あの日見た稲妻
長年ポケモン達と一緒に暮らしていると、言葉は違えど相手の考えていることはなんとなく分かってくるものだった。眠いのか、空腹なのか、遊びたいのか、甘えたいのか、不機嫌なのか。目を見れば考えが分かると言うのは人間もポケモンも変わらない。どれだけ相手と共に過ごし、同じ時間を共有したかが大切だ。
どうしてそんなことを考えているのかと言えば、それは今まで一緒に冒険をしてきたピカチュウ――長年苦楽を共にしてきた相棒だ――が、自分ではなく同じソファの隣に座っている幼馴染の膝の上でこの上なく気持ちよさそうに丸まっているからだ。
「ピカチュウ」
名前を呼ばれても、ピカチュウはレッドにちらりと一瞬視線を寄こしただけで動こうとはしない。くあ……と小さく欠伸をしたかと思えば、長い耳を下げて彼の膝の上で大人しくしているだけだ。こんなにも至福の表情で大人しくしている姿は、いつだったかタマムシデパートで期間限定で売られていたどこかの地方のなかなか高価なおやつを与えた時以来ではないだろうか。
そんなこちらの気を知ってか知らずか、ピカチュウは一向にその場から動こうとする気配を見せない。その反抗的な態度は、旅に出たばかりのあの頃を思い出させる。
「よしよし、いい子だな」
普段よりもふわふわとしたピカチュウの頭や背を、彼の細い指が撫でる。細かい毛をかき分けてその度に気持ちよさそうな小さな鳴き声があがり、隣の幼馴染も幸せそうに目を細めている。きっと無自覚なのだろう、あまり見たことない柔らかな表情が自分ではなく膝の上の相棒に向けられている。……決して嫉妬なんかではない。そう、絶対に……、きっと。たぶん。
今日は朝から雨が降っていて、部屋の中でも地面を叩きつける雨音がしっかりと聞こえている。その心地よさもあって、こちらもだんだんと心地よくなってきた。
「ナナミちゃんは勿論だけど、グリーンもポケモンに毛繕いしてあげるの上手だよね」
「まあ……流石に姉ちゃんには負けるけどな。でもこのぐらいなら、お前だってその内できるようになると思うけど」
撫でる、なんて行為は誰だってできる。だけどグリーンの手つきを見ていると、自分の『撫でる』とははるかに違うように思えた。指先から伝わる熱が全て徹底されているような、何か特殊なオーラでも出ているのではないかと思えるような、そういった不思議なものをレッドは感じた。
「僕にはブラッシングまでが限界な気がする」
「こういうのは腕よりも定期的にしてやることが大事なんだよ」
「そういうものなのか」
納得したような、していないような。どちらにしろ、そろそろピカチュウを彼の膝から退けてやらねばならない。気持ちよく寝ているところに悪いが、小さな体のわりになかなかあるその体重を支えるのには限界があるのだ。
「ほら、また連れて来てやるから」
毛並みが良くなり過ぎて毛玉のようになっているピカチュウを抱きかかえようとするが、やはり嫌なのか鼻をならしながら体を逸らして反抗してくる。
「これじゃ、どっちがこの子のトレーナーなのか分からない……」
「はは、別にもうしばらくなら大丈夫だし……あ、飲み物だけ欲しい」
そう言って、その場から動けないグリーンがキッチンの方向を指さす。
「まるで召使だ」
「たまには、いいだろ?」
はいはい、と零してからソファから立ち上がり、指定された場所へと向かう。
すると、どこからか自分の後に続くようにとことこと小さな足音がついて来ていた。振り返れば、どこからやって来たのか、ちょこんとその場に佇むイーブイがこちらを見上げていた。
「久しぶりだね、元気にしてた?」
膝を折り目線を近づけると、イーブイはブイッと可愛らしく鳴いた。グリーンの手持ちのイーブイは何度も顔を合わせているため、レッドにもよく懐いている。手を差し出せば、頬をすりすりと寄せてくる姿が愛らしい。思わず口元が緩みそうになって、それを誤魔化すためにふわふわの頭を撫でてやった。
