(カミュ視点)
オレの世界は、いつも月も星も無い夜のようだった。
暗闇の中で進んでいるのか戻っているのか分からない道をただひたすらに歩き続ける。目的地ははっきりとしている。なのに、オレはそこに辿り着けない。例えるならば、そんな世界だった。
だからなのか、真っ暗な独房に現れた輝きを失っていない男が現れた時、オレは確かな光を見たと感じた。会ったばかりで名前も知らない男を牢から連れ出し、「こいつならオレをこの暗闇の中から引っ張り出してくれるかもしれない」と頭の中をよぎる。それは、その男が単に自分は勇者だと名乗ったからではない。確かにオレの運命は勇者が握っているらしいが、それ以外の光を宿していたのだ。
勇者と名乗る男の大きな目を見たとき体中を走るぞくぞくとした感覚に覆われて、出会ったばかりだというのにオレは「死ぬときはこいつと一緒がいい」なんて思ってしまっていた。
徐々に勇者だと名乗るイレブンがどういう男なのかを知っていった。基本は無口で無表情だが芯が強く戦闘の心得もあり、だけれどたまにやや幼く笑う。話を聞いているとどうも世間知らずなようではあるが、同性で年も近いからなのか気兼ねなく話も出来る。それに、何よりイレブンは何に対しても素直な男だった。影も穢れも一切感じさせない姿には純粋と言う言葉を通り越し、人間ではない別の生き物ではないのかと思わせてくる程だった。オレは、いつの間にかそんなイレブンに惹かれていった。
オレたちは短い期間の中でかなり打ち解けてきただろうと思っている。なのにどうしてか、最近イレブンの様子がおかしい。なかなか目を合わせなかったり、いつも以上に口数が少なかったり。避けられているとまでは思わないが、オレに対して何か気を遣っているような、壁の様なものを感じた。
「おい、言いたいことがあるんならはっきり言えよ」
旅の道中、草原のど真ん中でしびれを切らしたオレは、つい強め口調で思っていたことをそのまま口にしてしまった。
しまった、と思った時はすでに遅く、顔を青くしたイレブンは何かを言いたげにしてはいるが何も言わない。風が頬を撫でる感覚すら煩わしく感じるほど、オレはイレブンのことしか考えていないと言うのに。オレの言葉に項垂れてしまったイレブンの姿を見て、ついため息をついてしまう。
「別に言いたくないなら良いけどよ。お前はもっと、オレのこと信頼してくれていると思ってた」
違う。こんなことを言いたかったわけじゃないのに。
そう思ってももう遅い。悲しそうな顔をしたイレブンが、縋るような視線をオレに向ける。
「ち、ちがっ……!」
その視線に耐えられず先を行こうと前を歩こうとした時、イレブンはオレの腕を掴んだ。咄嗟のことに体のバランスを崩し、そのまま後ろへと倒れてしまう。視界に空が広がってはいるが、背はまったく痛くはない。見れば、イレブンがオレを抱えて下敷きになっていた。
「カミュ、だいじょうぶ……?」
頭上から心配そうな声が聞こえてきて、オレは慌ててイレブンの腕の中で身を捩り様子を確認した。よかった、見たところ怪我は無さそうだ。
自分のことよりも真っ先に他人を気遣う姿に胸が痛む。オレは、オレは、こんなにも自分勝手だと言うのに。
「……わるい、イレブン。オレは平気だけど、お前は」
「うん、僕も大丈夫」
へへ、と少年のように笑う表情が眩しくて目を奪われる。なのに、どうしてか。顔が熱くて、視界がぼやぼやとして定まらない。
イレブンは上半身を起こすと、オレの服についた葉っぱを手で払いながら不安そうに眉を下げた。
「もしかして、本当はどこか痛かったりする?」
まっすぐ見つめられて、何もかも見抜かれているような感覚になる。はやく、ここから抜け出さなくては。
「いや、何もない、大丈夫だから……」
オレは慌ててその場に立ち上がると、不思議そうにオレを見上げる勇者様に向かって手を差し出した。
手が触れ、握られる感覚を心地良いと思うのは何年ぶりだろうか。そもそも誰かに触れることなんて……と考えていたところで、立ち上がった後もオレの手を掴んだままのイレブンと目が合い、咄嗟に逸らしてしまった。
「カミュ、さっきはごめん。君は何も悪くなんかないんだ。僕が、僕が……ダメなせいで」
イレブンのオレの手を握る力が強くなる。逃がさないと言われているようで、うまく顔が見られない。
オレばかりが、イレブンを意識している。もし、お前がいなかったら。お前がいなくなったら。オレは――――。
「お前はダメなんかじゃ、ないだろ」
頭がまわらない理由が分からない。イレブンの「聞いて」という優しい声が聞こえて、それに従ってしまう。
「ごめん、ごめんね。僕が、君のことを好きになってしまったんだ」
…………今、イレブンはなんて言った?
