例の店への出勤時間が近づき、カミュはイレブンが「今日は寒いから」と渡してくれた少し大きめのコートを羽織って店へと向かっていた。
到着するとすぐに着替えるよう指示され、一度宿で試着した衣装を荷物から取り出す。これを着て人前に出ることにやはり抵抗感はあるが、見れば他のキャストも同じ衣装を着ていた。この仕事に手を出す人間が他にもいるのだと勝手に安心感を抱きつつ、カミュはなるべく無心になりながら衣装を身に着けていった。
一日だけの単発勤務のカミュには指名客がいないので、怪しいピンク色の間接照明で灯された薄暗い店内を適当にまわったり飲み物を運んだり、という仕事が与えられた。それぞれの席には大きな壁のような仕切りがあって中の様子ははっきりとは窺えないが、開店して間もないというのに声と気配から店内がそれなりに賑わっているのが分かる。
当たり前ではあるが、客も店員も全員男だ。こんな場所にイレブンをやらずに本当に良かったと思いながら通路を歩いていると、ふいに尻へ違和感を感じ「ひぁんッ」と声をあげてしまう。見れば、通りがかった席から身なりの良い男が腕を伸ばしてカミュの尻を揉んでいた。
「きみ、新入り?」
薄暗くて顔はよく見えないが、高級そうなソファに座った男が尻を揉みながら話しかけてくる。それに頷くと尻を揉んでいた手がわざとらしく移動して、その奥にある窄みを探るように撫でると衣装の上からぐっと指を押し込んできた。
「んっ、おきゃく、さま、ぁ……。ご注文はお決まりです、か?」
カミュは我慢をしながら、なんとか声を絞り出す。普段ならばイレブン以外の男にこんなことをされたら殴り飛ばしているところだが、今はそうもいかず無心になり耐える。そうしていると聞いたことのない名前の飲み物を注文され、解放されたカミュは足早にオーダーされた飲み物を用意するために店の奥へと引っ込んだ。
重い足取りでオーダーされた飲み物を運ぼうとした時、店主がカミュを呼び止めた。
「あんた運がいいな。早速あの人に気に入られるなんて」
先程のやり取りを見ていたのか、店主は腕を組んだままニヤニヤと笑みを浮かべている。いかにも金の匂いがすると言いたげな店主に、カミュは溜息をついた。
「……あいつ、そんなに偉いやつなのか?」
「この街じゃ一番の富豪だ。時々しかここには来ないんだが……絶対に粗相はするなよ。本番以外の注文は全部受けろ、報酬は弾んでやるから。あんたにとっても、悪い話じゃないだろ?」
上機嫌な店主を背に、カミュはホールへと戻る。店内は開店直後よりも猥らな声が聞こえてくる様になり、各テーブルで何が行われているのかつい考えてしまう。のんびりしている場合ではないと雑念を払うために頭を振り、カミュはオーダーの入った席へと向かった。
戻った先で、カミュは男が注文した飲み物のグラスを二つ置く。一体なんなのか分からないその飲み物はどうやらアルコールのようではあるが、黄色のようなピンク色のような、変わった色をしている液体だった。
客から隣へ座る様に言われ大人しく従うと、隣から肩を抱かれた。更に一緒に飲むように言ってきたのでカミュもグラスに口を付ける。甘いのか苦いのかも分からず、ただ言われるがままに喉を上下させた。
男は飲みながら中身の無い世間話をはじめたので、カミュは肩を抱かれた体勢のまま適当に相槌をしていた。店主が「本番以外の注文は全部受けろ」などと言うものだから身構えていたが、結局はただのエロ親父だと思い相手をする。しかし、肩を抱いていた手がゆっくりと身体のラインをなぞる様に降りてくる。太ももの内側を撫でられたかと思えば、肩を抱きなおす振りをした手が腋に差し込まれ、そこから伸ばされた手が胸を揉んできた。
「ん……っ!」