「飲み物、君は何がいいかな」
聞けば、イーブイは再びとことこと歩き始めカウンター下の棚の前で立ち止まった。棚を空けて欲しいのか、取っ手付近にかりかりと爪を立てている。傷がついたらまずいと思って棚の扉を開けてやると、きっとイーブイ用なのだろう、常温保存されているらしいジュースのような飲み物のパックが隠す様に置かれているのが目に入った。
「これがいいの?」
こちらの声と同時に嬉しそうにこくこくと頷き、ふわふわの毛が揺れる。イーブイご所望の品と、あとはトレーナー二人分のアイスコーヒーとピカチュウ用の飲み物を用意して彼らのもとに戻る。その時もイーブイは大人しく後ろを歩いていた。
「これ、あの子にあげて良かった?」
ソファの向かいのテーブルに飲み物を置きながらパックを主に見せれば、目に見えて気まずそうな表情になった。
「それ、どこで見つけた?」
「カウンターの下の……棚の奥にあった」
「あーあ、見つかっちまったか」
主がわざとらしくため息をついているというのに、当のイーブイは嬉しそうに尻尾を忙しなく振っている。
「なんでわざわざ隠すの?」
「それ、飲ませても問題は無いんだけどさ、まあ……栄養価が高いからすぐ太るんだよな」
「ああ……、なるほど」
納得して頷き、再び彼の隣に腰をおろす。ピカチュウは目を覚ましており、いつの間にかグリーンの膝の上から今度は彼の肩の上によじ登ろうとしていた。
「まあいいか、今日ぐらい」
諦めたのか、グリーンがおいでとイーブイに向かって手招きをして先程空いた膝の上をぽんぽんと叩く。するとイーブイはグリーンの膝……ではなく、ぴょんと跳ねてレッドの膝の上にやって来た。
「あれ、ここでいいの?」
返事の代わりに、腕にふわふわの頬や額を擦りつけられる。これで可愛い以外の感情なんて、持てるわけがない。
「いつも綺麗な毛並みだ、美人さんだね」
背中を撫でてやれば気持ちが良いのか、小さな鼻が上を向き大きな瞳がこちらを見つめる。揺れる尻尾が足に触れる度に、小さな手足の重みを感じる度に、満たされるような気持になってしまう。
たしたし、と両手で服を引っ掻いて来るので抱っこして欲しいのかと思い抱きかかえれば、可愛らしく満足そうにブイッ鳴いた。
「……前から、思ってたけど」
隣のグリーンが肩に乗ろうとしているピカチュウの背を撫でながら、レッドとイーブイに視線を寄こしている。
「なに?」
「レッドって、イーブイに甘いよな」
なにそれ、という言葉をぐっと飲み込む。こちらから言わせれば、君の方がピカチュウに甘いのだが……なんて、レッドに言えるはずもなく。
「甘い……というか、こんなに素直に甘えられると、どうしても、さあ」
「ふーん……?」
「他の子も、みんな可愛いと思ってるよ」
「それはオレだって同じだけど」
流石にピカチュウやイーブイと同じようにリザードンやカビゴン達を膝の上に乗せることはできないが、愛情の度合いは皆同じだ。可能であればボールの中で大人しくしてくれている仲間達を今すぐ全員出して一斉に抱きしめて愛でてやりたい気持ちもあるが、室内では限界がある。それはきっと彼も同じ気持ちなのだろう。
「そういうのじゃなくて、なんつーか……ああ、よく分からなくなった」
「そう?」
腕の中のイーブイがもぞもぞと動いている。苦しいのかもしれないので抱えなおすと、顔が近づいたと同時にざらざらとした小さな舌で、ぺろりとレッドの口元を舐めた。
「わ、びっくりした」
ほんの一瞬の出来事だった。このままでは顔中を舐められそうな勢いだったので膝の上に降ろすと、諦めたのかイーブイはその場で大人しくなった。濡れた口元を拭うと「イエローカードだ」と隣でぽつりと呟かれる。「何が」と視線を寄こせば、グリーンは眉間にしわを寄せ唇を尖らせていた。
「浮気だ浮気」
「今ので?」
