄く色づいた先端を舐めると「ひぁん」と高い声があがった。もう片方もくにくにと摘まめば、素直に刺激へと反応していた。
「ここが好きなのは貴様の方、だろうが……ッ」
「ああ、そうかもな。いっぱい吸っていいか?」
「もう……好きにしろ」
 言われた通り好きにさせてもらおうと、べろりと舐め上げては強く吸う。下半身を見れば、お互いにではあるがすっかり勃ちあがっていた。普段から自分でも触っているのではないかと考えながら豊満な胸を揉みつつ、ぼんやりとしているベジータに顔を寄せた。
「今、何考えてんだ?」
 言えば、ベジータは視線を泳がせた。何か言えないようなことを考えていたのではと刺激を与える手を緩める。
「あ、カカロット……」
「なんか、オラばっかり喋ってる気がして。それに今日のベジータはなんか違うっていうか……上手く言えねえけど」
 するりと指の腹で乳首の先端を擦る。んん、と声を上げたベジータはいやいやと首を振り、目で何かを訴えている。今度はきゅっと摘まむとベジータの腰が跳ね、息を乱しながらも呼吸を整えようと必死になっていた。
「オラもっと知りてえんだよ、なんでこんな気持ちになるのか。なあ、おめえなら知ってんだろ?」
 観念したのか、両腕が伸びてきて悟空の頬を挟むようにそっと触れられる。
「……、……て、ほしい」
 吐き出された控えめな声を聞き取ることが出来ず首を傾げると、更に顔を赤くした同胞が小さな口をもぞもぞと動かした。
「いれて、ほしい……は、はやく、カカロットが……ほしい」
 大きく脚を開いたベジータにひくひくと疼いている窄まりを見せつけられ、悟空はごくりと息を呑んだ。ベジータはそこを強調するように指を這わせて入口を広げ、はっはっと短く荒い息を吐いている。
 今まで何度も見てきた場所なのに、どうして身体が強張ってしまうのだろうか。そこに釘付けになっていると、誘惑して来る張本人がぺろりと小さく舌を出した。
「はやく……」
 伸ばされたしなやかな足で股間を刺激され、ぐ、と唸ってしまう。見れば、挑発するような視線がこちらを射抜いていた。
 深呼吸をして欲に染まった熱い肌に触れる。もう悟空には、自分を止められるほどの力は残っていなかった。

