うんざりなんだ - 2/2

 月明り以外の光は全くない森の中で、ベジータは大木に手をつき尻を高く上げていた。何故オレが、こんなみっともない格好を。そう思っているのに身体が言うことを聞かない。上も下も中途半端に服を脱がされ、外気に晒された肌はすっかり敏感になっていた。
「はは……ベジータぁ。なんか、どきどきしちまうな……?」
 言いながら、背後からベジータを押さえつける悟空の太い指が後孔を無遠慮に探る。どうしてこんなことにと思うが、気が付けば悟空に身体を明け渡していた。
 入口の浅い部分をやわやわと広げていたかと思えば腹側をぐり……と擦られ、つい「あっ」と声をあげてしまう。それに気を好くした悟空の指が一本から二本、三本と増え、その度に肉壁がきゅうきゅうと締まり、無自覚の内にベジータは腰を揺らしていた。
「ここ、気持ちよさそうだな」
 同じところを何度も擦る様にぐにぐにと抑えられ、ベジータはたまらず身体を震わせる。感じるはずなどない。なのに「もっと」と強請る様に動いてしまう。羞恥に耳まで真っ赤になっているが、止められない。溢れる声がだんだん増えていって、すっかり上を向いたベジータの先端はとろりとはしたなく涎を垂らしていた。こんな時でも甘い香りが鼻をくすぐる。本当に、頭がどうかしてしまいそうだ。
「あ、ぁ、かかろ、っと……」
 名前を呼ぶと、首筋に軽いキスが落とされる。そして薄く色づいている片方の胸を揉まれ、触れてほしそうに先端がぴんと尖っていた。ぷくりと膨れた乳輪のふちをなぞる様に触れられ、ますます声が抑えられなくなる。そのままコリコリと引っ掻くように硬くなった先端に触れられたかと思えば好き放題に摘ままれ、ぴんっと指で弾かれた。
「ベジータ、意外と乳首おっきくてエロいな」
「くそ、んなこと……ン、関係ねぇだ、ろ……ッ!あ、あぅ、んっぁ、ん!」
 びりびりと痺れるような感覚の中、悟空の指がベジータから抜かれていく。肩越しに様子を窺っていると、道着からごそごそと陰茎を取り出した。あまりの大きさのそれにベジータは思わず逃げ出しそうになったが「逃げるな」とでも言いたそうに悟空がその腰をぐっと掴む。逆らえない。力が敵わないだとか、そういうことではない。身体が、本能が、悟空というサイヤ人に従おうとする。
 まるで都合の良い玩具にされたようでベジータは怒りを覚えた。だが、どうだろう。今の悟空の目は確実にベジータを見ている。他の誰も見ていない。ベジータを欲して欲して仕方がない欲にまみれた顔をしている。それがベジータの胸の奥を熱くした。欲しいものに届いた気がした。
 じっとベジータの淫らな背を見据える悟空の目。ああ、その目だ。オレはずっと、その目が、欲しかったのかもしれない。
「悪い、なんて言っても意味無いだろうけどさ」
「いいからはやく、しやがれ……ッ」
 笑いながら「ベジータのそういうところ好きだ」なんて言うものだから気が狂いそうになる。返事はしないまま腰を突き出すと、通常よりはるかに質量のある凶悪とも呼べるソレの先端が、ひくひくと疼く入口にくちゅりと音を立てて触れた。そのまま肉壁を押し広げていく先端をずぶずぶと飲み込んでいき、ずぷんっと一気に奥まで突かれてしまった。
「あァ、っあん!」
 その瞬間びくりと身体が跳ね、ベジータはぶるぶると全身を震わせた。落ち着かせるかのように悟空が耳や首筋を舐めてくるが、それも刺激にしかならず快感が増すだけだった。そのまま強く腰を掴みなおされたかと思えば激しく抽挿を繰り返され、ごりごりとナカの好い部分を擦られる。
「べじーた、もっと力抜いて」
「無茶言う、なァ、あ、んっあ、ァぁ、あッ」
 ばちゅばちゅと肌がぶつかる音が真夜中の静かな森の中に響き、これは異常だと知っているのに止まらない。奥、もっと奥が欲しい。口には出せないそれを見透かしているかの様に、悟空はどんどんとベジータの奥を暴いていく。
「お前の、こんな姿知ってるのは……おらだけ、だったら……、いいなぁ……」
 うっとりと、まるで夢見事の如く囁いた悟空の声にベジータは唇を噛む。誰が貴様以外に見せるか、なんて、どうして思ってしまったのだろう。