それなら君も同じだよ、なんて思いを込めて、先程のイーブイと同じようにグリーンに甘えるピカチュウを見る。
「おあいこだ」
言いながら、グリーンが自分の肩の上に乗っているピカチュウの方へ顔を寄せると、ピカチュウの方からつん、と彼と鼻先を合わせた。すると満足そうにチャアと鳴いて、今度は頬を寄せている。なるほど、これは確かに浮気だ。
その様子を無言で見つめていると、ピカチュウとイーブイは何かを感じ取ったのか同時にソファから降りて用意してやったそれぞれの飲み物とおやつが置かれている場所へ向かった。すっかり寂しくなってしまった互いの肩と膝には、まだ彼らの体温がほんの少しだけ残っている。
体を動かして少し隣への距離を詰めれば、肩が触れそうになる。視線の先にはじゃれ合っているピカチュウとイーブイがいて、雨音が心地よくて、どんどん眠気に襲われていく。
欠伸をかみ殺しているとトントンと優しい音が聞こえた。見れば、グリ-ンが寂しくなった膝の上を叩いていた。
「甘えるのも甘やかすのも、慣れてないんだ」
前者には納得だが、後者は嘘だ。誘われるがまま、彼の指示した場所へ寝転ぶ。決して柔らかくはないが、頭を預けるには充分だった。時折髪の間を細い指が通るのが心地良い。
そのまま意識を手放しそうになり、抵抗する気など起こらずレッドはそっと目を閉じた。
* * * * * * * * * *
レッドが目を覚ますと、既にグリーンの姿は無かった。体を起こし、ブランケットがかけられていたことに気が付く。
部屋を見渡しても誰もいない。だけど物音はする。窓の外を見ようとしたらカーテンが閉められていたので、そんなに寝てしまっていたのかとレッドは頭をがしがしと掻いた。
レッドが起きてしまわない様にするためか、部屋の照明は控えめにされていた。家主の心遣いには毎度のことながら頭が上がらない。
「あ、やっと起きたか」
静かな部屋に入ってきたのはグリーンで、レッドが眠ってしまう前と変わり風呂上りのラフな格好になっていた。
「……ピカチュウたちは?」
「ボールに戻った。お前が起きないから飽きたんだろ」
「そっか……。ごめん、退屈させたかな」
「まあ、また遊んでやってくれ」
タオルで髪を拭いている彼から、想像とは違う返事をもらったことに気が付く。
「あの子達だけじゃなくて、君に向けても言ったんだけど」
すると髪を拭いていたグリーンの手が止まり、驚いたような表情をレッドに向けた。
「え?あー……別に、気にして、ない」
今日、レッドがグリーンに会ったのは数か月ぶりだった。せっかく久しぶりに会えた日に、勿体ないことをしたと反省している。
それもあり、歯切れの悪い彼の声に、思わず頬が緩んでしまう。
「それ、ほんと?」
「……、どっちだと思う?」
わからないよ、だから教えて。言葉にしていないのに、全部伝わっている気がした。
「それじゃあ……相手、してもらおうかな」
* * * * * * * * * *
締め切ったカーテンと、ほんの少しの照明と、そして熱のこもった二人分の吐息だけの空間。時折響く水音と苦しそうな声が、どんどん互いの体温を上げていった。
ソファに座ったままのレッドの両足の間に、グリーンが顔を埋める。うっとりしたような、夢を見ているような、とろんとした両の目でレッドの中心に触れている。手で根元を包むように擦り、そこから先端まで一生懸命に舌を這わせていた。何度も見てきた姿だが、改めてその姿を見下ろすと刺激が強くて驚いてしまう。
「ごめん、綺麗にしてきたばかり、だったのに」
風呂上がりの彼の口元からだらだらと涎が垂れて、それが自分のモノを伝い、更にそれを舐めとる様にする様子を見て罪悪感を覚える。まだ少し湿っている髪を撫でると目を細める様子が愛しくて、レッドはグリーンに優しくしたいような意地悪をしたいような、よく分からない感情になっていた。