 * * * * * *

 ぐ、と押し挿れたペニスが隘路を辿る。汗が浮かんだ肌に手が滑りそうになるが、しっかりと掴んだ腰を引き寄せながら悟空は息を吐いた。もう充分に気持ち良くなる部分を知っている身体は勝手にそこを探ろうと動く。反応がある場所を擦る様に揺すれば、与えられる快感に身を捩り震えていた。いつの間にか、シーツに沈んでいく自分よりも小さな身体を見つめながら夢中になって貫いていた。
 滾る欲を打ち込む度に中がうねり、締まり、欲するがままに与え続ける。
「あ、あっ、ぁああっ」
 嬌声をあげながら、ベジータがこちらをじっと見ていることに気が付いた。なんだろうと乱れた髪を整えるように撫でてやれば小さな口を薄く開いたので軽くキスをした。
「ん、キス、もっと……」
「なぁんだ、ちゅーしてぇのか」
 甘えてくるような口調に胸が締め付けられ、要望通りに何度もキスを落とす。にゅるりと入り込んでくる舌を受け入れれば、音が立つほど淫らに絡まった。深くキスを続けている内にとろんとしてきた二つの目に自分が映っているのが見えて、今日は本当に飲み過ぎたと反省をする。
 顔を離すと名残惜しそうに糸が引き、頭の中が空っぽになっていく。はやく、と思っているのはこちらも同じことだ。
 腰を抱えなおし、一気に奥へと挿入する。ゆるゆると腰を動かしていると、息を乱したベジータが名前を呼んできた。
「ッあ、はぁっ、ああっ、カカロット、かかろっとぉ」
「ん……?」
 ずぷりと突けば、再び芯から欲が込み上げてくるようだった。快楽に浸りながら、どんどんベジータの中に溺れていく。
「あっあぁ、そこ、好きっ……はぁ、あッあぅ、んんっあ、ん」
「ここ……ここが好きなんか?」
 強く腰を打ち付けるとベジータは官能的に腰を振り、だらりと垂れる涎も気にしないまま淫らに声を上げ続けた。
「好き、そこ突かれなが、らァ、ゆさゆさされるの、ぉ、気持ちいい、ッひぁ!ン、ぁ、好きっすきぃっああ、あんッあ!」
「ああ、オラもこんな風になってるベジータ見てるの、好きだ」
 好き、という言葉の重みをこんなに感じたことがあっただろうか。
 自分を誤魔化す様に上から覆いかぶさって深く貫くと、ベジータが耳元に顔を寄せて来た。またキスをして欲しいのかと思い頬を撫でてやると、溶けそうな声で「カカロット」と呼ばれた。
「んんっ、ぁン、うう、……かわいい、おれの、カカロット……」
 その言葉に、声が抑えられなくなりそうだった。ゆらゆらと霞みそうになる視界の中であふれそうな波が押し寄せてくるが、甘く蕩けそうな感覚に必死に耐えベジータに目線をやる。
「はァ、好きっ好きだ、カカロット、ずっと、ずっと……お前に嫌われるのが、求められなくなるのが、怖いんだ。だから……、……」
「……ベジータ」
 それが本心なのか酒に酔っているだけなのか分からず、悟空は何も返せないままただ挿注を繰り返していた。熱を与えてくれる身体を貪る様に繋がって、夢中で犯していった。
 好きと告げられるたびに中で締め付けられ、そろそろ限界が近いと悟る。腰の速度を上げて打ち付けると、組み敷いた身体からあんあんと溢れる喘ぎ声が止まらなくなっていた。
「ああっ、あっ!あァ、イく、もう、いっちゃ、う、ッあ、んっふぁ、っあん、あ!」
「ッはぁ、悪い、ベジータ……中に出す、から……!」
 全身を覆う痺れに押されるように中で達すると、それを受け止めた身体は汗を浮かばせながら息を乱し、欲を吐き出して今は萎えてしまったものを抜く悟空の様子をじっと見つめていた。

「……なぁ、ベジータ」
 ベジータが、好きだと言ってきた。そんな可能性を考えたことも無かった悟空は戸惑いを隠せず眉を寄せる。戦士として、好敵手として、同じサイヤ人としての好意は少なからずあるだろうと予想はしていたが、それ以外があるとは思いもしなかった。
 ――好きの意味を知りたい。教えてくれ。そう言いたいのに口にできない弱さが顔に出たのか、上半身を起こしたベジータが悟空の頭を抱えるように抱きしめてきた。
「はぁ、……オレは、いいんだ。この関係が続くならなんでも……心なんて、無くて構わん」
 寂しいことを言うのだなと思った。だが、そうとでも思っておかなければ気持ちを繋ぎ留めておくことが出来ないのかもしれない。
 ベジータは諦めている。他人から与えられるものに期待しない。己の力で手に入れるもの以外へ固執しない。ならば――――と、悟空は自分に対する同胞からの想いの行方を考え打ちひしがれた。
 先程よりは落ち着いている鼓動に耳を傾けながら瞼を閉じると、突然胸に衝撃が走り体がシーツに沈むんでベッドが大きく軋む音がした。何事かと思った時には、ベジータが馬乗りになるよう乗り上げて来ていた。
 
