君のせいだよ - 2/2

(グリーン視点)

 自宅に戻ってから、グリーンは荷物を床へ投げ捨てるとまっすぐ寝室のベッドへと向かった。そのままぼすっと音を立てて倒れ込む。じっとしていると、まるで全身から力が抜けていくようだった。
 そしてゆっくりと目を閉じる。思い浮かぶのは、今日訪れたシロガネ山での熱にうかされたレッドの顔だった。
(あー、オレ……なに、やってんだ…………)
 ぎゅ、と膝を抱えるようにして、余計なことを考えないようにする。だけど、他に何をしようとしてもレッドの熱い視線が、声が、頭に張り付いて離れない。
 するといつの間にか、ゆるゆると片手が太ももの方へと移動していた。駄目だ、と思いつつ自分に逆らえず手は止まらない。気が付くとベッドの上で寝転んだままゆるく立ち上がった自身を取り出して、まだあの時の熱が残っているかのように感じる手でソレを扱いていた。
「ん、ッん……」
 電気もついていない真っ暗な部屋で、自分の小さな声とくちゅくちゅという水音だけが響いている。
(ダメだって分かってる、のに……手、とまんない)
 先走りでぬるぬると手が滑り、スピードが上がっていく。上がっていく息と指先のぬめりに、どんどん体が熱くなっていった。
「ぁ、あ……ン、あ!」
 絶頂と共に、びくびくと脈打つと手の中に熱を放った。はあ、と漏れる息があつい。さっきまでは、あんなに寒い所にいたはずなのに。
 
 
 グリーンがレッドのことを想いながら自分を慰めることは、これが初めてでは無かった。
 いつからだったか胸の奥の感情に気が付いてから、こうなるまではあっという間だった気がする。時々しか顔を見せない幼馴染と何気ない会話をしたりバトルをしたその夜は、決まってこの行為に没頭した。頭の中にあるのは昔から知っているあの姿と声だけだった。
 息を整え、今度は服を捲り胸へと手を伸ばす。女とは違って平らな箇所だが、指でなぞる様に触れていけばその中心は硬くなっていった。
(本当は、自分の指なんかじゃなくて……)
 ここにはいない人物の自分のものとは違う指を思い出しながら突起の先端を引っ掻くようにすれば、欲を吐いて萎えていた自身が再び熱を持ち始めた。きゅむ、と硬くなり始めた飾りを摘まむ度に全身に刺激が走る様だった。まだ足りない、ともう片方の手の指を口に含んで湿らせると、今度は下へと伸ばす。そこは熱を持った箇所ではなく、その更に奥の、自分の指以外誰も受け入れたことが無い所だった。若干の恐怖の中、そこに指をゆっくりゆっくりと入れていく。くちゅ、と音を立てながら、どんどん奥へと指を進めていく。
 普通なら狭いそこは、今ではある程度慣らしてしまえば指ぐらいであればすんなりと入るようになってしまった。その為、自分のイイところもはっきりと分かっている。それだけ、こんなことを繰り返してしまっているのだと自覚して情けなくなった。
 数本飲み込まれた指を曲げ、目当ての場所を探る。
「あ、ン!」
 一瞬掠めただけなのに、堪らず声が漏れてしまう。自然と仰け反る背中に反抗して、もっと……と、欲望のままそこを押しつぶす。
 更に胸に添えた手も一緒に動かせば、漏れる声が大きくなっていった。はじめは触っても何も反応が無かった場所だったのに、今では弄る度に中心が僅かな膨らみを持つほどになっていた。二か所を同時に触れる度、ますます抑えが利かなくなっていく。
(……レッド、れっどに触って、ほしいのに)
 今日あの時、あのまま帰らなければ触れてくれただろうか。思い描いたように肌を重ねてくれただろうか。答えなんて分からないことを考えてしまい、ただただレッドに触れられることを望みながら行為を続ける。
「ぁ、あっア……ん、れっど、れっど」
 射精後の戸惑ったようなレッドの顔を思い出すと、もう頭の中はそのことでいっぱいになってしまった。ぐちゅぐちゅという音が余計に頭と体をおかしくさせる。触ってもいない自身がしとどになり、シーツを汚していった。
「は、ぁん…あッん、ぁ―――!」
 そのままびゅる、と勢いよく熱が吐き出された。丸まっていた膝はぴんと伸び、全身からつま先まで小さく痙攣している。
(……こんなの、もう、やめなきゃいけないのに)
 先程まで熱しか感じなかったのに、途端にまるで雪山にいるように身震いがして、目の奥がじんと熱くなっていった。
 
