【7月1日(火)】
今日から日記をつけることにした。
月の初めで区切りが良いのと、そろそろ次期代表の自覚を持って日々の記録を付けてほしいとイグニスから日記帳を貰ったから。
とりあえず初日だし、今日はこの辺で終わる。続けられる気が全くしない。
【7月2日(水)】
とりあえず3日は続ける。今日も疲れた。眠い。
予定がなけりゃ家で一人だし、書くことねーわ。
【7月3日(木)】
親父と話す機会が昔以上に減った。あっちも忙しいし、俺も俺で環境が変わってきて毎日バタバタしてる。
もう30になるってのに。先のことなんて考えたくねーって愚痴ったらグラディオに軽く殴られた。
【7月4日(金)】
日記をつけ始めて4日目。面倒になってきたし3日坊主でいいかと思っていたが、続けることにする。
日記のネタが出来たから。でも今日はもう眠い。明日休みだし、続きは明日書くことにする。
【7月5日(土)】
昼過ぎに目が覚めた。リビングに行くと金髪の少年(といっても高校生ぐらい)がソファに座っていた。
昨夜道端で拾った奴。拾ったというか、倒れていたから連れて帰ったんだけど。
辺りの様子を見るに、どうやら近所の不良どもにやられたらしい。制服姿のこいつはボロボロだった。
見つけてしまったものは仕方がないから家まで送ってやろうかと思ったが必死に拒むもんだから連れて帰った。
男だし別にいいかと思って適当にソファに投げ捨てたけど、生きてるみたいだ。
にしても、こいつ全然喋らねー。とりあえず名前は教えてくれた。プロンプトだそうだ。近所の高校の1年生らしい。制服を見るに、嘘はついていない。
俺も名前を教えると何故か驚いていたが、理由までは言わなかった。別になんだっていいけど。
家に帰りたがらないし、俺も暇だったから気まぐれで好きなだけいていいと伝えた。
でも、もしかしたら家出少年かもしれないし、落ち着いたら警察に連れてくかなんとかしよう。
【7月6日(日)】
プロンプトは全然帰りたがらない。それどころか俺から離れない。
理由は話さない。つーかこいつ口数が少ない。
帰りたくねーのって聞いたら、好きなだけいていいって言ったと言われた。根性座ってんな。
親も心配してるだろっつったら親は仕事でいないとのことだ。学校のことを聞いたら黙った。
極端に落ち込んだ姿がなんとなく可愛かったから頭を撫でたら、めちゃくちゃ照れてた。ガキだ。
子犬みたいなこいつを追い出すことも出来ず、学校もうちから通っていいなんて言ってしまった。
何故こんなにプロンプトに甘くなってしまうのか分からない。
イグニスになんて説明するかな…。
【7月7日(月)】
今日は俺も仕事があったから、朝プロンプトより早く家を出た。わざわざ玄関まで見送りに来たから帰りたくなったら勝手に帰っていいとも伝えておいた。
けど家に戻るとやっぱりプロンプトはいたし、のんきにゲームなんかやってた。しかも俺がプレイ途中のやつ。
もうどうでも良くてソファに寝転がってたらプロンプトが夕飯を用意してくれた。置いてくれているお礼なんだとか、律儀なやつだ。
お世辞には美味しいとは言えないカレーだった。でも手料理なんて食べたの久しぶりだったし、うまいと伝えたらまた照れてた。
プロンプトには空いてた客室を使わせてやることにした。今までソファに寝かせてたけど、どうやら学校帰りに着替えとか自分のものとか持ってきたみたいだったから部屋も必要だと思った。
ペット飼うって大変だわって言ったら、なぜか怒られた。犬みたいなもんだろ。
犬じゃなくてチョコボが良いと言われた。最近流行の黄色い鳥のキャラクターらしい。少しプロンプトに似ていた。
【7月8日(火)】
寝坊しそうだったが、プロンプトが起こしてくれたおかげで遅刻しないですんだ。家に自分以外の人間がいるというのは、案外いいことなのかもしれない。
朝飯もプロンプトが用意してくれるようになった。トーストと目玉焼きとコーヒー。普通のメニューだが、他人が自分の為に用意してくれたご飯ってけっこううまい。
家に帰ってからは、プロンプトとゲームしてた。こいつとはゲームの趣味が合う。俺の方が上手いけど。
そういえば、明日イグニスとグラディオが家に来ることになった。
プロンプトのこと、どう説明するか。
そういえば、夕飯はオムライスだった。ケチャップでへたくそなサボテンダーが書かれていた。
【7月9日(水)】
昼の内にプロンプトに夜友人を二人家に連れてくると連絡しておいた。
家に帰るといつも出迎えてくれるプロンプトはいなかった。部屋に引っ込んでたんだろう。
久しぶりにうちに来たイグニスとグラディオは部屋が綺麗ということと自炊をした形跡があることに驚いていた。相変わらず失礼な奴らだ。
三人で飲んだのは数か月ぶりだったから、つい騒いでしまった。
二人が帰った後プロンプトの部屋をのぞいたが、もう寝ているようだった。
俺も眠い。明日起きられる気がしないけど、プロンプトが起こしてくれるだろう。
【7月10日(木)】
朝起きてぞっとした。時計は10時を過ぎていた。
慌てて起きてプロンプトが起こしてくれなかったことに少し怒ったが、よく考えるとそれって変だ。起こしてくれと頼んだわけじゃない。
リビングに行ってもプロンプトが朝食を食べた形跡が無かった。おかしいと思って部屋をのぞいたら、まだベッドにいた。
プロンプトも寝坊かと思って起こそうとしたら、顔は真っ赤だし汗がひどかった。顔に手を当てたら熱かったし、けっこう高い熱が出てたんだと思う。
体温計なんて無かったし、病院に連れていこうにも保険証やら何やらなんて無かったから、自分で看病することにした。イグニスには熱が出たから休むと言っておいた。
次期代表がこんなでは親父にも申し訳ないが、プロンプトが無事ならそれでいい。
夕飯は、久しぶりにカップ麺を食べた。どんな味だったか覚えていない。
プロンプトにはインスタントのおかゆを作った。元気になったら、うまいもんでも食わせてやろう。
【7月11日(金)】
プロンプトのこともあって、今日も会社を休んだ。イグニスの許可もとったし、問題ない。
体調を崩していたことについては素直に謝った。何もしてやれなくて悪かったって。
プロンプトは自分は置いてもらってる立場だから気にしてないと言っていたが、俺だってプロンプトに出て行ってほしくない。もう追い出そうなんて思ってないし。
たかだか16そこらの、しかも男にこんなに執着してしまうとは思わなかった。
あまりにもプロンプトが弱々しく笑うんもんだから抱きしめてしまったし、正直恥ずかしさしかない。
でもその後、はじめてノクトって呼ばれた。書いてなかった気がするが今まではチェラムさんって呼ばれてた。
プロンプトはやっとノクトって呼べたと言っていた。今まで遠慮してたってことなのだろうか。
今日は食べやすいものが良いと思ってシチューを作った。煮込むだけだと思ったのに案外難しくて焦がしてしまったが、プロンプトが笑っていたので良しとする。