「別に、貴様がオレのことなどどう思っていようと関係ない。オレが欲しいだけだ。なぁカカロット、オレはまだ足りないんだ」
 ぐち……と後孔を自らの手で広げペニスからだらしなく液体を垂らす姿に目が離せなくなる。悟空は同胞の痴態を目の前にして下半身へと再び熱が集まってきたのを感じていると、それをするりと撫でられた。
「ああ、お前も同じだったのか」
 ふ、と目を細める様子に魅入ってしまい手を伸ばす。すると指を絡められ、言葉にはしないが「大丈夫」と言われているような気がした。
 ベジータは悟空の張り詰めたものを跨ぐように腰を浮かせると、それを窄まりに宛がう。はあ、と息を吐きながらゆっくりと腰を揺らし、肉壁を押し広げる屹立を飲み込んでいった。
 「ん、んん……ッ」
 半分ほど入ったところで握ったままだった悟空の手をベジータが離そうとした。だがそれを許さず強く握り返し、下から突き上げるように腰を打ち付けた。
「はッあ!っ、あん、あっな、なに……!」
「おめえから好きだなんて言ってきたくせに、随分勝手じゃねぇかと思ってよ」
 どちゅどちゅと肌と肉がぶつかる音が響いて、徐々に理性が失われていく。きゅう、と何度も甘く締め付けられる感覚に腰が止まらなくなる。もう片方の手にも指を絡めると、じわりと脳が溶けていくような気がした。
「ほら、全部入った。……ベジータ、こっちの答えを聞かないのは卑怯だと思わねぇんか?」
「ひあっ、ぅ、カカロット、ッなに、を、ぁあ、あっ!あっ、うあ、あ……!」
「オラだって言いたかった。弱くて言えなかったけど、好きだって伝えたかった。だから無かったことにされるのは、悲しいだろ……ッ!」
 好き。そう伝えた瞬間にナカをきゅうと締め付けられ、再度どぷ……と中に注ぎ込んでしまう。ベジータは肩を震わせながら悟空の呆けた顔を見下ろしていた。まだ達していないベジータに声をかけようとしたが、腰を上げることなく両膝を立て、自ら腰を振り始めた。
「ベジータ、ちょっと、ッま、て……!」
「カカロットは、オレのカカロットは、ぁ、オレを好きだなんて言わない、絶対に言わないんだ……っ」
 手は離さぬまま上で乱れる姿に翻弄されている。ナカに収まったままの自身が張り詰めたのが分かった時、ベジータも口の端を上げていた。硬くなった悟空のペニスをナカで扱く様に擦り、息を上げながら激しく腰を上下させている。腹の上で何度も跳ねる身体にとめどなく訪れる快感を与えられ声をあげそうになっていると、再びベジータがうわ言のように悟空の名前を呼んだ。
「ああ、ッ好き、好きなんだ……カカロットが、かかろっ、との、ことが、ァ、あっああっ、好きなん、だ……」
「おめえだけ、みたいに言うな……ッオラだって好き、だ、ッ!なぁ、ちゃんとこっち見て、言ってくれよ」
 どこか遠くを見ているベジータを引き戻そうと、繋がれている手に力を入れる。泥沼の様に溺れてしまってもいい、ただ、こっちを見ていてほしかった。好きだと言うのなら、独善的な言葉は要らないと思った。
「好きなんだろ?オラのこと……好きなだけ言っていいぞ、全部聞いててやるからな」
「あっあん、あぁッ!好きすき、すき、ぃ、はァ、んっ、オレの、オレだけのかかろっと……すき、すきなんだ」
「オラも好き、だ、ッ……はは、こんなこと……、なんで今まで気が付かなかったんだろうな?」
 どちゅんッと一際奥を突いてやるとベジータの身体はびくびくと震え、艶めかしい太ももの中央にあるペニスから白濁がぴゅるると溢れていた。
 悟空も達すると、力が抜けたのか倒れたベジータの身体を受け止めた。抱きしめた背が少しずつ熱を失っていて、一抹の寂しさを覚える。ペニスが抜けた箇所からどろりと自分が吐き出したものが溢れだし、無茶をさせ過ぎたかもしれないと内省した。

「ベジータ」
 呼べば、隣に横たわるベジータがぼんやりと目を開けた。悟空はそれに向かい合う様に寝返りを打ちと、肩を抱き寄せキスをした。
「オラには分かんねぇことがいっぱいある。そういうの、ベジータが教えてくれないと気づけねぇんだ」
「……そうだな、貴様は馬鹿だから」
 言いながら微笑む様子に頬が緩む。さらに顔中にキスを落としていると「調子に乗るな」と振り払われてしまった。
「そうそう。だから、これからも頼むよ。……ああ、もう一回してもいいか?」
 言うや否や平手打ちが飛んできたが、背は向けられなかった。
 もう一度指を絡めて手を繋ぐと失われた体温が戻ってきたような気がして、もっと溺れてみてもいいのかもしれないと顔を寄せた。