海は遠くない
自分のことも理解できないのに、他人のことなんてもっと分からない。「どうしてあの時」だなんていくら考えても仕方がないのに、目の前を去っていく背中を、どうして黙って見送ってしまったのだろうと何年も経った今でも思い返してしまっては自己嫌悪に陥っ…
レグリ
ライラックの夢
気がつくとそこは、自分以外は何もない真っ暗な空間だった。右も左も分からない暗闇で慌てる中、レッドは手を伸ばしてここから出るヒントがないかを探っている。 先の見えない方へ恐る恐る手を伸ばしていると、むにゅ、と柔らかいものが指先に触れた。なに…
レグリ
完璧な彼
::レッド視点 昔々、レッドはとても泣き虫な少年だった。 一人になると寂しくて泣き、テレビで怖い映像が流れれば泣き、遊んでいる時に転んでは泣き、そして野生のポケモンに襲われかけた時も泣いていた。「あーあ、また泣いてんのか」 泣き虫だとか情け…
レグリ
誰のものでもない
ああ、くそ。全くツイてない。先程までは晴天だったはずの青空から突然振り出した雨に、グリーンは顔を顰める。両手で雨から頭を守ろうとするが追いつくわけも無く、全身がどんどん濡れていく。水を含んだ服は重く張り付いて深いだ。はやくどこかで雨をしのぎ…
レグリ
ホワイトアウト
うわあ。自分でも思った以上に間抜けな声が出た、と思う。 いつものようにジムから自宅までまっすぐと帰宅していたオレが見つけたのは、まるで漫画のように真っ白な雪道の真ん中でうつ伏せの姿で地面へと倒れた人間だった。時間も遅く辺りも暗かったため始…
レグリ
君のせいだよ
ぐちゅぐちゅとこの場所にはおよそ不釣り合いな音が響く。外は朝から吹雪いており風と雪の音が鳴りやまない。それだけなら静かなものだが、今日は心臓の音がやたらとうるさい。 雪を防ぐために山頂付近にある小さな洞窟の中に籠る。二人きりで、自分たちは…
レグリ
その秘密を解いて
久しぶりに訪れた西日が差し込む恋人の部屋は、最後の記憶と変わらなかった。それにほっとしつつ旅の途中買ってきた土産の菓子をテーブルに置き、レッドはリビングのソファに勢いよく腰を下ろした。 部屋のところどころから恋人のにおいがして、だんだんと…
レグリ
ラストシーン
思い返せば、グリーンのはじめての相手はいつもレッドだった。はじめての親友、はじめてのライバル、はじめてのポケモンバトル。そして、はじめて手放したくないと思った相手だった。そんな中ジムリーダーとして過ごしていたグリーンに、アローラ地方へと赴い…
レグリ
このままでいたい
グリーンはレッドのことが好きだ。それはもう、本人が呆れるほどに。気が付けばこれでもかという程に惚れこんでいたし、これから先別の人間を好きになることも無いだろうと思っている。だからというわけではないが、グリーンはレッドのやること成すこと大抵の…
レグリ
サイレン
今までそばにいることが当たり前で、例え遠くに離れることになったとしてもこの友情は変わらない。ずっと、そう信じていた。だけど現実はそうはいかなかった。いつの間にか有名人になってしまった幼馴染の名前をメディアで見かける度に、なんでこいつはここに…
レグリ
夢見るように目覚めて
久しぶりに訪れたトキワシティは、記憶の中とまったく変わっていなかった。故郷と近い田舎町。そこで暮らす人間は少ないが緑が豊かで、そして、グリーンがいる町だ。僕はいろんな地方を旅しては、定期的に故郷へ帰るようにしていた。今日もマサラに帰るついで…
レグリ
till death do us part
殿堂入り。それがどれほど名誉なことか、子どもの自分でも理解が出来る。フロアにぽつんと置かれたパソコンにレッド――自分の名前だ――と、ともに勝ち抜いてきたポケモンたちが登録されていく。ポケモンバトルをしている時が、生きている中で最高の瞬間だ。…
レグリ