ふいに訪れた刺激に小さく声を漏らしてしまい、それを聞き逃さなかった男は透かさず衣装からはみ出ているカミュのぷっくりと膨らんだ乳輪をなぞってきて、それだけでもっと声が溢れてしまう。乳輪への刺激のせいで乳首はすっかり勃起しており、布地を押し上げてその存在を主張していた。それを衣装の上からコリコリと引っかかれ、つい腰を揺らしてしまう。力が抜けている肩を抱き寄せながら男がカミュの胸を激しく揉む。そのせいで衣装がずれてしまい隙間からピンク色の尖った乳首がのぞき、横を通りかかる他の客やスタッフ達にもカミュの痴態を見ている者がいた。
ついに男は衣装をずらし隙間から手を突っ込んできて直接触れてきたかと思えばカミュの生乳首を摘みながら押し上げるように胸を揉みはじめた。
「や、ぁんっ……♡」
息を荒くしたカミュはただ耐えることしかできなかった。限界が近いことは男にバレており、苦しそうにしている太ももの間をするりと指で撫でられる。ふるりと小さく体が震えた瞬間には、衣装に染みを作ってしまっていた。
「おっぱい気持ちいいんだね?」
達してしまったカミュの耳元に向かって男はしきりに「かわいい、かわいい」と囁いている。カミュはそれを聞き流しながら、ただ時が過ぎるのを待つしかなかった。
男はカミュはの太ももを撫でまわすと内側に手を伸ばし、その中心の衣装を引っ張ってズラし始める。ぴょこんと顔を出した可愛らしいペニスの先端をくりくりと弄りながら胸を揉むことにも夢中になっている。ふとカミュが別の席へ視線を移すと、客の膝上に乗り上げて腰を振っているキャストや、テーブルに手をつき尻を上げたキャストの後ろから腰を打ちつけている客が見えて、唖然とした。
(本番は無しじゃなかったのかよ……)
自分もあのキャスト達と同じようなことをしなければならないのかと思ったが、店側からは強制はされていない。客の要望はなるべく聞けと言われただけだ。嫌だったら断ればいい。幸いなことに、今のところキスも挿入も求められていない。いやらしく触られてイかされるぐらいなら耐えられると思っていたところで、男が通りかかった店のスタッフへチップを渡している姿が見えた。何をしているのかと窺っていると、チップを受け取っていたスタッフがシルバートレイに乗せた何かを男に渡していた。
それは凶悪な見た目のディルドだった。注文したものを手に取った男は迷うことなくカミュの目の前へと差し出すと恐怖で固まる体をソファへと寝かせ、膝を持ち上げると足を大きく開かせる。更に双丘に食い込んでいる部分の衣装をズラし、縦に割れている窄まりを露わにさせた。怯えて震えているカミュの姿を見た男は期待に疼いているのだと勘違いしたのか、媚びるようにヒクヒクしているそこへと先端を宛てがった。
「ぅ、やぁ……ッッ♡」
男は懐から重そうな袋を取り出すと、ジャラ……と音を立てながら袋の中の金貨をカミュへ見せてきた。店主がオプションを追加される度に報酬に上乗せがあると言っていたことを思い出す。これだけあれば旅の資金だけではなく、次に装備を新調する時も困らないだろう。
「本当は初日の子にこんなことしたくないんだけど、君がとてもかわいいから悪いんだよ。だから、いいよね?」
勇者様の眩い笑顔を想像して、カミュは無意識のうちに頷いてしまっていた。
先端をずぷりと入れられただけでカミュはアクメしてしまう。男は「えっちだね」「イってる時の顔かわいいよ」「はやくちんちん欲しい?」と次々に下品な言葉をかけてきた。嫌なはずなのにどんどん体中が熱くなっていって自分の体に異変を感じたカミュは、このテーブルについた時に飲まされたものを思い出す。
(くそ、あれか……)
迂闊だった。ただこちらを酔わせようとするだけの酒だと思っていたのに、実際はそれだけではなかったらしい。意識してくると本格的に全身が火照り始め、どこを触れられてもびくびくと反応しながら喘いでしまう。
「ぁ、はァっあん、ンんぁ、っあ、ぁン♡あっ、ぁあー……ッ♡」