好き。確かにそう言った。聞き間違いなんかじゃない。見上げれば、照れくさそうに真っすぐをオレを見る二つの澄んだ目があった。
(イレブンが、オレを好き。マジか。マジなんだな……)
オレはと言えばイレブンからの「好き」を聞いて頭も体もおかしくなっていた。まとも考えられないし、妙にそわそわしてしまって仕方がない。
出会った時から感じてはいたが、この勇者様は見ていると不思議と庇護欲が湧いてくる。妹とは違う、別の危うさと愛らしさがあるのだ。だと言うのに、稀に男らしい一面や戦闘中には凛々しさを見せてくるときもある。世間知らずなわりに上品さを感じさせるのは、その立ち振る舞いからだろうか。無口であるのに人懐っこく、警戒心も薄い。だけど、オレにだけは信頼と、それ以上の感情を向けてくれている。その事実は何よりも嬉しかった。
その時オレは、自分がイレブンに対して抱えていたものがなんだったのかをようやく理解した。そうか、オレもお前のことが好きなんだ。
だけれど、だとしても、なんだというのだ。二人の気持ちが通じて、それで世界が救われるわけでも妹が助かるわけでもない。オレは自分の幸せの為に旅をしているわけではない。
徐々にイレブンの視線が澄んだものから不安そうなものに変化していき、それに気が付いた時には「いいぜ」と返事をしてしまっていた。
* * * * * * * * * *
一体、なにが「いいぜ」なのか。自分で言うのもなんだが、やけに上から目線の返事だ。
案の定イレブンも戸惑っており、「い、いいって何が……?」と訊き返される。オレは内心慌てていたが、普段から身についている癖のせいでつい余裕ぶってしまった。
「お前はオレのことが好きなんだろ? オレもお前のこと嫌いじゃねえし、どちらかと言えば好きな部類だ。だから、付き合ってやるよ」
人は、色恋の類になると途端に素直になれなくなると言う。その理由など考えたことも無かったが、ようするに“怖い”のだと気が付いた。拒絶されるかもしれない恐怖を真正面から受け止めたくないが故に、いつも以上に心を胸の奥底に隠してしまう。怖いと感じるのはオレも例外ではない。今はオレのことを好きだと言ってくれるイレブンも、世間を知ればオレより好きだと思える人と出会うかもしれない。不安な日々の中で唯一傍にいるオレに依存しているだけかもしれない。いつかオレのことなんて、忘れてしまうかもしれない。
だけれど、明るいことばかりが思い浮かぶわけではないが胸の内を打ち明けてくれたことは嬉しい。イレブンがオレに求めているものが何かは分からないが、それには応えたいと思った。
「そう言って貰えてうれしいけど……僕はその、君としたい、と思ってて」
おっと、そうきたか。目の前の純朴そうな男が放った『したい』という言葉の意味を考えるのに、体感以上に時間を要した気がする。
「したいって、何を?」
そう言えば、イレブンとはしばらく一緒に過ごしているが純朴そうなわりにぱふぱふに興味を示している姿があったことを思いだした。勇者様だって16歳の立派な男だ、そういったことに興味があってもおかしくはないだろう。とは言っても、こいつが興味を持つのはあくまでも女の身体で男のそれではない。オレの薄くて触れても気持ちのよくない体には用も無いだろう。
だからなのか、どうせオレとしたいと言ってもキスだとかその程度だろうと高を括っていた。
「だ、だから……」
オレからの問いに口ごもるイレブンに痺れを切らし、オレは自ら目の前の男にキスをしていた。一瞬唇を重ねただけだが、ここで満足そうにしていればオレの予想は当たりだ。オレに対するものは、ただの未経験のものへの興味。ただそれだけ。オレ自身に興味があるわけではない、と。