 * * * * *

 夢が叶った、と言えば大げさかもしれないが、今自分を組み敷くレッドを見てそう思わずにはいられなかった。レッドとこの家の玄関でのことがあってから、すっかりこういった機会が多くなってしまっている。
 薄暗い自室のベッドの上で啄むように何度も顔にキスを落とされながら以前の自分のことを思い返していると、ふいにレッドが離れて口を開いた。
「なに、考えてるの」
「あー……、お前の、こと?」
 合っているようで、間違ってもいるような答えになってしまった。レッドは本当に?と言いたそうに、怪訝そうな表情のままこちらの服を脱がしにかかっている。
 レッドはまず、必ず胸に触れてくる。酷いときは吸い付いて離れない時がある。今日もそのようで片方は指で、もう片方は舌先で転がされている。少し触れられただけで硬さを持ち目に見えてわかるほど膨れるものだから困ってしまう。自分のせいだと分かってはいるのだが。
「ん、お前そこ、好きだよな、ぁ……」
「だって、グリーンの反応がよくなるから」
 ああ、そういうこと。と納得してしまい、反論が出来なくなってしまう。全くその通りなのだから、仕方が無いことだった。
「だからって……ッんあ、ぁっん」
 舌で弄られ濡れたそこは敏感になっていて、吸われるたびに声が抑えられなくなる。
「うぁ、ッや、らぁっあ、ン、ん!」
 触れられてもいない自身が勃ち上がっているのが分かる。ああもう、どうしてこんなことに。
 
「やっぱり、ここ好きだよね」
「あァ、ン!れっど、もッ……や、あ、!?」
 べろりと舐められて、途端に体が大きく震えた。自身の中心から熱が吐き出されたのが分かる。その事実の羞恥でまみれているであろう顔を隠したくて、思わず両手で覆った。そのまま仰向けになっていた体を背ける。が、どうやらそれは無意味の様だった。
「……そんなに、きもち、よかったんだ?」
 レッドの驚きを含んだ声に目の奥が熱くなる。肩を掴まれ、再び天井を向かされてしまった。濡れたままの萎えたものに触れられ、まだ余韻が残っている体がぴくりと跳ねる。
「すごいね…触ってないのに、こんなになってる」
「ばか、あほ……おまえ、あとで覚えて、ろ……!」
「そんな物騒なこと言わないでよ」
「くそ、こんな……、はずじゃ」
 ごめん、と言いながら頭を撫でられる。本当に悪いと思っているのかなんて、一目瞭然だった。無表情のようで若干にやついている顔を見て確信する。完全に主導権を握られてしまっている。
 そして、自分の負けず嫌いな部分が出てしまった。完全に余裕の態度をとっているレッドの胸を押して、今度はこちらが上になる。
「え、グリーン……?」
 無駄にでかくなってしまった幼馴染の体に乗り上げ馬乗りになり、見下ろす側の気持ちよさを知った。思い知らせてやる。
「お前ばっかり好きにしやがって。たまには好きにされる気持ちを味わえ」
 きょとんとしているレッドを置いて、こちらはこちらでやりたいことを進める。少し腰を浮かせて、先程自分が吐き出したものを指に纏わせた。
「いいか、絶対オレがいいって言うまで触ってくるなよ……」
「う、うん」
 こちらに釘付けになっているレッドの視線をなんとか無視して、ぐちゅ…と後ろに指を這わせていく。なるべくイイところに触れないようにしながら押し広げていくが、どうしても体が快感を求めてそこを触れようとしていた。
 