「……レッドはさ、ほんと……ッん、分かってない、よな」
じゅる、と音を立てながら先端を強く吸われて声が出そうになる。その度に嬉しそうにしている彼の表情が、余計に頭をかき乱していく。
「なんで綺麗にしてきたか、……なんて、ちょっと考えたら分かるだろ」
吸ったり舐めたりを繰り返していた後に突然ぱくりと咥えられる。「ん、ん」と苦しそうなグリーンの声が漏れ、それでも奥までレッドを咥え込み、じゅるじゅると水音が聞こえる度に熱い息が漏れてしまう。
「ぁ、ごめ、ん……ッもう」
返事は無く、一層強く吸われてレッドはあっさりを果ててしまった。その間も口を離さなかったせいで彼の口内に吐き出してしまったと言うのに、何でもない様に喉を上下させている。この行為を何度もさせておいて今更なのかもしれないが、口淫に抵抗は無いのか、と思うことはある。
おいしいものでも無いだろうに。「いつも自分がしてもらってばかりだから」と過去にレッドが申し出たことがあったが、その時は断られてしまった。
口元を拭うグリーンに傍にあったティッシュを差し出しながら、レッドが小さく口を開く。
「……ぼくは、君にこれをされるの好きだけど」
「それは良かった」
「グリーンは、自分もされたいって思わないの」
突拍子も無いことを聞いたわけでもないはずなのに、グリーンは両目を大げさに瞬きさせている。
「どうだろうな、嫌じゃあないだろうけど」
「けど?」
「オレ、好きなんだよな。お前にこれしてやるの。なんか、優勢になった気分になって」
ああ、そういう理由か。負けず嫌いな彼の性格に納得してるうちに、萎えていたモノに再び舌を這わせている。
「確かに好き……好き、だけど。もっと、別のことの方が、好き」
そしていつの間にか、上しか着ていないグリーンがソファに乗り上げきて、レッドの膝の上に跨るような体勢になっていた。レッドのゆるゆると硬度を持ち始めた箇所に、柔らかい谷間が触れる。
「もう、我慢できないって顔してるな」
「それは君も……」だよ」
「なんだ。分かってるじゃねえか」
わざと自身の谷間で擦る様に動かれるので、その奥に指を這わせた。自然と逃げようとする彼の腰を支えれば、途端に大人しくなる。
「指、いいから」
「でも」
「もう、準備してあるんだよ……」
言う通りにレッドが指を退けると、グリーンは自らの後孔に硬くなったモノを押し付けるように姿勢を変えた。顔中が熱くなって、はじめてではないのに心臓がばくばくと鳴ってうるさくて仕方がない。
「嬉しいって言って良いのかな」
「良いんじゃねえの……?」
そのままグリーンがゆっくりと腰を降ろしていくが、先端を飲み込んだ辺りでなかなか奥まで進まない。少しじれったくなり、下からとん、と突いてやる。
「あ、ばか、勝手に動くな、ぁ!」
彼の逃げようとする腰を掴み、強張っていた体で彼が見た目よりも緊張していることに気が付いた。大丈夫なんて言ったとところで何も変わらないだろうが、とにかく安心させたくて頬や首筋にいっぱいキスを落としていく。
「ぼくの為に準備してきてくれてたの、すごく嬉しいんだ」
「べつに、お前の為なんかじゃ……」
「そっか、なら自分の為?」
トントンとゆるく押し上げるように突く度にグリーンから舌足らずな声が漏れる。奥まで入りきらないので彼の浅い部分を何度も何度も擦っていく。だけど、そこが彼の好きな部分だという事も知っている。
「僕ので、はやくここを擦って欲しかったんだよね」
「ちが、ッちがう、ぁ、んっ、あッ!」
「違うの?」
ぐりぐりと形を分からせるように押し込んでやる。気が付いていないのだろうけど、もうレッドが何もしなくても彼は自分で腰を動かしている。なんだ、やっぱり、はやく欲しかったんじゃないか。
「ね、きもちいい……?」
「や、う、ぅあ!ッん、ん……ぁ、あッ」