だけれども、イレブンは予想外の反応を示した。ほんの一瞬のキスだと言うのに慌てふためき後ずさり、その様子にオレはつい声をあげて笑ってしまった。
「そんなんでどーするんだよ、オレと“シたい”んだろ?」
オレだって大した経験があるわけではない。よもや男との経験などあるはずもなく、この先のことなんて知識の中でしか知らない。きっとオレと同レベル程度の感覚のイレブンをもっと揶揄いたくなって、イレブンの表情を窺いながらオレは腕を組み愛しの勇者様へと詰め寄った。
「ちなみに聞くけど。お前はオレに入れたい?入れられたい?」
半ば冗談のつもりで訊いたのにイレブンがあからさまに動揺した態度を見せるので、ついオレも釣られそうになる。
「その…………できれば、い、いれたい……です……」
どんどん小さくなる声に、まるでオレがこいつを虐めている様な感覚になる。性的な視線を向けられることの驚きよりも「そこまで考えてたんだな」という関心の方が強い。それに、純粋に自分を求められることが嬉しい。
とりあえず真っ赤なままのイレブンを落ち着かせようと髪を撫でると思ったよりもさらさらとしていて、絹の様な触り心地に絡める指が止められなくなった。
「よく言えました。……運命の勇者様のお願いだからな、聞いてやるよ。数日待ってくれればお前の相手してやるから」
別に、何かの確証があるわけではない。オレの光であるイレブンがオレを求めるならそれに応えてやりたい。ただ、それだけだ。
不安そうにオレを見つめる様子に腹の奥がきゅうと反応した。オレ、いつの間にこんなになっちまったんだろう。
「……心配するなって。お前はなーんにも不安に思うことなんかないから。だからイイコで待ってろよ?」
* * * * * * * * * *
あれからオレは、イレブンの目を盗んでは勇者様の願望を叶えるための準備を行っていた。
一人になる時間なんて風呂か用足しの時だけだ。イレブンもオレが待てと言ったからか手を出してこなかったのが幸いだが、若干寂しくはある。悪戯のつもりで距離を詰めたことがあったが、真面目な勇者様は惑わされたりしなかった。
宿に泊まる時には「今日は疲れてるから」なんて言えば部屋に備え付けのバスルーム(割高の宿になるが仕方がない)に籠る時間が長くなっても追及などされなかった。心配になる程どこまでも素直な男だ。
イレブンには別のことをしていると悟られないよう、シャワーを浴びながらバレない様に購入したローションを指に纏ってみる。買ったのも使ったのも初めてだったが、まだ何もしていないと言うのに妙に心臓がばくばくとうるさくなる。
オレじゃない、イレブンの為。何度もそう自分に言い聞かせ、意を決して自分で触ったことなどない箇所へ指を添える。つぷり……と人差し指を第一関節ほどまで押し込むと、何とも言い難い感覚が全身を襲った。
(指一本でこれか……あいつのサイズなんて知らねえけど、大丈夫なのか?)
今のところ不快感しか感じない。これを続ければイレブンのものを挿入ることは可能になるのだろうか。何も分からないが、やってみるしかなかった。
何度か同じようなことを続けていく内に、不快感は薄れていった。指もすんなり入る様になってはいたが、自分への快感などは全くない。イレブンを受け入れられさえすれば良かったので気にはしていなかったし、そもそも男同士でするような行為ではないのでこんなものかと割り切っている。
だけど、ある時ナカで指を動かしていると一瞬だけ電気が走ったような、びりびりとした感覚があった。
(な、なんだ……?)