「ン、ん……く、ぅあ…あ、ん」
「……ね、ねえ、グリーン」
「触るなっつっただ、ろ…、う、ァ」
 こちらに触れようとしてくる姿を視線でいなして、どんどん奥を慣らしていく。そして、そろそろいいだろうかという頃になりレッドの屹立へと手を伸ばす。既にぬるりと滑りがあって、グリーンも堪らず息を漏らした。そこに入口をあてがいながら、ゆっくりと腰をおろしていく。
「オレのこんなところ見て、こんな……に、なってるお前も相当、だな」
「もう、なんとでも言ってくれ……」
「ああ……、ッあとで、たっぷり馬鹿にして、や、…るッ」
 半分まで入ったところで、残りを一気にずぷんっと奥まで咥え込んだ。はあ…と熱を持った息を吐く。レッドは何も言わぬまま、ただこちらを見据えているだけだ。
「そう、そのまま大人しくして、ろよ」
 膝を立てて、腰を動かす。自分の体重がかかり、普段よりも簡単に奥へと貫かれてしまう。その度にナカの壁が擦られて、力が抜けそうになっていった。
「あ、…ぁッアん、あぅ、ンっん、うぁ、あッ!」
 シーツの擦れる音も、打ち付けられる腰の音も、溢れる粘膜の音も、全てが脳を溶かしていきそうだった。
「…ッグリーン、ねえ、こんな……」
「いい、から…黙って、ろ」
 言われた通り大人しくはしているが、ナカにいるレッド自身は意識を持っているようにイイところを確実に突いている気がする。自分がそうなるように動いているだけのはずなのに、どうしてか相手に好きにされているようにしか思えなかった。
 
「なあ、あッぁ、ん…どんなッきもち、だよ……?」
 腰を揺らしながら訊くと、レッドは何かに耐えた表情のまま苦しそうに口を開いた。
「も、ずっと見てたい、かも」
「……ッは、随分ヨユー、じゃん」
 レッドの口ぶりに悔しいとは思うが、だんだんと思考が鈍くなってきているのが分かる。だけどレッドの敗北の顔が見たい。
「……レッド、――――ッ!?」
 どうすれば、と考えている内に突然下から刺激を与えられて、びくりと体が跳ねる。こちらの力が抜け始めているのを良いことに、レッドが腰を浮かせて直に突いてきていた。
「おま、えッ勝手に!」
「触ってないから、オーケーだよね…?」
 手も使われていないのにずぷずぷと好きにピストンされて、ますます自由がきかなくなる。
「ごめん、もう我慢できない」
「や、あッん、やめ、れっど、れっど!」
 粘膜が擦れ合う音が響いて、頭が真っ白になる。奥を何度も突かれ、腰が浮くたびに触れられていない前から液体が垂れて足へと伝っていった。
 
「――ん、れっど、も、ぅ……触って、ぇ」
 力が抜け、ついに手をレッドの腹についてしまう。立てていた膝はぺたりとシーツに倒れ、少しでも油断すれば体ごと沈んでしまいそうだった。
「さわって、いいの?」
「い、い!もういい…から、ぁ!さわって、おねが、い」
 体を震わせながら懇願すれば、伸びてきたレッドの手がするりと太ももの内側を撫でた。そこじゃない、と首を振ると、分かってるよとでも言いたそうにその中心に手を添えた。
「いっぱい我慢、したから……いっぱい、好きにして、いい?」
「好きに、しろ…もう、ッなんで、も」
 結局こうなってしまうのか、と負けを認めてしまう。だけど既にしとどになっている中心を強く扱かれ、そんな考えはすぐに吹き飛んだ。前を触れられながら下からも突かれっぱなしで、目の前がちかちかとしていた。もう完全に立場が逆転している。ちょっとだけ、優位に立ちたかっただけなのに。
 