最早返事になっていない。だけどそれでもいいか、グリーンがどうして欲しいのかはよく知ってる。レッドは掴んでいた彼の腰を一気に深く降ろすと、必死に善がっていた体がびくびくと跳ねた。
「はァ、あっ!んぁッ、あ、―――~~~ッッ!!」
途端に力が抜けたのか、レッドもたれ掛かる様に繋がったまま倒れてきたグリーンの体重を受け止めた。
「奥、入っただけでイっちゃった?」
「……くそ、……も、う、しらねえ」
涙を含んだ声に罪悪感と高揚感が襲ってくる。申し訳ないが、こちらはまだまだ物足りない。
汗で張り付いている彼の服を捲り、目の前の熱で火照った体にキスをする。胸に舌を這わせ、主張するようにつんと尖った箇所を舌先で遊んでやれば、しな垂れかかっているグリーンの声が耳に届いた。
「ん、れっど、そこ、……」
てっきり、いつもみたいに嫌だとかやめろだとか言われるものだと思っていた。
だけど。
「そこ、好き……だから、もっと」
甘えるのは慣れてないなんて、とんだ嘘つきだ。
彼に言われるがまま啄むようにそこを吸ってやると、ナカに入ったままのレッドがきゅうきゅうと締め付けられる。
「あ、あっあン、!……ぁッは、れっど、ア、んッ!」
「すごい、ナカ、うねってるみたい……気持ちいい癖に、いつもは嫌だって言うのにさ」
「だって、こんな……の、ヘンだ、から!あ、ァ……」
変だとは思わないので、構わず吸ったり舐めたりを繰り返す。以前と比べてそこは少し触れただけで声を上げるほど反応も良くなったし、突起を中心に薄く色づいてぷくりと膨れているので確かな変化を感じる。だけど、変なんかじゃない。だって、彼をこんな風にしてしまったのは他の誰でもない、自分なのだから。
空いた手でもう片方の飾りも指先で引っ掻いたり摘まんだりすれば、耐えきれないのかレッドの背に回されている腕の力が強くなった。
「や、ぁ!も……だめ、だめ、また、ぁ!」
「また、イっちゃう?」
意地の悪いことを言っても、嬌声を上げるだけで反抗はしてこない。喘いだまま腰が揺れているので快楽を探るのに必死なのだろう。
「ん、んッあ、ン!やだ、ッやだ、あ!あ、ァッ」
びくびくと震えて、再び彼が達したのだと分かる。余韻で震えている体には申し訳ないが、間を置かずに腰を抱えなおして再び奥を突いてやる。
「なに、なんで……!? 待っ……て、いま、イったばっかり、で…や、やら、ァ…んッ!」
「ごめん、ちょっと我慢できない」
間近で恋人の痴態を見せつけられ(自分のせいだが)、抑えていられるわけもなく。
どちゅどちゅと肉と肉がぶつかる音が響く。気持ちいいだとか、好きだ、とか。大事なことだけれども、そんなことを考える間もなく目の前の彼と一緒にどんどん快楽に溺れていたかった。
「奥、おくッ、ッ!すご、い……きて、る、ッいつも、より、ぁ、ア!奥、あたって……」
「ん……あつくて、とろとろで、……気持ちいい、ね?」
ふいに、グリーンがレッドに顔を寄せてくる。熱に浮かされた視線から伝わるものは一つ。
「はぁ、あっあん、んァっあ、れっど、すき、すき」
彼の声に応えるように腰を打ち付けながらキスをして、体のいろんなところから繋がって、溶けて、離れられなくなる。本当に、どうして人って一つになれないんだろう。
絡まる舌が名残惜しそうに離れると、糸を引いた彼の口がゆっくりと動いた。
「んっん、ぅん、ン……ぁ、ナカ、いっぱいに、欲しい……ずっと、寂しかった、から、ぁ」
目の前の涙が浮かんだ目が、自分ではないもっと遠くを見ている気がした。きっとまた離れてしまうんだと言う不安が、彼をそうさせてしまっている。
「いいよ、ッ……いっぱい、あげる。ぜんぶ、ぜんぶッ君の、だよ」
「レッド、あ、ぁ!はや、く、ン!あ、アん、あ、―――ッ、~~~ッッ!!」
どくどくと脈打ち、グリーンのナカに熱を注ぎ込む。それを満足そうに受け止めてから幸せそうに頬をすり寄せてくるので、目の前の恋人をレッドは強く強く抱きしめた。