 カカロット。名前を呼ぼうとしたその瞬間、突然昂ったままの屹立を抜かれベジータは振り返った。
「はあ、ベジータ。オラやっぱり……こっちがいいな」
 何がと問う前に、悟空はベジータを抱えたかと思うと草の絨毯の上に派手な音と共に組み敷いた。背中への衝撃に気を取られていると悟空はベジータの腰を抱え、再びだらりと欲を垂らした先端をベジータの後孔へキスをするように深く押し付けた。
「うん、顔が見える方が良いな。いい顔してるぞ、お前」
「……馬鹿だ、本当に。どうしようもないほどの……馬鹿だ」
「いいよもう馬鹿で。好きに言えばいいさ」
 ずぷり、と入口が先端を飲み込む。柔らかくなった肉壁はすんなりと悟空を迎え入れ、扱くようにナカで締め付けた。
「ん、んぁ、あっ、ぁん、はッあ、ぁ」
「やべ、気持ちいい……ぬるぬるしてて、やわらかくて、それに」
 甘い匂いがする。そう言われ、ベジータは目を見開いた。自分だけではなかったのかという驚きと、となれば、この香りの正体は――――。
「においだけじゃない。オラ達の気も、なんか優しくって、蕩けてるみたいだ」
 言われてベジータも自分たちの気の様子が普段と違うことに気が付いた。単純な戦闘力の大きさから感じるものとは違い、あたたかく包み込むような、今まで感じたことのないものだった。
 それについて考えていたい気もしたが、目の前の男はそれを許してはくれない。覆うように抑え込まれた体は先ほどよりも更に奥を突かれ、耐えきれずベジータは悟空の背に腕と足をまわし絡ませた。
「は、ぁカカロ、ットぉ……あ、んッ!奥、おくに来て、る、んぅ、んっ!ン、ぁっあ……!」
 どちゅんっと奥を突かれ、ちかちかと視界が鈍る。喘ぐ声は止まらず、どんどんベジータの中で悟空の質量は増していった。強請る様に腰が動き嬌声と共に、はぁ、と熱い息が漏れる。
「べじーた、もう、イっちまいそうだ」
「いい、イけ、惨めにイっちまえ……オレの中で、ばかみたいに、はやく」
 ふ、と悟空が笑った気がした。その笑みに挑発するかのように口の端を上げると同じもので塞がれ、にゅるりと差し込まれた舌と絡み合った。
「全部くれなんて言わねぇ、からさ……今だけはおらのことだけ、見ててくれよ」
 そう言われた瞬間、ふざけるなと思った。今だけ、だなんて随分と勝手なことを言ってくれる。何が全部くれだ。どこまで自分勝手な男なんだ。そんな男に翻弄されている自分自身にも嫌気がさして、ベジータは涙が出そうだった。
 自分たちを纏うこの甘いかおりも、気も、きっと満月の影響を受けたサイヤ人の本能による性質か何かなのだろう。悟空はそれに振り回されているだけだろうと。オレを見ているわけじゃない。なのに、何かを期待している自分がいる。
「ッん、間違えるんじゃねぇ、オレが、ッ見るんじゃ、ない。お前が、オレを見てるん、だ……」
「……ああ、そうだったな」
 悟空の柔らかい声がベジータの耳を通り、力が抜けた瞬間だった。その隙を狙ったかのようにどちゅどちゅと悟空の怒張がベジータのナカを突く。荒々しい抽挿にベジータは声をあげ、必死に耐えながら悟空の背を引っ掻いてしまう。きっと多くの傷を作っている。消えなければいい。傷を見る度に、ずっと後悔すればいい。
「あっあん、ぁあっあ!あ、んぅ、ふ、ぁかかろっと、かかろ、っとぉ、んぁ、あッあ!」
「べじーた、おら、本当は、ぁ……!」
 びゅるる、と勢いよくナカに欲を注ぎ込まれた感覚と同時にベジータも果ててしまった。力が抜け、ぱたりと手足が地面に落ちる。
 ――本当は。その続きに悟空は何を言いたかったのだろうと気になったが、徐々にベジータの意識が遠のき目の前の男の姿がぼんやりとしてきた。
 起きた頃には、これは夢だったと思うのだろうか。分からない。自分のことも、同胞のことも。
「……なぁ、ベジータ」
 隣にどさりと倒れ込んだ悟空が同じように夜空を見上げながらベジータに語りかける。
「お前だけだよ。諦めないでオラのことを見てくれるのは。それが、オラは凄く――――」
 最後まで聞いていたかったのに、ベジータの疲れ果てた身体は意識を手放してしまった。それを見た悟空は笑顔のまま天に向かって盛大なため息をつく。
「おやすみベジータ、きっと今夜は悪い夢を見るぞ」