恐らくここ、という場所をもう一度指先で擦るとやはり普段とは異なる感覚が走る。今まで感じていた不快感などではない、もっと、違う何かだった。
わけも分からず何度も同じ箇所を触れていると太ももの間から自身が反応しているのが見えた。ゆるくではあるが、目に見えて主張しているのが分かる。
見れば、胸にも変化が起きていた。二か所とも、はっきりと分かる程に色付いてぴんと立っている。湯と空気に触れているから、なんて説明では追いつかない。なんで。今までこんなことなかったのに。
(やばいな、……声、出そうになる)
部屋で寛いでいるはずのイレブンに悟られぬよう、シャワーの音に紛れるようにハア、と深い息を吐く。抑えても漏れる小さな声が自分のものではないような気がして全身が熱くなる。湯のせいなどではない。
ほんの興味のつもりで、空いている片手で胸の先へ触れている。ふに、と押しつぶす様に触れ硬くなった先端を指で弾くとより一層快感が高まった。
「ぁ、ん……っ」
今まで自慰行為なんて何度もしたことがある。だけど自分が、前を触らずに、声が出るほどに、こんな風になるなんて知らなかった。
(いれぶ、ん……いれぶん、欲しい、はやく、はやく)
はやく、こんなこと終わらせないと。あいつのことを考えると、どんどん自分が変わっていく気がした。
そう思いつつも手は止まらず続けてしまう。濡れた前髪が視界を覆うのなんで気にならないぐらい、オレはそれに夢中になっていった。
* * * * * * * * * *
自分の身体がおかしくなっている。そう気が付いた時にはもう遅かった、ように思う。たった数度の今までとは違う自慰でこんなになるものなのか。他人と比べるようなことではないので分からないが、オレはとにかくイレブンとの関係を進めたくて仕方がなくなっていた。
ついにその日、シャワー中にのめり込み過ぎない程度に準備をしたオレは部屋で待つイレブンのもとへと向かった。今日はベッドが大きめの宿にして正解だった。二人で寝ても余裕がありそうだ。
ベッドに座っているイレブンの隣へ腰かけると、見てわかる程に反応していた。それを可愛いだなんて思ってしまうオレをおかしいのだろうかとは考えなくなった。
ただ、あまりにもイレブンはオレをじろじろと見ているので「すけべ」と揶揄うと顔を赤くしてしまった。少し膨れた頬をツンとつつきたくなる衝動をなんとか堪えながら、ふふ、と余裕そうに笑ってみせる。
「す、すけ……だって君が、そんな恰好で隣に座るから」
「だったらなんだ。意識して困るって?」
わざと寝間着を少し気崩しているわけだが、効果があったようだ。首を傾げるふりをして、よりイレブンの視界に肌が入る様にする。
「まーそうだよな。お前オレのこと好きなんだもんな。だから……」
今のままではイレブンからは動かない気がしたので、頬に触れるだけの簡単なキスをしてやる。リップ音が聞こえるほどの静寂の中で、お前は何を思っているのか。
「ちゃんと待てたごほーび、欲しいだろ?」
両手を広げ、おいで、と勇者様を迎え入れる体制に切り替える。はやく、はやく。オレにはもう、待てる自信が無い。
するとイレブンは勢いよくオレを押し倒すと何度もキスをしてきた。図体はデカいのに必死に甘えてくる小動物の様で、つい撫でてやりたくなる。
つい強がって「痕残したら殴る」なんて言ってしまったが、本当はそんなこと気にしてなんかいない。だってオレはもう、お前のものなのだから。
オレの言葉に大人しく従う勇者様は、痕が付かない様になのかキスをやめて首筋を犬のようにべろりと舐めた。食べられそうな勢いに、この体をすべて明け渡したくなる。
ヘンタイと罵れば不満そうに眉を寄せる表情も、甘えるように身を摺り寄せる仕草も、誰にも見せないでほしい。そんなこと、絶対に言えないのだけれど。
しばらくイレブンの好きにさせていると次は服を捲られ、胸元に触れてきた。硬くなった先端を甘味でも食べる時のように優しく舐められ、つい声が漏れる。