男はローションを纏わせたディルドをぐぽぐぽと挿入しながら何度も「気持ちいいか」と尋ねてくる。もはや頭が回っていないカミュは「イレブンの方がきもちぃ……♡」と口走ってしまった。知らない名前が出てきたことに腹を立てたのか、男は更に奥深くを犯すように抽挿を繰り返す。
「あ、ああ゛っ♡ぁんっ♡やだ、ぁッ、これいや、やらぁ♡偽ちんぽ、いやぁッ!イレブンのちんぽがほしい♡こんなのじゃ、やぁ、ぁッ♡」
男は「彼氏の名前を出すな」と怒鳴りながら媚肉を犯してくる。そのまま上から覆いかぶさってきたかと思えば、つん♡と上を向いた乳首を執拗に舐めてきた。仰け反ったカミュが射精すると、男は満足そうに金貨の入った袋を掴んでジャラジャラと音を響かせた。
そのまま何度も好き勝手に弄ばれた。ディルドの抽挿でカミュがぴゅっ♡ぴゅっ♡と潮を吹くたびに男がテーブルに金貨を重ねていく。
「またイってるね、えっちなこと好きなんだ?」
「ちが、うぅ、……あっあ♡っあ、やァ、ッあ、あん♡ぁ、あ゛ー――……♡」
本当は今すぐ逃げ出したいのに、積まれていく金貨を見ると止めてくれとは言えず抵抗することも出来ない。大好きなイレブンのため、愛しい勇者様のため。そう思えばなんだって耐えられる気がした。
「ああ、本当にかわいい。連れて帰りたいな……」
男がとんでもないことを口走り、カミュは血の気が引いていくのを感じた。なのに腰は勝手に動き、甘い声を出してしまう。
もう、どれほどの時間を好き放題に扱われたのだろう。虚ろな目で覆いかぶさって来る男を見上げるとごそごそと何かを取り出そうとしている様子に気が付いて、カミュは慌てて重たい体を起こした。
カミュが何かを言う前に、男はぼろんとそそり勃った性器を取り出していた。それだけはやめてくれと無言のまま首を横に振るが、男はカミュの言う事など聞きそうにはなかった。
「ッや、やだ、やだ!それに、ここでは駄目だって言われて……!」
「だから、君が頷けば許されるんだよ。他の客たちもやってるだろう?」
他の席で本番行為が行われているのは、キャストの了承を得た場合なのだろう。店主が「基本は禁止」だと言っていた意味を理解し、カミュは項垂れる。その分チップを弾まれているのだろうが、どうしてもそれだけは受け入れられない。
(そういう、ことだったのか……)
肩を押され、再びソファの上に寝かされる。男の荒い息が上から降って来て、カミュは今にも泣いてしまいそうだった。
「君もどうせ金に困ってここで働いてるんだろう?」
ぐちゅ、と先走りで濡れている先端を無意識に媚びる後孔へと押し当てられる。
――もう、どうにもならないのか。そう諦めかけたところで、男の動きが止まっていることに気が付いた。
「お客様、閉店のお時間です」
顔を上げると、店主が客の手を掴みその動きを制していた。続きをするなら上へ行くように伝えている間に、カミュはテーブルに積まれている自分のチップを掴むと店の奥へと逃げ出した。
* * * * * * *
薄暗い更衣室で肩を抱くようにしてうずくまっていると、店主が報酬の入った袋を渡してきた。カミュは素直にそれを受け取るが、客の要望を蹴ったのにも関わらず咎められなかったことに不信を抱く。
「……いいのか、あのおっさんの言うこと聞かなかったのに」
「今夜はもう充分過ぎるほど稼いだからな、逆に感謝してるぐらいだ。それに、閉店後に好き勝手されたらこっちも困るんだ」
そういうものなのかとカミュは受け取った袋の中身を確認する。チップと合わせて、これだけあればしらばくは金に困ることは無さそうだった。勇者の喜ぶ顔を想像して、カミュの張り詰めていた表情が綻んでいった。
「ああ、あの客はまだあんたを探してるようだから続きがしたけりゃ一緒に上へ行ってもらって構わないが」
死んでも行くものかと、カミュは頭のうさみみバンドだけ外すと他は着替えることなくコートを羽織って店を出た。
はやくここを離れて、イレブンのもとへ戻りたかった。安心するぬくもりに包まれたかった。疼いてやまない体の奥を、大好きな熱で満たしたかった。