「れっど、あ、んッぅあ、あ、――――ッ~~~!」
 結局レッドの手の中で果ててしまい、全身から力が抜けていく。すっかり計画が狂ってしまい、もうどうだって良くなってしまった。レッドも同時に射精をしていた筈だと言うのに、自分のナカのレッドは硬さを保ったままだった。嘘だろ、と首筋を嫌な汗が伝う。
「いっぱい好きにしていいって、いったよね?」
 レッドの目は好きだ。だけど、このぎらぎらしている笑顔は嫌いだ。返事をする前に、視界がぐるりと反転して繋がったまま再び天井を仰いでしまう。
「さっきはグリーンの知らないところがたくさん見られて、よかったな」
 自身が入ったままのこちらの腹を見て、そこを愛おしそうに撫でるごつごつとした大きな手に思わず体が震えた。
「……お前、けっこう性格悪い」
「そうかな」
 ふむ、と一瞬だけ考えたような素振りを見せて、そのまま腰を掴まれる。
「おい、今…イったばっかりだか、ら」
 まだ余韻を残したままの体は、小さくではあるが震えている。
「先に言っておくけど、ごめんね」
「何、が――――、!?」
 ずぷん、とそのままレッドは更に最奥へと潜る様に自身を沈めていく。先程注がれたものが潤滑剤となったのもあって、あっさりと飲み込んでしまって抵抗が出来ない。
「我慢してたから……余裕ない、かも」
「だから、ってぇ、ンッん、あ!!」
 耐えきれない刺激に涙が止まらなくなる。腕を伸ばすと何度もキスをされて、頭の中はもうレッドのこと以外考えられなかった。深く突かれるたびに熱を吐き出し切っている筈の箇所からは絶頂に抗えず、ぷしゃぷしゃとだらしなく欲を溢れさせている。その度に言葉に反して、きゅうきゅうとナカにいるレッドを締め付けてしまっていた。
「やッあァ…無理、も……出な、い!んぅ、レッド、れっどぉ」
「ごめ、ん……ッもうちょっと、だけ、お願い」
 腰を抱えなおされて、より奥を暴かれていった。そこを狙って吐き出そうとギリギリまで引き抜いて一気に突かれていくストロークを繰り返される。
「ァん、ン!この、ままじゃあ……腹ンなか、れっどでいっぱい、ッに…なっちゃう、から、ァ!」
「前から、…そうしてあげたいって思って、た」
「な、んで……ぇ、うぁ、ひ、あん」
 ばちゅばちゅと腰がぶつかる音から、もう目の前の男には逆らえない気がした。顔の両脇のシーツを掴んで必死に耐えていると、レッドの動きが更に速くなる。
「もう、だめッだめぇ、れっど!とまってェ、また、またイっちゃ、う!ッん、んあ、あッん、ぁん!」
「ぼくも、ッもう」
「ひぁ、んっはあ、あッや、ぁ――――、~~~~~ッッ!!」
 ごり、と奥を突かれたと思うと途端にどくどくとナカへと熱が流れ込んできた。同時にこちらも身体を震わせながらぴゅるっと薄くなった熱を吐き出してしまう。レッドの欲を一滴も逃すまいと勝手に締まる自分の体も、ぐりぐりと押し付けて最奥へと注ぎ込もうとしてくるレッドも、どちらも狂ってしまっている気がした。
 だけど、目の前の満足そうなレッドの顔を見てしまって、全部水に流してしまおうなんて思ってしまう。ずぷ……、と引き抜かれた箇所から今しがた吐き出されたものが溢れてくる。ごめんね、と普段よりも優しい声で頭を撫でられて、きっと次も全部許してしまうんだろう自分に惚れた弱みの恐ろしさを知った。