「あ、ッあ…」
自分で触るのと他人に触れられるのとでは、やっぱり何もかもが違う。普段よりも反応してしまう自分が信じられなくて身を捩るが、イレブンの手は止まらなかった。
気持ちいいと素直に言えればいいのに。でも、もっと欲しいものがある。
オレの胸を弄るイレブンの少し大きな手を太ももの間に導き、奥を撫でるように触れさせた。ごくりと生唾を飲む様子が見えて、つい目を細めてしまう。
「お前が欲しいのは、こっちだよな……?」
はやく、はやく。そう訴えかけてくる脳を無視しながらゆっくりと服を脱いでいく。自分だけでは恥ずかしさで死んでしまいそうなので目線でイレブンにも同じようにしろと伝える。
なんだかんだでお互いの裸なんて見せるのは初めてで、想像していたサイズよりも質量のあった勃ち上がっているソレに一瞬身体が固まった。だけども体の奥はあつくて、もう止まれないことに変わりはない。
イレブンがじっと見ている中、腰が砕けそうになるのを堪え自ら脚を開いて中心の更に奥へローションを纏った指を這わせる。ぬるりとナカを塗りたくり指を抜けば、そこがひくひくと疼いて仕方がなかった。
「もう準備できてるから。ほら、おいで」
直後、オレの脚を抱えたイレブンは怒張を押しあてながらナカを暴こうとしてくる。
(イレブンのが、おれのなかに入ってる……)
先端が収まったのかゆるゆると腰を動かしながら大丈夫かとこちらを心配してくる様子に愛しさが募る。
平気と返せば更に遠慮が無くなり、奥を突くようにピストンを繰り返している。痛みなどすっかり消え失せ、今では快楽にしがみつくことしか頭に無かった。
(おっきぃ、きもちい……なんだこれ、指と全然ちがう、おれ、どうなってるんだ……?)
すっかりセックスのことしか考えられなくなっているオレは、肉壁を擦る屹立のカタチを味わうように腰を振る。
「ん、あっ、ぁあ、ッそこ、もっと、ぉ」
もっと、もっと。もっと求められたい。全身から欲が溢れだしそうになる。
イレブンはオレが好いと言った箇所を何度も何度も突く。肌と肉がぶつかる音がこれは夢ではないと言っているようで腰が跳ね、ついには声が我慢できなくなってしまった。
「あっあん、ぁッ!あ、ん!んぅ、いれぶん、はァ、ん……、どう、だ……?」
自分のことばかりだと気が付き、イレブンはどうだ、と考える。
止まらない腰に耐えるようにシーツを掴む。ぼんやりする頭でイレブンの顔を見れば、上気した顔がしっかりとオレを捉えていた。
「もう、君のことしか考えられないよ……」
直後、腰を抱えなおされ先程より奥へ押し込まれる。
(そこ、一番奥……やばい、かも。でもおく、もっとほしい)
イレブンはぐり、と中を解しては挿注を繰り返し、更に押し込もうとしてくる。手を伸ばせばオレに覆いかぶさって来たので、そのまま半開きだった口に舌をねじ込んだ。そう言えば、イレブンとのちゃんとしたキスってはじめてかもしれない。
「ッいれ、ぶん」
「なに……?」
イレブンがすべて挿入った感覚があり、離したくなくて勇者様の広い背中にしがみついた。
「は、ぁ…好き、オレ、も、好き、ぃ……だからッこれから先、に、ぃ……何があっても、オレ以外に、ッコレ突っ込んだら許さねぇ、からな……ッ」
オレをこんな風に変えてしまった男を一生許さない。そう伝えたくて首を噛むと、ナカで更に質量を増したものに何度も突かれる。
「ん、あ!あ、あァっん、あ、や、ぁッ!」
耐えきれなくて勇者様の肌を思い切り引っ掻いてしまう。この傷はあと何個増えるのだろう。
「ッ僕が好きなの、は……、カミュだけ、だから」
イレブンの言葉の後、抑えきれない声と共にどくどくと中に注がれる感覚があった。同時にオレも腹の上に白濁を出し、意識を手放しそうになる。
うっとりとしたイレブンの表情を見上げて、これは夢ではないのだと確信した。